散らかしてよい場所と悪い場所を教える
「子どもが玩具を散らかしっぱなしでなかなか片づけない」という子育ての悩みをあげる方は多くいます。「毎回ガミガミ叱るのもちょっと……」「何とか自分から片づけられるようになってほしい」等々の声にお応えし、今月はどうすれば子どもが片づけの習慣を身につけられるか、考えてみましょう。
まず大事な点は、きれいにしなくてはいけない場所と、しなくてもいい場所をメリハリつけて、子どもに教えることだと思います。家の中では、家族が集まるリビングやダイニング、外では一般の人たちが使う公共の場所、また友だちの家などは、たとえ遊んで散らかしても、最後はきちんと片づけて元の状態に戻さなくてはいけない、ということを小さい頃から言って聞かせましょう。
同時に、子どもの「自分の場所」をつくってあげて(部屋を与えなくても、ロープ等で一角を区切ってあげるだけでもよい)、そこは自由にしてよいけれど、それ以外の場所には自分のものを置きっぱなしにしないこと、と決めて守らせます。
我が家の息子たちには「自分の部屋以外の場所は常にきれいに! その場所で何かを広げたら、自分の部屋へ持ち帰ること」を0歳から言って聞かせていました。全ての場所を完全にきれいに片づけておく、となるとストレスがたまるものですが、きれいに保つ場所と、自由な場所を決めておくとハードルが低く、片づけ習慣を身につけやすいと思います。
コツはものを増やさないこと

「清潔」こそが大事
片づけと同様に、家の中を清潔に保つことも大切です。私は、常にほこりがたまらないよう気をつけ、トイレや洗面所、風呂場、台所等の水回りはピカピカな状態にしています。片づけられない子には、不潔な状態は健康を害することと、部屋を清潔に保つ必要性を説明し、掃除がいかに大事であるかを伝えましょう。
ところで、著名な作家、画家、音楽家等のアーティスト系の方の中には、ご自分の仕事場がゴチャゴチャに散らかっている人もかなりいます。そういう方にとっては散らかっているのではなく、芸術活動のヒントや材料が“置いてある”だけなのかもしれません。ですから、「なぜ、ウチの子は片づけられないのかしら!」と、必要以上に気をもむことはないと思います。最初に挙げた「片づけるべき場所」と「自由にしていい自分だけの場所」というメリハリをつける方法だけでも実行してみてください。
また、まれにADHD(注意欠陥多動障害)により片づけが苦手な子どももいます。片づけ以外にも注意欠陥の症状が見られる場合は、なるべく早めに専門家のカウンセリングや医師の診断を受けてください。

アグネス・チャン
1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)
構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ
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