2023.11.11
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子どもに教えたいSNSとの上手な付き合い方

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。赤ちゃんの睡眠に関する悩みは少なくありません。赤ちゃんはなかなか寝てくれず、お世話する親も睡眠不足です。そして、大変な思いをして寝かしつけても、すぐに起きてしまいます。今回は「子どもに教えたいSNSとの上手な付き合い方」をテーマに考えました。

SNSによって異なる性質とリスクを理解しましょう

SNSは現代の生活に欠かせないものとなっています。私たちが子どものころに電話やテレビが登場したように、SNSも日常の生活に溶け込んでいます。だから、SNSを避けるではなく正しい使い方を身につけることが重要です。避けるのではなく気をつけて付き合っていくしかないと思います。
日本で使われている主なSNSにはLINEやFacebook、Instagram 、TikTokなどがあり、それぞれ異なる性質や危険性があります。

LINEやWhatsApp、WeChatなどのメッセージアプリは、家族のコミュニケーションに役立ちます。写真を送ったり、いつでも連絡を取ったり、安否確認などにも使えて便利です。プライバシーも懸念されますが、避けて生活することはできないと思います。

Facebookは本名を使用している人が多いようです。昔の知り合いを探したり、自分の情報を発信してみんなに見てもらったり、比較的健全な印象があります。しかし、フェイクニュースも多いので、子どもたちが惑わされないよう、日々注意する必要性があります。

Instagramは、「インスタばえ」という言葉があるように、きれいな世界を演出して商業的な感じがします。子どもは影響されやすいので、「私もかっこいいボーイフレンドがほしい」「痩せているほうがかわいい」といった価値観にとらわれてしまいがちです。しかし、フィルターを入れて写真を加工して、かわいく痩せて見せようとすると、「本当の自分」と「そうでない自分」が存在するようになります。
素敵な世界に憧れることは問題ありませんが、現実と空想を区別して認識する大切さを教えましょう。自身の価値観やセンスを磨いて、自分なりのInstagramを楽しむ安全な付き合い方を身につけてほしいと思います。
また、FacebookもInstagramも多くの広告が随時画面に現れます。利用者の好みに沿った広告に刺激されて、いろいろなものが欲しくなる子どもにならないように、親は注意深く見守ることが大切です。

TikTokは、世界中で流行っています。楽しくて笑えるような短い動画がたくさんあって面白いです。あっという間にケーキをデコレーションするような動画もあり、自分の趣味に合わせて楽しむことができます。しかし、中には、遊び半分で危険な行為をするような動画も存在します。自分の首を絞める「失神チャレンジ」や「一気飲みチャレンジ」などの企画もいっぱいあるのです。それによって怪我をしたり、亡くなったりする子もいて問題となっています。

子どものアカウントをフォローして見守る

子どもたちが詐欺や犯罪のターゲットにされる可能性があるのもSNSです。SNSの危険性については日ごろから話し合っておきましょう。お金はネットを通じて支払わないこと、怪しいサイトにはアクセスしないことなどです。
そして、SNSには個人情報はできるだけ載せないように話しましょう。ネット上には、プライバシーはほぼないと考えた方がよいかもしれません。裸でガラス張りの家に住んでいるのと同じような状況です。パスワードもEメールもハッキングされてしまうので、防ぐのは限界があります。
もし、SNSで知り合った人と会う場合は、必ず親に相談するように約束してもらってください。「危ない事件もあるから、最初はママも一緒に行くね」「相手に会って、問題なかったらパパはすぐに帰るよ」「何かあったら、私たちが後悔するからお願い」と話しておきます。もし、SNSでの出会いを否定してしまうと、子どもは親に隠れて連絡を取り合ったり、知らない人と会ってしまうことがあります。ルールを守り、親に相談して、自分でも気を付けるなら禁止しないなどと信頼関係を築いておくことが大切です。子どもを守るための方法はアプリやサイトによって異なり、スマホにも対策が必要です。親はスマホを与える前に勉強して、子どもに説明しながらロックをかけることも大事です。

危険な事件があったときには、「こういう手口だよ」「危ないね」と子どもと一緒にニュースを見るようにします。ゲームに大金をつぎ込んでしまう子や事件に巻き込まれてしまう子がいることを知っておいたほうがいいと思います。「裸の写真を送ってください」とか、「愛しています」といった詐欺メッセージを送ってくるような人がいることも教えておいてください。

スマホを与える時に、「ママもフォローさせてね。それが条件よ」と親は子どものSNSをフォローして、見守るとよいでしょう。「コメントはせずに、フォローしているだけだから」と話せば理解してくれるはずです。その時に、大事なことは子どもの世界に干渉し過ぎない事です。普段は黙って見守って、問題を感じた時はSNS上でなく、目と目を合わせて、話すことが大切です。親がフォローしていることで、家族にも見せられないような最低の投稿や悪意のある人との出会いは防ぐことができます。

ネット上の行動が将来に影響してしまいます

SNSの世界はバーチャルと現実の区別が曖昧になっています。ますます未知の世界になっていきます。私もSNSはファンとのコミュニケーションの道具として考えていましたが、近い将来、テレビよりも重要なメディアになると思います。
アメリカや香港の大学では、入学希望者のSNSやプロフィールを調べることが始まっています。いずれ日本の大学や企業でも、ネット上の行動や評判を調査するようになるでしょう。子どもたちには、ネット上での悪ふざけは、絶対にしないように話してください。いたずらでやったことや、差別的な発言、無責任な行動などが、ずっと残ってしまいます。SNS上の悪印象がゆくゆくは人生を左右してしまいます。

人をけなしたり、「殺してやる」「死ね」という言葉が法的な罪になる可能性もあります。情報を開示する法律も整備されていく今、「匿名だから大丈夫」と思うのは甘い考えです。問題ある投稿について、投稿者の情報開示が義務化されていきます。
一度投稿された情報は、自分が消した後でも拡散されてしまうので注意が必要です。責任を持って投稿することをとことん子どもに教えることが必要です。子どもの将来に影響してしまうので、慎重に行動するよう日頃から子どもとよく話しておきましょう。
インターネットは便利です。生活にも欠かせません。大量の情報も手に入ります。エンターテインメントも提供してくれます。その反面、まるで両刃の剣のように、上手く使わないと、自分も相手も傷つけてしまうことがあるのです。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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