2022.04.06
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将来のためにやったほうがいい習い事はありますか?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。最近の子どもたちは習い事に忙しく水泳、ピアノ、英会話と毎日、予定がぎっしり......などという話も聞きます。今回は「子どもの将来のためにやっておいたほうがいい習い事はありますか?」をテーマに考えました。

水泳と自転車は一度覚えてしまえば忘れません

習い事と言えるかどうか分かりませんが、子どものうちに身に付けておいたほうがいいことは色々あります。
1つは水泳です。一度泳げるようになると一生忘れないものなので、小さいうちに覚えたほうがいいです。私は息子を3人とも、プールに連れて行って自分で教えました。子どもは覚えるのが早いので、簡単に学べます。地球の7割は海ですから、いざというときのためにも泳げた方がいいと思います。
あと1つは自転車です。これも同じく、一度覚えてしまえば一生忘れません。実は坂道の多い香港で育った私は自転車には乗れないのですが、それでも子どもたちには教えることはできました。日本でも自転車に乗っている人は多いですし、海外に行っても移動の際に自転車に乗れないと不便かもしれません。ですから、最低限この2つは子どもが小さなうちに身に付けたほうが将来役に立つと思います。

小さなうちから始めることで脳の訓練になることは?

将棋か碁、チェスのどれかはやっておいた方がいいと思います。我が家の子どもたちは、この3つはすべてやりました。脳の訓練にもなりますし、先を見通す力や数学的な思考にも良いです。この先の展開はどうしようと集中して考えることは、人生においてもプランニングの訓練になると思います。ハマる子とハマらない子はありますが、ひとまずルールを覚える程度は身に付けておいてもいいと思います。三人の子供のうち、次男だけが今でも囲碁にハマっています。

同じようにカードゲームやボードゲーム、クロスワードパズルなどもいいですね。カードゲームなら、簡単なババ抜きからスタートして、段々と複雑にしていってブリッジにたどり着くまで、小さなときから一緒に遊んで覚えることができます。人生ゲームやモノポリーなどのボードゲームもよくやりました。なぜだかは分かりませんが、ボードゲームは頭が良くなるとも言われていて、アメリカのアイビーリーグやスタンフォード大学に合格した子どもの70%以上が小さいときにボードゲームをしていたそうです。ゲームを通じて、みんなで遊ぶ楽しさや、互いに協力するような人間関係について学ぶことができるのもいいと思います。子どもの遊びに付き合うのは「面倒くさいな」と思うかもしれませんが、本気でやると大人も楽しいですよ。うちの息子たちは今でもボードゲームが好きで、去年、次男から長男にあげたクリスマスプレゼントはボードゲームでした。コロナ禍で外出を控えていることもあり、年末年始は家族でゲームをして過ごしましたが、私の知らないゲームもあって、一緒にやるのは新鮮で楽しかったです。


教室に通わなくても親が教えてあげられるならOK

経済的に余裕があっていくつも習い事教室に通えるなら別ですが、私は親が教えてあげることができるならそれで十分だと思います。水泳も自転車もカードゲームも一緒に遊びながら覚えたことなので、うちの子たちは「ママに教えられた」とは思っていません。無意識に身に付けたので、「全部自分で覚えた」「自分のものだ」と思っています。誰かから学んだのではなく、いつの間にか自分のものになっている、これが最高の教え方です。

もし、習い事の教室に行くとしたら、いくら子どものためだとは思っても、子どもの嫌がるものは習わせなくていいと思います。お母さんがバレリーナになりたかったとしても、子どもがバレエを好きではないならやめたほうがいいです。逆に、子どもの希望で始めてみたけど、途中で嫌になってしまう場合もあります。そんなときも無理して続ける必要はありません。「一度始めた習い事を最後まで続けなければいけない」という考えが、親の価値観の押し付けになってしまうこともあるので注意が必要です。「途中で投げ出してしまうと根性の無い子になる」という心配も分かりますが、習い事だけで根気を育てる必要はないのです。家の中のお手伝いをするとか、自分でできることを自分でするとか、やるべきことをきちんと続けられる子のほうが根気があってすごいと思いませんか?

習い事は、子どもの人生が楽しくなるようなものを

私も子どもたちに北京語が話せるようになってほしいと考えて、大学生に教えに来てもらっていたことがあります。その時は、子どもたちは真面目にやらずに寝たふりをしたりして、結局やめてしまいました。それでも、高校生になったら自分で中国語の授業を選んで勉強を始めて、大学生のときには中国に留学もしてすっかり話せるようになりました。子どもの頃に北京語を聞いたり、「世の中には他の言語もあるんだ」と意識したりしたことが良かったように思います。だから、たとえすぐにやめてしまったとしても子どものためにやることにはすべて無駄はないのです。
私は、習い事は子どもの心身を鍛えられて、将来の選択肢を増やすようなものだと思っています。もし、習い事をするなら子どもが嫌々通うようなものではなく、その子の人生が楽しく充実するようなものを選ぶといいですね。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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