2013.08.06
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保護者間で協力態勢を作るには?

第51回目のテーマは「PTAや父母会で、意見ではなく文句ばかり言ってくる保護者がいます。どうすれば保護者間で良い協力態勢が作れるでしょうか?」です。

意見ではなく文句を言う親

学校のPTAや幼稚園の父母会など、学校や園でのより良い教育環境を作るために、保護者が協力する場面は数多くあります。そうした協力の推進役である、役員になった人たちから「子どもに良いと思ってした提案に対して、文句ばかり言ってくる保護者がいて困る」という声をよく聞きます。私はこれまで、香港や米国の学校、日本のインターナショナルスクールでの保護者を見たり、経験したりしてきましたが、こうした悩みは一度も聞いたことも感じたこともありませんでした。日本特有の現象なのかもしれません。

例えば、ある幼稚園の役員は、園主催の夏祭りで駄菓子屋を出す企画をしました。小さい子どもが買い物を経験するのに、ちょうど良い値段だし、なにより子どもが喜ぶと思ったからです。しかし、ある保護者から「駄菓子なんて体に悪い」と文句をつけられ、やる気をそがれたと言っていました。今月は、こうした親への対応と、どうすれば保護者間の良い協力態勢が作れるのかを考えてみます。

役員が目的意識を持つ、そして説得する

まず大事なのは、中心になって色々な企画をし、動かしていく役員の心構えでしょう。役員は常に「この企画の目的は何か」を強く意識しておく必要があると思います。たとえば、息子が通っていたインターナショナルスクールでは、よく保護者対象のダンスパーティーを開催していました。目的は、学校に冷暖房設備をつける等の教室環境の充実を図るための寄付でした。そのような目的をしっかりと念頭に置くと、他の保護者への説明や呼びかけに説得力が出るはず。

先ほどの幼稚園の例では、夏休みの一日、子どもたちが夏祭りで友だちと思いきり楽しみ、良い思い出が作れるように、ということが目的でしょうか。であれば、「お菓子を買うことも楽しい思い出の一つになると考え、駄菓子屋を企画しました」と説明した上で、先程のような文句を言ってくる保護者に対しては、「なるほど! 確かに体に悪いお菓子もあるかもしれませんね。よく思いついてくださいました」とまず褒めます。そして「ではどんなお菓子だったら良いでしょう? 中心になって考えてくださいますか」とお願いしてみるのです。そこで「わかりました」と相手が言えばしめたもの。文句がきっかけで企画の運営に巻き込み、一緒に活動できればそれに越したことはありません。

そこで相手が引っ込んでしまったら、そのままにしておけばよいでしょう。重ねて文句を言ってくる場合は、無視します。なぜなら、文句を言う人の心理は、「私の存在を認めてほしい」ということ。参加はしたくないけれど、目立ちたい、存在感を出したい、と思っている人が多いので、文句を言っても無視されれば、その欲求は満たされず、何も言わなくなるでしょう。

皆が楽しめる企画を立てよう

企画する行事は、多くの人が楽しめるものが理想でしょう。息子たちが通っていたインターナショナルスクールでは、先程のダンスパーティーもそうですが、「行事を開催するなら、皆が楽しめるものを」という意識が、役員の中でとても高かったように思います。そしてそれに呼応するように、他の保護者も次々と楽しい案を出していました。

例えば寄付金を集めるためにオークションをした時、ホテル勤めの保護者はそのホテルの1泊宿泊券にいくらかの金額を上乗せして提供したり、あるいは先生方まで巻き込んで、「●●先生にパイ投げができる権利」を売ったりしたこともありました(笑)。保護者が元気に楽しい企画をすることで、先生方も参加を面白がってくれていたようです。

また、このインターナショナルスクールでは、伝統的に中学3年生の卒業旅行(京都)の全費用を、中学2年生がプレゼントするということが毎年行われていました。中学2年生は1年間かけてバザーやホットドックデー(ある日のランチでホットドックを売り、その利益を寄付に回す)等を企画・運営し、寄付金をためるのです。親も協力します。私も自分の得意分野で参加しようと、大量にクッキーを焼きました。日本の公立学校とは文化や背景も異なるので、一概に同じようにはできないかもしれませんが、そうやって役員以外の保護者も、自分のできる部分で積極的に参加することが大事だと思います。

教育現場では、教師は教えることに、園児や児童生徒は学ぶことに忙しいので、行事の企画運営などは保護者がボランティアで参加することが大きな力になります。また、せっかく子どもが入園・入学した場所ですから、3年なり6年なりの園生活や学校生活を保護者も思い切り楽しめたらと思います。そうやって保護者が楽しんで、笑顔でいれば、それは子どもの笑顔につながり、子どもの笑顔は教師を笑顔にします。教師が笑顔になれば、結果的に子どもの教育環境も充実してきます。この笑顔のサイクルを、まずはお父さんお母さんから作っていけたらよいと思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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