2009.06.30
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食育と学力の関係はあるの?

第3回目のテーマは「食育」です。親子一緒に過ごせる夏休みにこそ、子どもの心身を整え、学力を向上させるという"中国の食育"、医食同源を学びましょう。

「孤食」が引き起こす食習慣の乱れ

 「7~14歳の朝食の欠食率は6%以上」(参照:厚労省 国民健康・栄養調査2007)をはじめ、小食・偏食・ながら食い……等々、近年子どもたちの食習慣は乱れがち。これは、子どもたちが家で手作りの食事をとらなくなったことと、一人ぼっちで食べる「孤食」が増えたことが一つの要因ではないでしょうか。

 家族一緒に食事をすれば、食べながら「これがウチの味よ」と伝えたり、食品の選び方や量の加減、栄養バランスの取り方、マナーなどを教えたりできますし、その子の食べる様子から体調も把握できます。子ども一人だと「満腹ならいいや」で終えてしまうか、逆に食べすぎの恐れも出てきます。

 仕事の都合や子どもの塾通いなどで親子の生活リズムが合わない家庭も多いと思いますが、多少時間が遅くなっても、まずは親ができるだけ子どもと一緒に食事をする。それを常に心がけてはいかがでしょう。食事は家族がコミュニケーションしながら、色々なことを学んでいく大切な場なのです。

体調を自己管理できる子に育てる

 もちろん、我が家の基本は家族皆で食べて、一緒に片づけること。料理も積極的に参加させます。一緒に作りながら、食べながら、息子たちに「健康に なる食べ方」を教えていきました。たとえば、糖分をとりすぎない、野菜を中心に肉類や穀類をほどよく、「五色(赤・黄・黒・青・白)」と「五味(甘・酸っ ぱい・しょっぱい・苦・からい)」を食べよう、添加物には要注意、といったことです。

 いずれもごく基本的なことですが、実はこれ、中国の医食同源の考え方が基になっています。つまり、自分の身体に必要な食事をとることで体調をコン トロールする方法です。小さい時からのこうした教育のおかげで、息子たちは「食べたものによって自分の体調が変わるんだ」と実感し、面白がって「健康にな る食べ方」を実行するようになりました。その日の勉強や遊びの予定に合わせて食事量を調整したり、外食の際は砂糖の入らないストレートティーを注文した り、また、コンビニやスーパーで食品を買う時は産地や添加物に気をつけたり。

 親はいつまでも子どものそばにいられるわけではありません。私は、息子たちが自分のご飯くらいは準備できるよう、そして彼ら自身で食の知識を活用し、体調を自己管理できるよう育ててきました。これは、親が我が子に遺せる大切なものの一つだと思っています。

学力アップにつながる食事とは?

 さて、子どもたちの食習慣が整い、体調もよくなると、幼い子はぐずりにくくなるでしょうし、思春期の子は「もう少しキレイになりたい」などといった小さな悩みにクヨクヨすることも少なくなるのではないかと思います。

 さらに、なんと、結果的に学力アップにもつながるのです。これは、丈夫な身体を作ることで学校を休まなくなり、病気に罹っても快復が早いこと、そ して夜ぐっすり眠れる子になり、朝の目覚めがよく、学校へ行くのを嫌がらない、といった傾向が見られるためです。また、危機や困難に直面した時でも我慢強 く耐えられ、あきらめずに立ち向かう心を養うことにもなるでしょう。なにより集中力が高まるので、成績向上と食習慣は密接だと思うのです。

 では、より集中力を高め、試験の成功を応援する“アグネス流食事法”をお教えします。試験の前日は熟睡してほしいので、夕食にはスパイスやニンニ クなどの刺激物と牛肉を避けます。カレーはやめたほうが無難でしょう。当日の朝食は、午前中早めの試験ならシリアルとフルーツ、昼近くならパン食よりもご 飯食、午後の場合は昼食用のお弁当を消化のよい食材で作ります。要は、試験が何時かによって、食事の消化・吸収の時間を調整するのです。これだけでも集中 力はだいぶ違ってきますよ。

 食育といえばやはり学校給食。たまには子どもたち自身に味つけやメニューを採点させたり、独自のメニューを考案させたりしてみては? もともと栄 養士さんが考えた理想的な食事ですから、子どもたちは調べる過程で、給食がいかに栄養バランスに配慮して作られたものか、学べるはずです。

 今年の夏休みは親子一緒に、医食同源を体現してみませんか。きっと9月からの授業態度や勉強への意欲が変わってくると思いますよ。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:学びの場.com/イラスト:あべゆきえ

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