2014.06.03
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何でも命令してくる子への対応、どうする?

第61回目のテーマは「友だちに何でも命令し、服従させようとする子。周囲はどう対応すべきでしょうか?」です。

従わないと、仲間外れにされることを恐れ…

ある幼稚園児のお母さんから「娘にいつも命令をしてくる子がいます。『同じお弁当箱を持ってきて』とか、『雪でも手袋しないで遊んで』等、時に理不尽と思われるようなことも強要してきます。娘は仲間外れにされることを恐れ、命令に従っていますが、このまま放置してもよいものでしょうか?」と相談されました。

人に命令し、服従させることで満足を得ようとする子どもは、時々いるものです。今月は、そういう子どもへの対応や、逆に命令される側の子どもへの対策を考えたいと思います。

命令する子の家庭と、子ども本人への働きかけ

子どもが他の子にやたら命令するのは、その子自身が家庭内でしょっちゅう命令されていることが原因として多くあるでしょう。実体験がないことをいきなり子どもはできないものです。その子が育つ生活環境の誰か、父親か母親等が、同様の態度を取っていることが考えられます。従って、子どもの態度を改善するためには、家庭内の大人の態度を改めさせなくてはならないでしょう。

そのためには、命令されている側の子の保護者は、そのような行為に気づいたら、すぐ担任の教師に相談して下さい。そして教師は、命令する子の保護者と会って話してみて下さい。「お子さんが園でお友だちに命令をしています。このままでは段々と友だちが離れていって、一人ぼっちになってしまうかもしれません。そうならないよう、家で大人がお子さんに対し命令口調になっていないかどうか、点検してみて下さい」と。このとき必ず「命令をするのをやめてください」ではなく、子どもがそれを真似し、結果、その子にとっていかに不利な事態になるかを強調して伝えるほうがよいでしょう。

また、命令する子ども自身へも丁寧に働きかけます。例えば、「(命令するのは)皆にアドバイスしているのかな? じゃあ、そのアドバイスが皆のためになるかどうか、5秒考えてから言ってみよう」と伝えます。あるいは具体的に、「雪なのに手袋をしないというのは良いアドバイスかな? 考えてみよう。1、2、3、4、5……」と実際に試してみます。そこで「良くない」と子どもが気づけばよいのですが、もし「わからない」と言ってきたら、その子と実際に素手で雪を触ってみます。「冷たいよね。人によってはあかぎれができることもあるよ」と教えましょう。さらに、「相手の子に聞いてごらん」と提案し、一緒に命令されている子たちの感想も聞いてみます。

このような根気強い働きかけで、一方的に服従させようとはせず、相手の気持ちを考えられる子どもに変わっていく手助けができるのではないかと思います。

命令される側の子どもへの対策

次に、命令される側の子どもへの対策を考えます。

少し前に、マインドコントロールが原因ではないかと言われる殺人事件が起こりました。これは極端な事例ですが、一方的に服従させるというのは恐ろしい行為だと思います。このような加害者はつけ入りやすいタイプを見つけ、その人を服従させようとする傾向があるようです。

「私は簡単には服従しない」と言う方もいるでしょうが、人間は誰でもマインドコントロールされやすい心理を持っているのです。私は大学の授業で、社会心理学者であるアッシュの有名な同調実験を参考に、次のような心理実験を行っています。黒板に長い線と短い線を描き、どちらが長いかを学生に問います。すると、一人の被験者だけは正しい方に手を挙げますが、他の全員(実は実験者の仕掛け人)は逆の方に手を挙げます。これを3~4回繰り返すと、被験者は当初とは逆の方、つまり正しくないと思っていた方に手を挙げるようになるのです。

このように人間はもともと周りに同調しやすい生き物です。日本人は特に、その場を丸く収めたいという意識からか、同調傾向が強いように感じます。では、一方的に服従しない子に育てるにはどうしたらよいのでしょうか。

簡単には服従しない子とは、1人でも周りに流されずにきちんと自分の意見が言える子だと思います。自分がこうだと思ったら、たとえ友だちと全く違う意見でも、勇気を持ってそれを表現できる子でしょう。それには日頃から親が「あなた自身の意見はどうか」と、子どもの意見を聞き、尊重する態度を大切にすることだと思います。

学校の授業では、教師がどの子どもも意見を言いやすい雰囲気を作ってみてはどうでしょうか。算数で文章問題を扱うとしたら、色々な解法があるものを選び、解き方を問うのです。子どもたちからそれぞれ解法が出てきたら、まずはどれに対しても「なるほど」と受け止めます。そして詳しく説明させます。最終的に何か間違いがあったとしても(もちろん、なぜ、どこで間違ったかの検証はしますが)、「考え方を発表してくれてありがとう」と伝えます。子どもは自分の意見が受け止めてもらえるとわかれば、「間違ったら恥ずかしいから」という思いは抱かなくなり、自分の考えを発表してみようと思うはずです。このような授業は交通整理も大変で、すいすい進むとは限りませんが、子どもが生きていく上で大切な「正解を最短距離で出すことではなく、自分の頭で考え、周りに流されずに意見をしっかり言う」力を育めることでしょう。

家庭や学校でこうした実践を積めば、一方的な命令に従わず、自分で考えて嫌なら嫌と拒否できる子が育つのではないでしょうか。命令する側を変えることも大事ですが、命令される側も変わることが必要だと思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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