2011.05.31
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震災後の子どもの心のケアは?

第26回目は「大震災に遭遇した子どもの心をどうケアすればよいでしょうか」についてアドバイスします。

今できることを模索する全国の先生

被災地の宮城県を慰問したアグネスさん 写真提供:『T&A』

本年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、東北地方を中心に多くの方が被害に遭われました。改めて、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。また、被災した方々やそのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。

この震災を受けて、文部科学省は被災地の学校へスクールカウンセラー1300人以上を派遣し、被災地の先生を加配するなどの支援を始めています。東京都からは68人の公立学校の先生が宮城県の学校へ派遣されました。

ほかにも全国各地の学校で、多くの先生方が自分たちにできることはないかと、授業で地震のことを扱ったり、実際にできることを児童・生徒と一緒に考えたりと、行動に移しています。

しかしながら震災後、傷ついた子どもたちの心をどのようにケアしていけばよいのか、悩んでいらっしゃる方も少なくないはず。今回は、大災害に遭った後の子どもたちを大人はどう支援すべきか、考えていきます。

震災から4か月以降に問題が生じやすい

今回の地震は平日の午後2時46分という、まだ児童・生徒が学校に大勢いた時間に発生しました。が、ほとんどの学校では、先生方の適切な誘導によって多くの子どもたちの命が救われました。まずはこうした大きな災害の中でも子どもたちの命を守れたことを、先生方自身、誇りに思ってください。そして、今後も自分たちの力で子どもたちを元気に育てることができると、自信を持っていただきたいと思います。

被災地は甚大な被害を受けながらも、すでに学校を再開し始めています。これは復興への素晴らしい一歩だと思います。なぜなら、子どもたちにとって肉親の次に安心できる人は学校の先生と友だちだからです。子どもが毎日通学すれば、家庭に生活のリズムが戻ってきて、生きる活力が湧くきっかけにもなります。学校再開は復興の重要な目安です。

学校が再開したら、先生方は子どもたち一人一人にどのような被害に遭ったかを聞き、記録してください。今回のような緊急時の場合、最初の約3か月は世間の目が被災地に向いているため、子どもたちは案外平静を保てるものですが、問題は4か月、半年、1年と経った時。身近な人の死に実感が湧いてくる、生活の不自由さが身に染みてくるなどが誘因となり、子どもたちが急に暴力的になったり、逆に沈み込んでしまったりなどの変化が起こることがあります。その時、先の記録を見れば行動の背景がわかり、対処の方針が立てやすくなるのです。

またその頃になると、各家庭の被害状況の差によって、子どもたちの着衣や持ち物などに差が出てくることがあります。先生方には授業や学校活動の中でこのような差を子どもたちに感じさせないような工夫をしていただければと思います。同時に、こんな時だからこそ支え合う精神や優しさが大切だということを繰り返し伝えてください。

ストレス発散には運動が有効です。屋内退避の地域は場所が限られてきますが、狭い場所でもできそうなラジオ体操や縄跳びなどを息が上がるくらいやると、精神を前向きにするホルモンが分泌され、心身共にリフレッシュするはず。お試しください。

子どもは大人よりも敏感に不安を感じる

今回の地震では、震源地から離れた場所の子どもも大きな揺れを経験しました。そのような子ども中には、その後の余震の度に親から離れられなくなるなど、精神状態が不安定になるケースがあるようです。

千年に一度といわれる大災害ですから、大人でも不安を感じるのは当然なのですが、その不安感はそのまま子どもに伝わってしまうことを覚えておいてください。子どもは大人の100倍もの感受性を持つといわれていますから、被災地の惨劇を映し出すテレビ番組を長時間見せられれば大人以上に不安になりますし、身近な人がネガティブな話ばかりしていれば、その様子を見るだけで恐怖心をあおられるようです。

ですから、テレビのつけっ放しはやめましょう。幼児とは一緒に歌ったり遊んだり、スキンシップをたくさんして安心させてあげましょう。小学生以上であれば、すでに実践されている先生方もいらっしゃいますが、募金をして送るなどの「被災者のために何かする」という行動を起こすのも有用です。「自分が誰かのためになれる」という心理は、無力感から脱して、元気になる効果をもたらすことでしょう。

もう一点、気をつけたいのは、原発避難区域の方への心ない差別やいじめです。子どもがそれを行うのは、ほとんど大人を真似してのこと。絶対やめましょう。

大人が子どもたちに第一にすべきことは「あなたは守られている」と伝え安心感を持たせること。そして「あなたは一人じゃない。皆でやれば絶対にできる」と教え励ますこと。子どもたちを元気にすることで、我々大人も前に進むことができるのです。共に頑張りましょう。

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アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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