2012.07.03
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

キレやすい子どもにしないためには?

第39回目のテーマは「すぐカンシャクを起こす2歳の我が子。将来キレやすい子どもになってしまうのでは?」です。

「魔の2歳児」に翻ろうされて・・・

ある子育て中のお母さんから、こんな悩みが寄せられました。「自分が思うようにいかないと、すぐにカンシャクを起こす2歳の娘に翻ろうされている母親です。できるだけ穏やかに対応したいと思いつつ、ついつい“キーッ”となってしまいます。その後にハタと“こんな対応をしていては、将来、キレやすい子どもになってしまうのでは……”と心配になります。キレない子どもに育てるにはどうしたらよいのでしょうか」。

2歳児というのは、自分と他人の区別がつき始め、自己主張も始まる最も成長著しい時期。他人を観察できるようになるので、大人がしていることを見て「自分にもきっとできる」と思い込みます。しかし、いざやってみるとうまくできず、結局カンシャクを起こしてしまうのです。この頃のこうした行動を「キレる」とまでは言わないと思いますが、そのまま放置すると小中学生になってから、キレやすい子になってしまう可能性はあります。

なぜキレやすい子どもになってしまうのでしょうか。そうならないためには、どんな対策が必要でしょうか。今月は、このことについて考えてみましょう。

まず気をつけたいのは食べ物

キレやすいという現象には、その子の普段からの食生活がかなり影響していると考えられます。たとえばキレやすい子どもの多くが好む食品の筆頭は「甘い飲み物」。炭酸飲料などのジュース類には非常に多量の糖分が含まれており、それを飲むと英語で言う「シュガーハイ」の状態、つまり躁状態になります。ですが、甘い物はすぐに消化されてしまうため、消化された途端にまた欲しくなってイライラする。これがキレる行動にもつながりやすいのです。このため、甘い飲み物が欲しくなるスナック菓子なども大量に与えるのは好ましくないでしょう。

まず、幼児の頃から子どもの食べ物には親が気をつけ、なるべく先に挙げたような食品は避けるようにしましょう。代わりに、夏なら枝豆やとうもろこし、トマトなど、秋はサツマイモをふかして、おやつにあげてはいかがでしょう。市販のお菓子を与えるよりひと手間かかりますが、親が子どもの食べる物を常に留意していれば、そう極端にキレる子どもにはならないはず。それに、そのことで子どもが穏やかになってくれれば、子育ての苦労も減り、親にとって一石二鳥ではないでしょうか。ぜひ実行してみてください。

落ち着く環境を整えてあげる

食べ物以外にも、子どもの年代ごとに親が留意すべき点はあります。

すでにカンシャクを起こしている2歳くらいの子どもに対しては、その子の好きなことに場面転換をしてあげます。たとえば、入浴が好きな子であれば「さあ! お風呂に入ろう」と誘う。外遊びが好きな子であれば「砂場に行ってみようか」と外へ連れ出す。場や環境を切り替えてあげれば、子どもの気分が変わり、いつまでも大泣きするということは避けられると思います。

小学生くらいになれば大人の言うことをもっと理解できますから、事前に防止することも可能でしょう。それは、子どもがイライラしてきたなとわかったら、「今どんなことを思っているのか、言葉で言ってみて」と、自分の気持ちを表現させるのです。すると、子どもはそれを考える間、少し冷静な時間が持てるのでキレる行動に出なくて済むでしょう。

小学校高学年頃から思春期に突入し、ホルモンのバランスが変化してきます。理由もなくイライラする、という状況が誰にでも起こります。我が家の息子たちには、思春期前の9歳(=生物学的な話を理解できるようになってくる年齢)頃からホルモンバランスの変化や影響について教えました。子どもは正しい知識を持ち、その仕組みを理解していれば、たとえイライラしてキレそうになっても「あ、これはホルモンの仕業なんだな」と納得でき、精神的な負担が軽くなるでしょう。すると、行動も違ってくるはずです。

どの年代の子にとっても、カンシャクを起こす、キレるという行動はエネルギーを消耗させ、心身共に辛いもの。そこで、そのエネルギーをスポーツなどに向けて発散させてはいかがでしょう。アメリカの家庭ではよく、キレそうになった子どもに対して「家の周りを走ってこい」と言います。これは全くの迷信ではなく、走ることで脳内のホルモンバランスを攻撃的なものから安定的なものに変化させるという効果が期待できるのです。

そのほか海外の学校では、セルフコントロールの訓練として、生徒に瞑想の時間を持たせている所もあります。一定時間、静かに自分の内面を見つめ、心を落ち着かせることで、普段神経が高ぶってキレそうになった時、感情をコントロールする効果があるようです。
 このように学校でもできることは色々あります。キレやすい子どもにしないための教育実践を、先生方にも考えていただければと思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!

「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。

pagetop