2022.12.07
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サンタクロースからの卒業はいつ?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。幼いときは純粋にサンタクロースを信じていた子も、段々と「本当にいるのかな?」「パパとママじゃないの?」と疑いだすようになります。今回は「サンタクロースからの卒業はいつ?」をテーマに考えました。

サンタの物語はパパとママからの愛情表現

大きくなったからといって「実はパパとママがサンタでした」と告白したり、サンタからのプレゼントをやめたりする必要はないと思います。我が家では今でも、サンタは「いる」ことになっています。もちろん、成長した子どもたちは信じていませんが、「えっ、信じないの!?」「いい子にしていないとサンタさんが来ませんよ」と家族の楽しいコミュニケーションとして続いています。
実際に彼らがいつから信じなくなったのかは定かでないです。三人兄弟なので、上の子たちはまだ幼い弟のためにずっと信じているふりをしていました。長男と次男が一生懸命三男に、「クリスマスにはサンタさんが来るよ」と言っている姿はかわいかったです。

サンタの存在を守る親の愛情は素敵だと思います。私たちも頑張りました。クリスマスを海外で過ごすことになった年には、子どもたちは「サンタさんってホテルにも来るのかな」「どこから入ってくるの?」と心配していました。私たちは子どもたちにばれないように、スーツケースの中にプレゼントを隠して持って行きました。

クリスマスを自宅で過ごすときには、サンタへのおもてなしとしてミルクやクッキーを用意していました。子どもたちが寝たら、サンタが来た証拠としてクッキーをかじったり、ミルクを少しこぼしたりするのです。うっかり忘れてしまったときには、起きてきた子どもたちが「はぁ、今年は何も食べてくれなかった」とがっかりしていたので、「しまった」と反省したことを覚えています。

「ほしいものはもうサンタさんにお願いしたから」と言って、私に教えてくれなかった年は焦りました。そのときは「パパとママからもクリスマスプレゼントがあるので、同じものになったら困ります」と説明したら、やっと教えてくれました。

プレゼントの包装紙に店名が印刷されていることに気づかれてしまったこともあります。「なんでおもちゃ屋さんのラッピングなの?」「サンタさんも買い物をするのですか?」と子どもたちに疑われてしまいました。その時は「サンタの街にもショッピングセンターがありますよ」と冗談で答えたら、子どもたちも「嘘!」「本当に?」と笑っていました。

そんな苦労も今となっては楽しい思い出です。お父さんとお母さんがあれこれと工夫して、サンタの物語を守るのは、子どもへの愛情表現です。子どもたちにも伝わっていると思います。

日本とは異なる海外でのクリスマスの過ごし方

欧米ではクリスマスは家族や親しい友人が集まり、日本でいうお盆のようなイメージです。人が集まるのでケンカが起きたり、嫌な親戚とのいざこざがあったりと、クリスマスに起こるトラブルをテーマにたくさんの映画が撮られているほどです。私も去年はアメリカに住む息子たちに会いに行き、久しぶりに家族が集まって楽しい時間を過ごすことができました。

日本では宗教的な意味合いは薄いですが、クリスマスは本来キリストの誕生を祝う日です。ですから、海外では日本と違って特別な意味があります。私もデビュー前に香港にいたころには、教会でボランティア活動をしたり、キャロルを歌いに行ったり、バザーを開いたりと、10月くらいから時間をかけてクリスマスに向けて準備していました。クリスチャンは自分の身を清めてからクリスマスを迎えるために、自分の罪を神父様に告白して許しをいただいたり、争っていた人と仲直りしたりもします。神様が自分の子を世に送り出し、キリストが人間を救うために生まれ、私たちを救うために生きて、そして最終的には私たちの罪を背負って命を落としました。だから、私たちもこの神聖な日に、神に感謝し、人を愛し、改めて自分は良い人になろうと考えるのです。

クリスマスやお正月とワクワクするシーズンを家族で楽しみましょう

イベントや伝統行事は家族の絆が深くなって、楽しみが増えます。子どもたちも行事を通して、季節の移り変わりや伝統、誇り、外国の人たちの考え方などを学ぶことができます。我が家でも日本だけでなく中国やアメリカなどさまざまな国のイベントや文化を取り入れています。
たとえば、お正月には必ず散歩に行きます。家の周りを右回りに歩くと運が良くなると言われているからです。右回りに歩いているうちに家からどんどん遠ざかってしまったときはどうやって戻ろうかとみんなで考えて盛り上がりました。元旦は新しい服を着るという風習もあるので、大晦日にはみんなで買い物にいって全身の服を新しくそろえます。子どもたちが小さいときには、5月5日には成長を願ってしょうぶ湯にも入りました。
言い伝えの効果を本当に期待しているわけではありませんが、家族の時間を楽しんだり、感謝の気持ちを伝えたりするいい機会になると思っています。

息子たちの誕生日が10月と11月にあり、その合間にはハロウィンとサンクスギビングがあって、クリスマスが来て、お正月を迎えてと、秋から冬にかけての我が家はイベントのラッシュです。食べ物をたくさん用意して、コスチュームを作って、パイを焼いて、ターキーを予約してと本当に忙しいのですが、ワクワクする毎日でした。ぜひ読者の皆さまも楽しい家族の時間を過ごしてください。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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