2014.09.02
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教育観・育児方針が違う家庭とどう付き合う?

第64回目のテーマは「我が家と教育観や育児方針が大きく異なる家庭と、どう付き合っていけばよいでしょうか?」です。

我が子が他の家庭の教育方針に影響を受ける

「息子の小学校の同級生が毎日遊びに来て、我が家のおやつを大量に食べていきます。その子の両親は共働きで、自分の子の放課後の過ごし方を知らないらしく何も言ってきません。息子の友だちですし、その子とその子の家庭にどう対処すべきか、困っています」と、ある親御さんから相談が寄せられました。

同様の悩みは他にもあります。同級生がかなり高額のお小遣いをもらっているのに影響され、我が子も「もっとお小遣いちょうだい」と言ってくる。小学生なのに18時過ぎまで平気で外遊びしている同級生に釣られ、我が子もなかなか帰宅しない……。このように、他の家庭と教育観や育児方針が違い、我が子がそれに影響されヤキモキする親御さんも少なくないようです。さて、このような場合、その子やその子の家庭とどう付き合っていけばよいでしょうか?

我が家は我が家、他人の家は他人の家

冒頭のケースのように、友だちが我が家に来て遊ぶのであれば、我が家のルールに従ってもらうのがよいと思います。おやつも、自分の子どもと同量だけ出して、あとはしまっておくのです。目に見えるとどうしても欲しがりますから、目につかないようにすることが大事。それでも「足りない、もっとちょうだい」と言ってくるようであれば、「うちのおやつの量はこれだけだからもうおしまい。どうしてお腹が空いちゃったのかな?」と聞いてみましょう。もしかしたら、給食がその子には少ないのかもしれません。

連日おかわりを催促するようであれば、その子の親御さんと連絡を取りましょう。「お宅のお子さん、放課後とてもお腹が空いているみたい。今度おにぎりでもいいから、持たせてくれないかしら」というように。

我が家にも息子たちの友だちがよく遊びに来ました。相手のご家庭とは必ず連絡を取り、アレルギーはないか、何時まで遊んでよいか、迎えに来るか、もしくは送っていくか等、色々聞いておきました。子どもたちが安全に楽しく遊べる環境を整えるため、お互いの親が連絡を取り合うことは必要ではないでしょうか。

お小遣いの値上げを要求する子や、遅くまで帰宅しない子には、他人の家は他人の家、我が家には我が家のルールがあることを伝えましょう。

特に、金銭感覚の違いからくる教育方針の差異は色々あると思います。我が家はお小遣い制ではなく、必要時に申告されたら渡す方針でした。あるとき、同級生のお母さんから「お宅は息子さんにお小遣いを渡していないでしょ? だから、うちの子が一緒にアイスを買いたいと思っても彼に遠慮して買えないの。息子さんにお小遣いをあげてくれませんか?」と連絡がありました。まさに、我が家の金銭教育とは異なる方針の家庭です。そこで、私はまず息子にどうしたいかを聞きました。すると、「今までのままでよい。アイスが欲しいときは事前にママに言う」との答えでした。相手のお母さんには息子の意思を伝え、万が一急におごっていただくことになった場合は、必ず代金はお返しすると約束しました。

友だちに釣られて帰宅時間が遅くなる子には、まずは我が家の門限を確認しましょう。その上で、友だちの力が強く、先に帰りづらいということであれば、今後その友だちと付き合うかどうかを親子で話し合った方がよいでしょう。

以上のように、我が子、相手の子ども、その子の親とも日頃からコミュニケーションを取り、齟齬のないようにしておくことが問題解消のコツではないかと思います。その際、「絶対に自分が正しい」と決めつけず、オープンマインドで色々な価値観があることを受け入れてください。ただ、盗癖や暴力等の極端に悪い習慣を見つけたら、本人に注意した上で、その子の親に事実を報告すべきでしょう。

親は、共に子育てをする同志

他の家庭とコミュニケーションを取ることが大事とはいえ、母親同士の付き合いが面倒だったり、苦手だったりという人もいるでしょう。実は、私もそうなのです。しかし、子どもを育てるとなると、そうは言っていられません。子どもには色々な友だちと付き合って、お互い高め合いながら豊かで楽しい人生を送ってほしいと思うからです。そのためには周りにいる親たちが自分の持っている資源を出し合って、子どもの育ちのために良い環境を用意することは、親の務めではないでしょうか。

現在、私の三男はアメリカの高校に通っています。昨年の夏は彼の友だちが10人以上も我が家へ遊びに来ました。私は子どもたちが滞在中、色々な体験をしてもらいたいと思い、様々な企画をし、その様子を毎日ビデオに収め、親御さんたちに送っていました。中には実際に会ったこともない親御さんもいましたが。そして今夏は、三男が友だちの家にホームステイし、ある企業へインターンシップに行きました。私も含めどの親も、我が子だけでなくクラスメイト皆が、できるだけ良い環境の下で成長してもらいたいと考えていることがわかります。

私たち親は、子どもをより良く育てるという共通の目的を持った“同志”なのだと思います。親たちのつながりは、子どもの育ちのために良い環境を整えるためのものですから、ある意味クールな関係であっても構わないでしょう。大人だけで個人的に親しくなる必要は必ずしもないわけです。そう考えれば、付き合いが苦手な人もコミュニケーションを取りやすくなるでしょう。いつも子ども中心ということを忘れないでください。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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