2010.07.06
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個性って何? どう伸ばすの?

第15回目は「我が子の個性を伸ばすには、好きなことだけやらせればいいのですか?」についてアドバイスします。

大人の観察力が子どもの個性を伸ばします

 日本では、「個性重視の原則」をうたった臨時教育審議会の答申をきっかけに、約20年前から「個性を生かす教育の充実」が言われるようになり、家庭でも学校でも「子どもの個性を伸ばす」ことが重視されてきました。

 しかし実際のところ、親御さんや先生の中には「個性って何? どうすれば伸ばせるの?」と思われている方も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、個性とは何か、子どもの個性を伸ばすために、大人にできることは何かを考えてみたいと思います。

 本来個性とは、英語でいえば「キャラクター」、つまり、穏やか、乱暴、明るいなど、その子の性質を指す言葉です。こうしたキャラクターは、子育ての中である程度修正がきくものです。たとえば乱暴な子どもでも、親が他の子どもたちと上手に接する機会をつくり、社会性を育ててあげることで、改善していきます。

 一方、現在日本では、その子に向いていることを見出し、伸ばしてあげることを、「個性を伸ばす」と表現しています。この個性を見出せるかは、家庭では親の観察力にかかっています。たとえば我が子が野球に夢中になっていると思えば、存分に野球ができる環境を整えてあげるのもひとつでしょう。同時に、その子が将来プロ野球選手になりたいのか、または趣味として楽しんでいきたいのかを子どもとよく話し合ってみることで、その力をどう伸ばしてあげればよいかも見えてくるかもしれません。

子どもの様々な面を認めてあげて

 あるいは「子どもの個性を伸ばすため、夏休み中に林間学校を欠席させてアメリカにホームステイさせたい」という親御さんがいます。これもひとつの環境整備です。本当にその子が将来外国で勉強したい、または外国語を学びたいと思っているのであれば、チャンスを与えてもよいと思います。そのかわり、きちんと学校の先生に理由を話して、林間学校を欠席するかわりに課題を出していただき、それを提出するなどの事前の配慮は必要です。個性を伸ばすためだからといって、基本的にするべきことをしないのは筋が通りません。
家庭では親が、学校では先生がその子の個性を見出し、その情報をお互いに共有できるよう、コミュニケーションを積極的にとることも大事です。先生は忙しいので、躊躇してしまう親御さんも多いと思いますが、たとえばメールや手紙など、直接話せなくても他の手段を提案してはいかがでしょう。そうした積み重ねで、子どもの多様な側面を認めてあげるのです。  子どもは学校だけで育つ「学童」ではなく、その他に、兄弟であり、息子であり、野球チームのメンバーであり……と、さまざまな役割を持っている「児童(中高生も含みます)」。先生も親も、子どもを「児童」として捉え、よい面を伸ばしてあげることが、個性を伸ばすことにつながります。

個性を伸ばすために、14人学級の実現を!

 学校でも、一人ひとりの子どもの意見を尊重することで、子どもの個性を伸ばそうとしています。そのために、多くの先生方がすべての子どもの意見をよく聞き、受けとめるような授業実践をなさっていますが、これは、個性を伸ばすうえで非常に有意義です。

 私が大学で教えている時、学生からかなり幼い意見が出ることもあります。でもその意見を否定してしまえば、その学生は二度と発言をしなくなるでしょう。ですから、こうした場合は「そういう意見もありますね。でも、こういう考え方もありますよね」と対応します。いつでも子どもを励まし、その子の可能性が最大限に伸ばせる状況をつくってあげることが大切なのです。

 そのためには学校は、1クラス14~18人規模が限界でしょう。日本はその点、個性を伸ばす教育をと言いながら、1クラス40人近い学校がまだ多いのが現状です。早急に先生を増員するか、アシスタントを入れる必要があると思います。

 親や地域の人がアシスタントとして学校に入るのもよいですね。アメリカでは多くの学校で実施されていますし、日本でも三鷹市などは積極的にそうした制度を作って実施しています。子どもの個性を伸ばすために、自分には何ができるのかを、大人がそれぞれの立場で考え、実行していくべきでしょう。

 これからの国際社会で国家が競争力をつけていくには、高いセルフエスティーム(自尊感情)を持ち、どこへ行っても自分を表現できるような人物を育てていかなければなりません。いくら技術があっても、それを売り込んでいく人材がなければ国を支えられませんからね。そういう意味でも、個性を伸ばす教育は重要だと思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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