理科・科学の専門情報を読み解く力が必要
今年3月に発生した東日本大震災により、福島第一原発がいまだ危険な状況に陥っています。私たち一般市民の生活は放射能という目に見えない危険物質に脅かされ、特に小さなお子さんのいる親御さんたちは、どうすればわが子を守れるか、気が気ではないと思います。このような時、必要となるのは事故の関連情報を正確に読み解く力ではないでしょうか。
これまで日本人の多くは、科学技術関連の事故が起きると「説明を聞いても難しいし、専門家に任せておけばいいだろう」と考えがちだったと思います。しかし今回の原発事故については、政府も専門家も情報の出し方が悪く、私たちを惑わせるようなケースが続出しています。さらに情報の受け手の私たちが「科学、理系分野だから」とむやみに避けていては、必要以上に恐怖心があおられパニックになったり、対応を誤ったりということも出てくるでしょう。
今月はこのような “理科アレルギー”に将来、子どもたちがならないよう、また専門情報をしっかり受け止め、整理、判断する能力が身につくよう、子どもたちへの理科・科学教育について考えてみます。
“理系女子”の少なさも原因の一つ
子どもは幼少時に母親から多くの影響を受けます。その母親が日本では残念ながら“理系女子”であることが少ないようです。
日本では、平成22年度の理系学部(理・工・理工・農・医)に所属する学生が、男性‐約38万人に対し、女性‐約9万人でした(文部科学省 平成22年度「学校基本調査」より)。大学入試を前提とした高校教育では、理系と文系のコースに分かれるケースが多いので、大学の理系学部に所属する女子学生の少なさを考えると、高校でも理系コースを選ぶ女性は少ないことになります。つまり、日本人の女性は理科・科学教育を受ける機会が男性より短い傾向にあるということです。
また、先進国の中でも日本の女性研究者が少ないことは知られています。米国ではテレビ番組の解説者としてよく女性科学者が登場し、一般市民が彼女たちの活躍を目にする機会は日本よりも多くあります。理科・科学分野で活躍する女性のロールモデルが日本には少ないことも、理系を志す女性の少なさにつながっているのかもしれません。
子どもを理科・科学嫌いにさせないためには


アグネス・チャン
1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)
構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ
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