2013.10.01
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内向き化する日本の若者、今なぜ?

第53回目のテーマは「昨今、海外留学する学生が激減し、外の世界に関心を示さない『若者の内向き化』が問題視されています。この傾向、改善できるのでしょうか?」です。

海外に興味を向けない若者

最近、日本の若者の内向き化が問題視されています。自分とは異質な人や国と交わろうとしないのです。世界はグローバル化しているのに、日本の若者が海外と接点を持とうとしないことは、特に仕事面で選択肢が狭まり不利な状況が出てくると思います。また、国としても、世界を舞台に活躍できる人材が少なければ、それだけ競争力も落ちてしまうでしょう。今月は、なぜ日本の若者は内向き化傾向にあるのか、それを打破するためには何が必要なのかを考えます。

日本の若者の内向き化、その最大の原因は、英語ができないことではないでしょうか。英語ができなければ、取得できる情報量も限られてしまいます。また、国際舞台では、日本人も英語で話さなければ、誰も注目してくれないでしょう。「日本で暮らしていれば、別に英語が話せなくても不便はしない」という人もいるかもしれませんが、それは今ほど人や物、そして情報が国境を越えていなかった1960年代以前の話です。

英語力がない結果、海外の人とのコミュニケーション手段がない。それにより海外留学しようとか、海外で働こうという気になりづらい。そして、世界中にある大量の英語による情報がキャッチできないことで、ますます外の世界に興味が向かない、というように「若者の内向き化」が進行しているのだと私は思います。

失敗から学ぶ経験をたくさんする

では、若者の内向き化を外向き化に変えるためには、どうすればよいのでしょうか。一つは、前述した「英語力をつけること」です。

もう一つは、若者たちに「失敗しても大丈夫。そこからたくさんのことを学べばいい」という場を社会が提供することです。日本では、長引く不況のため就職が困難で、そのために大学生の中には、「留学をして就職活動の開始や卒業が遅れるのは困る、何か新しいことに挑戦して失敗したり苦労したりするよりは、今までの慣習に従うのが安全」という思いがあるとも聞きます。今のような社会状況の中では安定志向に若者が傾くことは無理もないとは思います。

一方、米国の多くの若い起業家たちは、失敗が“勲章”だそうで、そういった文化の中からブレイクスルー(現状打破)する新しいアイデアを、生みだす人材が作られているとのこと。日本が世界の中で新しいアイデアを出し、様々な分野でイニシアチブをとっていくためにも、留学を始め、色々な機会を使って安定志向を打破し、失敗してもそこから多くを学ぼうとする姿勢は必要だと思います。若者がそういう姿勢で学生時代を過ごせれば、内向きではなく、外にも興味を持ち、もっと大きな舞台、例えば世界で自分を試してみたいと思えるような気概ある人材に育つのではないでしょうか。

外向き志向の人材を育てるため、学校でできること

子どもたちをそのような人材に育てるために、学校現場でできることもあると思います。
 英語教育については、小学校1年生から英語を必修化することがよいと考えますが、公教育では教員の確保等が難しいという課題があるでしょう。この点については、今は英語教材にも優れたものが多くあります。特に発音はそうした教材を利用した方がむしろ効率良く学べると思いますので、教員不足は何とかクリアできるのではないでしょうか。

また、英語教育はただ言葉を学ぶだけではなく、自分の考えを相手に伝える訓練にもなるはずです。英語は文法的にそれがしやすい言語ですから、他国の言葉を学ぶことではっきり自分の意見を言うという態度も同時に養っていければ、人と意見を交わす際にも役立つでしょう。

さらに、学校では語学を教えるだけではなく、その中で海外の文化に興味を持ち、認めていくことの大切さを子どもたちに伝えてほしいと思います。すでに社会科等では海外について学ぶ単元は豊富にありますので、子どもたちが他国への興味関心を示すよう心がけて授業を展開されてはどうでしょうか。例え一生日本に暮らすとしても、外の世界を知り、その文化をリスペクトすることは、国際化社会の中で他国との平和を保ちつつ生きていくためにも必要なことだと思うからです。

失敗から学ぶことについては、授業の中ですでに様々な試みをされている先生方がいらっしゃると思います。例えば、算数で計算間違いをしてもどこで間違えたのかをじっくり検証してみる。体育で逆上がりを失敗したらなぜうまくいかないのか、皆で意見を出し合って改善していく。このような「失敗は恥ずかしいことではなく、次の成功への大事なステップになる」という授業を通して、子どもたちが「失敗しても、それがいかせればいいのだ」と思えるようになれば、しめたもの。失敗をバネにして新しい挑戦をしようとする子どもに育っていくことでしょう。

子ども時代からこうした経験を重ねることで、「今まで通りでいい、日本にいれば、日本だけ見ていれば安心」という消極的な内向き志向ではなく、他の国々への興味を持ち、海外の人と交流しながら自分も高めていく、外向き志向の人間になっていくのではと思います。それにより若者は自身の人生をより豊かで刺激の多いものにでき、同時にそうした若者が多くなればなるほど、日本は今まで以上に国際社会で活躍していけるようになるのではないでしょうか。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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