2009.09.01
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

小学校英語、どう教える?

第5回目のテーマは「小学校英語」です。学ぶ子どもにとっても、教える先生にとっても、抵抗なく行える英語学習法とは?

幼い頃から英語を学ぶメリットとは

 平成23年度から小学校でも英語の授業が本格実施されます。教える側にとっては責任や負担が増えて大変ですが、子どもたちにとっては小学校英語のスタートは大きな “恵み”だと思います。

 なぜなら、子どもはできるだけ早い時期からもう一つの言語に触れさせたほうが、言語修得の負担が軽くなるからです。私自身、幼稚園からバイリンガル教育を受け、まったく苦労することなく、無意識のうちに中国語と英語、二つの言葉を話せるようになりました。

 これまで日本の英語教育は中学校以降でしたが、子どもたちにとっては非常に負担だったと思います。小学校に比べ、理科や数学などの教科がグンと難 しくなってきているとき、しかも受験勉強もある中、私が幼稚園から小学校6年生まで9年間かけてやってきたものを、たった3年間で全部学ばなければならな いのですから。また、中学生にもなると自分の好き嫌いがはっきりしてきて、一度苦手意識を持ってしまうと、その勉強を克服するのはかなり困難になります。

 また、小さいうちからもう一つの言語を学んでいれば、三つ目、四つ目の言語を学ぶ際、羞恥心や恐怖感を持たない傾向があります。バイリンガルの子 は発音が下手だろうと何だろうと気にせず、大胆にしゃべろうとしますし。相手の言葉をしっかり聞き、自分の意見を常に持とうとする子にもなるようです。

バイリンガル教育の弊害? 大丈夫です!

 子どもを本当のバイリンガルに育てたいなら、できれば3歳頃から始めるのが理想的。「あまり幼いときから外国語を教えると、頭が混乱するので は……」と心配する方も多いようですが、大丈夫! 問題ありません。もしもそうなら、ヨーロッパやアジアには混乱している子どもばかりがいることになりま す。スイス、イタリア、オランダなど、2~3か国語を話す子どもはざらにいますが、皆、健全に育って、一流企業などでも働いているのですから。歴史が証明 しています。

 前述の通り、私は幼稚園から英語を学びましたが、どうやって覚えたか記憶がありません。小学校に入ってから、自分がバイリンガルだと気づきまし た。小学校では歴史や作文の授業は中国語ですが、あとは英語。家では中国語、テレビ番組も中国語でした。きょうだいや友だちと話すときは英語と中国語が混 ざっていましたね。けれど、公の場では英語にきちんと切り替わりました。

 幼稚園の頃、無意識に聞いてしゃべっていた言葉が頭の中にデータとして残っていたのでしょう。逆に、意識的に学んだのが日本語。私は今でも下手で す。自分の成長期に覚えた発音ではないので、聞きとれないし、発音がまねできないのです。だから、バイリンガル教育はなるべく早く始めるほうがよいので す。

「英語なんて怖くない!」という子どもに育てよう

 家庭でバイリンガル教育をするなら、子どもに学習と気づかせないように学習させるのが最も望ましい方法です。それには子どもが一番好きな活動を英 語でやらせるのです。歌が好きな子は英語の歌を覚えさせる、野球が好きな子は英語のMLB中継を見せるなど。私の二男は算数が好きだったので、英語の算数 ソフトを与えました。正解すると主人公のウサギが踊るのです。彼はウサギから英語をかなり覚えましたね。

 また「Do you like a pizza?」など、子どもが興味ある話題から英語を教えると、無意識のうちに一生懸命覚えていきます。たとえば、ウチの子どもが「Oh,Yes,I like a green pizza.」と言うと、「There is no green pizza.」と英語の先生が答えます。すると子どもは熱くなって「There is a green pizza!」「I can take you to eat a green pizza.」と、どんどん会話が成立していくのです。

 ただ、ヒアリングができていてもすぐにしゃべり出すとはかぎりません。私の長男もある日突然、せきを切ったように英語を話し始めたのです。それ は、長男が「ママ、この花、なあに?」と聞いてきたとき、「ちょっと待っててね」と対応が遅れていたら、そばにいたアメリカ人の友だちに「What is this?」と言ったのです! 3歳のときでした。それまでに英語をたくさん聞かせて、第二言語の受け入れ態勢が脳にできていたので、「ママを待っていら れない」という必要に迫られた瞬間、出てきたようです。

 小学校でも高学年になるまで待たずに、1年生から英語をたくさん聞かせるのがよいと思います。人間は聞こえたものをまねて話そうとするので、耳を 鍛えておくのです。そして「英語なんて怖くない!」「英語くらい誰でもしゃべれるよ」という子どもに育ててあげることが一番です。学ぶ子どもにとっても、 教える先生にとっても、ゆくゆくラクになりますよ。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:宝子山真紀/イラスト:あべゆきえ

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!

「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。

pagetop