2022.08.03
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0歳から保育園に入れることへの不安

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。共働き世帯は年々増加し、産後も子どもを保育園に預けて仕事に復帰する働き方も一般的となりました。ただし、まだ小さな赤ちゃんを保育園に預けることに罪悪感を覚える親も多いようです。今回は「0歳から保育園に入れることへの不安」について考えました。

赤ちゃんのためには生後6ヶ月までは一緒に過ごしてほしい

もし、経済的に、職場環境的に許される状況なら、赤ちゃんが1歳半になるまでは一緒にいてあげてほしいというのが私の本音です。

1歳半まで一緒にいることが難しいなら、せめて最初の6カ月は育児休業をとって赤ちゃんのそばにいてください。育休は法律で定められた労働者の権利です。今は子どもを育てながら働くことについて理解のある企業も多いので,ぜひ育休を利用していただきたいです。産後のママの身体にとっても、休養が必要です。パパがパパになるためにも、赤ちゃんと向き合う時間が大切です。育休をとることをお勧めします。

産後6カ月、赤ちゃんと一緒にいられるためには、妊娠する前から計画を立てると尚良いです。育休をとることで経済的な面で負担がかかるかもしれないし、仕事もそんなに休めないかもしれません。その場合は、パパが3カ月、ママが3カ月の育休をとるなど、どちらかが子どもと一緒にいられるように、その家庭にとって最善な方法をお互いに話をしながら決めていくのが望ましいと思います。

仕事復帰は赤ちゃんのことを第一に考えて万全に準備しましょう

育休が終わったら仕事に戻ると決めている場合は、保育園を探す必要があります。それも、生まれてから探すのではなくて、早めに行動しましょう。いい保育園はすぐに定員がいっぱいになりますので、早めに探す方が安心できます。

保育園を決めるときは必ず事前に見学に行きましょう。「見学をしてはいけない」という保育園はやめたほうがいいです。「私たちがオープンハウスするときだけ見に来てね」という保育園よりは、「いつでも見に来てください」というような保育園を選びたいです。その時の保育士の態度が一番重要です。

子どもが好きでしょうがない、子どもが大好きで笑顔が絶えない、そういう保育士がいる保育園だと安心です。一人の厳しい保育士が全体を仕切っていて、周りの人たちはビクビクしているようなところは不安です。小さな子は自分で表現できませんから、親がよく観察して妥協しないことです。子どもの相性に合わせて変えられるように候補はいくつか用意しておくといいと思います。

保育園を準備するだけではなく、子どもが病気になったときや、緊急の場合に保育園では預かってもらえないこともあります。だから、緊急時のネットワークも作っておきましょう。祖父母が近くに住んでいれば、「なにかあったときにはよろしくお願いしますね」と話しておくことも大切です。もし近くに親戚がいなければ頼れる友達や公的機関、ベビーシッターなども調べておかないといけません。

近くの病院や小児科についてもリサーチして、緊急のときはすぐに電話できるようにリストを作っておきます。誰かに預けるときも病院のリストがあれば安心です。

「親ってこんなに気を遣わないといけないの?」と大変に思うかもしれません。でも、本当に小さな命なので、全責任で守っていかなければいけないのです。赤ちゃんにとって最初の1年はすごく気をつけなければいけません。

そうやって、赤ちゃんのことをよく考えて万全に準備しておけば、子どもを預けて仕事をすることの罪悪感や、親として申し訳ないという気持ちも軽くなると思います。全力でプランニングして、万全な体制があれば、安心して仕事に復帰することができるでしょう。

安心して子どもを育てられる社会になることを願って

「0歳児クラスのほうが入りやすいから」という理由で、0歳から保育園に入れる親がいると聞きます。保育園が満員になることが心配で早めに入園させるということはせっかく赤ちゃんと過ごせる時間を短縮してしまうので、もったいないと思います。赤ちゃんにとって最初の一年は成長の黄金期、一生に影響を与える取り戻せない1年なのです。貴重な0歳期には、ぜひできる限り一緒にいてほしいです。

親が仕事に復帰する時に赤ちゃんが保育園に入れないという心配を解消するためには、日本の保育園の制度の改善と待機児童の問題の解決が必要です。「必ず保育園に入れる」保証は働くママに大きなサポートと励みになります。女性がもっと子どもを産んだり、働いたりすることを望むのなら、保育環境を揃える政策は欠かせないと思います。少子化対策として出生数は増やしたいが、「子育ての問題は自分たちで解決するように」のような考えかただと、若い夫婦にとって、過酷な選択です。2023年にはこども家庭庁が設置されます。子どもを取り巻く環境が少しでも改善されることを期待しています。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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