2018.12.05
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自発的に読書をする子どもに育てるには?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「自発的に読書をする子どもに育てるには?」です。

そもそもなぜ本を読むことが、子どもにとって良いことなのでしょうか?ゲームや動画など誘惑の多い現代社会で、本好きな子どもに育てるには、小さい頃からの親の努力が大切です。

文字好きに育てることが、本好きになる第1歩

私は、自分の子には文字が好きな子に育ってほしいと思っていました。文字が読めることは、情報を知ることができます。情報をたくさん持っている人、情報を人に与えられる人は、どんな時代でも必要とされ、愛される人になります。ですので、自分の子どももそんな人になってほしいと思いました。
文字が嫌いだと勉強も苦になってしまいます。でも、文字が好きだったら、分からないことがあればすぐに調べられるし、情報を自然と入手できる人になれます。

どうすれば文字を好きになれるのか?まずは、本に興味を持つことからスタートです。私は出産後、退院してすぐに『いないいないばあ』など文字のない絵本の読み聞かせを始めました。続けていると、自然と息子達は、少しずつ本に興味を持つようになり、本があれば「手にとってみたい」と思うようになりました。日本にはたくさん絵本が出版されているので、たくさん触れさせてあげて、小さいときから「本の中には自分の知らない世界が広がっているんだ」ということを経験させました。「ママと一緒に本を読んでいるのは楽しい」という気持ちは、赤ちゃんのときから始まっていました。言葉が話せなくても、息子達は無意識に文字に親しむようになりました。

長男の育児では「こんなに早くから文字を覚えられるかな?」と、私も半信半疑でしたが、3歳でひらがなを読めるようになっていました。下の子どもたちの育児では、もう少し積極的に文字を教えてみたところ、次男は2歳半、三男は2歳でひらがなを習得していましたね。文字を覚えるのには早すぎることはないのです。本を読むと新しい世界を知れる、そのためには文字を覚えると更に楽しめる、と子どもの好奇心をくすぐる。このやり方で、みんな自然と文字と本が好きな子に育ちました。

実は日本語はほかの言語と比べると、とても覚えやすいんです。例えば中国語だといきなり漢字から覚えないといけないし、ある程度の漢字を覚えていないと文章が読めません。英語はアルファベットを覚えても、単語を覚えないと意味がつかめないので、文章を読めるようになるには時間がかかります。日本語には、ひらがなとカタカナと漢字があるので、ひらがなさえ読めてしまえば、全ての本が読めます。本の中に子どもがまだ知らない漢字があったとしても、ふりがなをふってあげれば読むことができます。もう少し日本語について掘り下げてみると、漢字も、一つひとつに意味があってとても深みのある言語だと思います。まず「文字」と「本」を好きになって欲しいですね。

本には、人間にとって必要な情報が詰まっていると繰り返し伝える

文字を覚えるようになってからは、何で文字が必要なんだろう、何で本は大切なんだろう、ということを話して聞かせるようにしました。

私がよく、子どもたちとやっていたゲームで、大好きなサンタクロースに手紙を書こうというものがありました。流れは次のような感じです。

① まず送り先になるサンタクロースの住所を用意します。その番地は50桁くらいあるとても長いものです。

② 大人のチームと子どものチームをわけます。

③ 子どものチームには文字で住所が書いてある紙を渡します。

④ 大人のチームには住所を読み上げて聞かせます。

⑤ そして、住所をそれぞれのチームから正確に言ってもらいます。

子ども達が紙を見て答えるのは簡単です。大人は長い住所が覚えきれず、正確に答えられません。文字がわからないと、子どもはサンタクロースに手紙が書きたくても、書けません。こうして、「文字がの読み書きが出来けないと、やりたいことができない」と、身をもって実感するんですね。文字の必要性や、文字が読める・書けるということの大切さはこのように伝えました。

他にも、本が大切である理由を説明するために、こんな例え話をしました。

「もし自分のお父さんが漁師だとしたら、魚を捕ることに文字はいらないので、言葉で魚の捕り方を教えるよね。でも全ての漁師の仕事を教えてもらう前に、突然お父さんがサメに食べられてしまったらどうする?子どもは立派な漁師にはなれないかもしれないよね?でももしお父さんが魚の捕り方を日記に残したり、誰かが本にして残してくれたら、子どもはそれを読んで立派な漁師になれるかもしれないよね。人間は文字によって、知識を次の世代に伝えて来たから、進化することができたんだよ」

この話は、子どもの年齢に合わせて内容を変えて話します。学校に通うようになったら、人間が発明をしたり、文明開化ができたのは文字のおかげだよねといった具合です。本には、人間が成長する上で必要な情報が詰まっているんだよと繰り返し教え込んでいきました。

本を読んで想像力を磨くことで、子どもの未来を守る

私は、人間にとって一番大切なものは想像力だと思っています。想像力の鍛え方は、まず自分の頭の中に世界を創ることからスタートです。

今の世の中には、漫画や動画、情報を得る方法はいくつもあるのですが、しかし、そこには絵があるので、想像力は広がりにくいです。例えば、ロミオとジュリエットの物語を読んで、自分と隣の人の頭の中に描かれるロミオの像は、同じとは限りません。「あれ?あなたの想像したロミオと私の想像したロミオって違うね」と。この違いこそが、スペシャルなもの、つまり他人が考えられないものが頭にあるということ。人独自の世界なのです。読書をすればするほど、この想像力は磨かれます。

では、なぜ想像力が必要なのでしょうか。今まである情報や知識を集めて、合理的に分析して新しい結論を出すというのは、もうコンピューターでもできる時代です。AIもどんどん発達していきます。私たちはそんな未来の世界を生きる子どもたちを育てています。コンピューターにはできないことを、子どもはできないといけない。それが、「想像すること」だと私は思っています。

想像力はときに突拍子もないことを考えるもので、いつの時代も人間を進化させてきました。これからもそうです。シリコンバレーで一番成功している人は決して成績のいい子ではなく、脱落して退学したという経験をもっていたり、クラスの変わり者であったり、正しいことだけ考えている人ではありません。だから私は自分の子にも、想像を膨らませて、無駄なことや、いらないこと、とんでもないことを考える子になってほしいと思っていました。私が全て教えてしまっては、私の考えのままになってしまいますから、枠組みの中にはめないためにも、本の書いてあることから想像を膨らませるように教えていましたね。

今は、動画やゲームなど、本に代わるいろいろな情報源があります。動画は簡単に情報を得ることができるので、想像力を乏しくします。さらにゲームは中毒性が高いので、成長期の子どもにさせるのは絶対によくないと思っています。前脳の発達が遅れるなど医学的な結果も出ているそうです。思春期以前はセルフコントロールをする力が成長しきれていません。依存症となってしまうと、なかなか抜け出すのが難しいのです。もはや本を読むどころではありません。
世の中は新しい時代になっていきますが、新しい未来を生きるためには、想像力を伸ばすことが、子どもを守ることに繋がるのだと思います。そのために、子どもが小さいときから、文字を好きになる、本へ関心を抱かせるよう、親は努力しましょう。その結果、子どもは将来的にたくさんの情報を吸収し生かすことができます。きっと、世の中に必要とされる人になれるでしょう。

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アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

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構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

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