2012.01.03
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仕事と子育ては両立するもの?

第33回目のテーマは「仕事と子育ては両立するものだろうか?」です。

“仕事を持つ母親の子どもはかわいそう”は、ない

日本では、結婚や出産を機に仕事を辞める女性が7割いるという調査結果があります。自ら望んで辞める人もいれば、仕事と子育ての両立に難しさを感じて、辞めざるを得ない人も少なくないようです。一方で、特に若い世代では、夫あるいは妻だけの収入では生活を維持できないという理由から、共働きが当たり前になりつつあります。仕事をしながら子育てをすることに不安を感じたり、実際にいろいろな困難に直面したりという方は多いでしょう。今月は、仕事と子育ては果たして両立できるか? を考えてみます。

あるお母さんが義母から「あなたが働いているから子どもが不登校になった」と責められたそうです。母親が仕事をしていると、仕事をしていない母親の子どもよりも成績が低い、非行に走る率が高い、不登校になる子どもが多い、といった事実や信頼できるデータなどはありません。

また、歴史をさかのぼると戦前頃までは、日本人の多くは農業などの第一次産業に従事し、家族全員で働く形、つまり共働きが一般的でした。経済成長期になって、男性一人の収入で一家の生活を支えられるようになり、「専業主婦」が多く生まれたのです。その世代の中には、自分の子ども世代が仕事をしながら子育てをすることを、否定的にとらえる方もいるのではないでしょうか。

私自身、子育てをしながら仕事も続けてきた一人として、確信を持って「母親が仕事を持っていても、子育てのマイナスには決してならない」と言えます。

子どもとの時間は“量より質”、密度を濃く

私は、子どもとの時間をどれだけ長く取るかより、いかに密度の濃いものにするか、が重要だと考えます。つまり、子育ては“量より質”だと思うのです。仕事を終え、保育園へ迎えに行き、子どもと再会したその瞬間から、子どもとの時間を一番大切にしましょう。その日あったことをよく聞いてあげて、園で読んだ絵本を一緒に読んだり、楽しい食卓を囲んだりと、一緒の時間を充実させることを心掛けてください。

そして、「お父さんとお母さん、二人共働いているから(お金に余裕ができて)家族旅行に行けるのよ」など、母親が働いていることを子どもがプラス思考でとらえられるようにしていきたいですね。

息子が幼い頃、私が海外出張などで家を空ける場合は、毎日電話をかけるなどこまめに連絡をとりました。しかし、アフリカの奥地などの通信手段がない場所へ行く時は、それぞれの子に“びっくり箱”を用意して出掛けました。びっくり箱とは、簡単なメッセージとプレゼント(小さなお菓子など)を入れたもの。留守宅を預かってくれる人にそれを託し、毎日どこかに隠しておいてもらいます。子どもたちは朝起きるとそれを探し、毎日一つずつ箱を開けながら、私の帰りを心待ちにしていたようです。

このように離れていても、「お母さんはいつも自分のことを想ってくれている」と、子どもを安心させることはできると思います。常に「私の中心は、子どもであるあなたですよ」と伝えましょう。そのための一工夫もしてみてください。

仕事と育児の両立はプラス思考でまい進すべし!

私は自営業ですから、出産・育児の時期は仕事をペースダウンすることができました。たとえば、時間や場所が予め決まっているテレビ番組の収録や講演、あるいは執筆活動など、育児と両立できるような仕事をメインにしました。もちろん、これらの仕事は一生懸命取り組み、次も同じ仕事をいただけるよう努力しました。

また同時期、アメリカに留学し博士号を取得しました。これは、仕事を持つ母親としてその後の活動のステップアップになりました。意外にも、子育て中はホルモンの状態が普段と違い脳を活性化させているそうですから、新しいことに挑戦して、次なる仕事に活かすという手もありますね。

フルタイムで勤務する方は、産休中に仕事と育児のバランスをどう取るかを考えてみたらよいと思います。たとえば、多忙な部署であれば配置換えを希望してみる、勤務形態を時短にするなど、勤務先の雇用制度を調べて、活用してはどうでしょうか。

子育てには夫の協力は欠かせません。我が家は、夫が次男の出産に立ち会った時、へその緒を切るという大役を果たしてくれました(予定時刻が早まり、人手が足りなかったため)。我が子の誕生に非常に深く関わったためか、父親の自覚がより一層高まったようで、それ以後、彼の子育てへの姿勢はがぜん積極的になりました。子育ては、主体者意識のない人ほど「大変だ~」とか「自分はこんなに家族サービスしている」と言う傾向があります。ところが、男性でも一旦子育てに深入りしてしまうと、面白いし、自分のこととして真剣に取り組むようになるので、「やってあげている」という発想はなくなるようです。子育てを、夫婦二人で上手に協力・分担することも、仕事との両立のカギとなるでしょう。

色々挙げましたが、要は自分流でいいのです。鏡に映った自分とにらめっこをして、「私は我が子を一生懸命愛している?」と聞いてみて、自信を持って「はい」と答えられる状態を自分なりに作っていってください。完ぺきな親なんて一人もいません。一生懸命かどうかが大事なのです。外野からは色々言われることもあるかもしれませんが、子どもとの時間をいかに密に過ごすかを第一に考え、実行できていれば大丈夫。強気で、プラス思考でいきましょう!

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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