2014.04.01
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教師と児童生徒はネット上でどこまで交流してよいか?

第59回目のテーマは「教師と教え子である児童生徒は、メールやSNS等を利用して、どこまで交流してよいものでしょうか?」です。

教師は「公人」であることを忘れずに

今は誰もがインターネットを利用して、メールやSNSで色々な人と交流できます。教職にある方も例外ではないでしょう。では、もし児童生徒が教師のFacebookに友達申請をしてきたら、また、児童生徒からLINEのグループに招待されたら、教師は応じるべきでしょうか? 今月は、ネット上での教師と児童生徒の交流はどうあるべきか、さらにはインターネット利用の留意点についても考えます。

教師がTwitter やFacebook 等のSNSを利用する際、まず忘れてならないのは自分が「公人」であるということ。常に公の立場にあり、不特定多数の人々から見られている存在という点では、私のような芸能界の人間と同じでしょう。つまり、教師はネット上でも常に児童生徒や保護者、学校関係者を始め、誰からも見られている立場なのです。そのことを忘れずに、SNS等は利用する必要があると思います。

例えば、自分のFacebookで発信するのは、児童生徒にとっても有益情報であるべきでしょう。学校の豆知識(今日通学路にこんな花が咲いていました等)や、挑戦しやすい勉強法、個人名は出さずに「こういう素晴らしい生徒がいました」とモデルケースになるような事例……等々。そんな内容なら、もしも教え子たちが友達申請をしてきても承認してもよいのではないでしょうか。

教師としてではなく、一個人として私的な情報を発信したいなら、読み手を制限するような設定にすべきでしょう。もちろん、教え子たちからの友達申請には応じてはいけないと思います。

もしも児童生徒からLINEのグループに招待されたら、どうしますか? 教師が教え子をエコヒイキしてはいけないのは言うまでもありません。それはネット上でも同じこと。従って、LINEのグループにはクラス全員が入ってはいかがでしょう。それなら、クラス皆で大事な情報を共有するのに活用できます。しかし、限られた子どもとだけ交流するのはエコヒイキになり、学級経営上、支障があると思います。

コミュニケーションのあり方は転機に来ている

よく、ネット上では本音を言うのに、学校で面と向かうとなかなか心の内を話してくれない生徒がいると聞きます。大人でも自分のブログでは正直な気持ちを書けたり、Facebookでは気軽に「いいね!」を押せたりするものです。確かに、ネット上は本心を出しやすい場ではあるでしょう。

このように、インターネットという便利なツールが出てきたことで、コミュニケーションのあり方は大きなターニングポイントに来ている、と考えた方がよいと思います。児童生徒が実際に顔を合わせるとなかなか本心を言えないのであれば、学校公式のメールアドレスを生徒に公開し、何かあればそこへ送ってもらうようにしてはどうでしょうか。海外の学校ではすでに行われている方法ですし、日本の学校にもあると思います。そこに届いた児童生徒の相談等には真摯に応え、場合によっては支援体制を整備していくのです。

我々大人は「顔を合わせてきちんと話し合わなくては」と思いがちですが、児童生徒が一番話しやすいのがネット上のコミュニケーション・ツールによるものであるなら、それを利用した方がスムーズに意志疎通を図れ、問題解決も早いかもしれません。これまでの慣例に縛られるのではなく、今はターニングポイントだと思って、新しいコミュニケーション方法も受け入れていく必要があるかと思います。

インターネットのポジティブな利用を増やすために

最後に、インターネット利用全体について私が大事だと思うことをお伝えします。

インターネットはとても便利なツールですが、まだ法的な規制が少ない分、悪い使い方もできてしまうという現状があります。特に児童生徒の間では、特定の個人をネット上で攻撃したり、学校や仲間の悪口を「学校裏サイト」に書き込んだりと、匿名性を利用してネガティブな方向へと使い方を誤る例も少なくないでしょう。

インターネットのネガティブな使い方がまん延すると、今後様々な規制が作られ、便利さにも影響が出るかもしれません。従って、小学校段階からどうすればネガティブな使い方を減らせるか、そしてポジティブな使い方を増やすためには何ができるかを、教師と児童が一緒に考える必要があると思います。

例えば、倫理的な問題です。ネット上での誹謗中傷は、刑法では罰せられなくても、民法では罰せられて罰金を課せられる可能性もある等、具体的にネガティブな事例を紹介する。また、自分がネット上に発信した情報は二度と消せないと考える。制限をかけず発信すれば、それは世界中で閲覧可能である……等々、便利さと背中合わせのリスクも伝えるべきでしょう。その上で、自分が傷つけられない、そして他人も傷つけない利用法を考えていければと思います。

子どもたちがこれらのことを学ぶためには、教師がインターネットの利用法について精通している必要があるでしょう。児童生徒が、PCや携帯電話等の利用で何かトラブルに巻き込まれたとき、あるいは悩みがあるとき、教師に相談できるよう、そしてその相談に教師が適切に対応できるよう、指導体制を整えておくことも大切だと思います。それは保護者も同じこと。「私はわからないから」と逃げるのではなく、インターネットのポジティブ面とネガティブ面について、しっかり認識しておいた方がよいでしょう。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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