2021.10.06
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「性教育」って恥ずかしい?小さなころから生命の神秘について教えましょう

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「『性教育』って恥ずかしい?小さなころから生命の神秘について教えましょう」です。子どもから思わぬ質問を受けてアタフタしたり、どこまで教えていいのか迷ったりしていませんか?

生命の誕生は神秘的で美しいこと

思春期を迎えて身体が変化してから、いきなり性教育について考えるのではなく、小さなころから生命の神秘さ、命が生まれる美しさを教えるべきだと思っています。よくある方法ですが、花を観察して「これがおしべとめしべ。花粉がくっつくと実がなるんだよ」と話すことから始めるのもいいですね。
生き物を育てることもおすすめです。うちは息子にアレルギーがあって犬や猫は飼えなかったので、いろいろと小さな生き物を育てました。チョウの幼虫や魚など、たとえ小さな生き物でも育てることで、命がどうやって生まれてくるのかよく分かります。みんなが一番感動したのは、カニです。小さなカニを川で見つけて、家で世話をしていたら産卵したんです!小さな姿で必死に石にしがみついて身体を振ると、卵がワーッと出てきて、私たちも涙を流しながら見守りました。

テラスでは植物もたくさん育てていました。植物の中にはオスとメスの木があって、一緒に植えないと実らない種類もあるんです。キウイの木に実がならなかったときに、「キウイにはオスとメスがあって、両方植えないとダメなんだよ」って教えてもらって、私たちも初めて知りました。そういった身近な経験を通して、自然界にはオスとメスがあって、合体すると生命が誕生する、美しいことだということが段々と分かってきます。

動物が子育てしている映像や、サケやカエルが産卵するドキュメンタリー番組を一緒に観てもいいですね。カエルのオスが互いに争ってメスと交尾するとか、鳥のオスが一生懸命にダンスしてメスに気に入ってもらおうとする映像を見ていれば、子どもからたくさん質問がくると思います。
うちでは、サケの産卵ビデオは何回も観ました。サケが命を懸けて川を上って、メスが産卵すると、オスが何かをかけます。すると、子どもたちが「何をかけているの?」って聞くので、「精子だよ。卵にオスの精子をかけないと魚が生まれないんだよ」って答えます。子どもたちも「おーっ」と納得していました。親が改まって話すよりも、子どもからあれこれ聞いてくれたほうが答えやすいですよね。生命の誕生について知っておけば、いざ自分の身体に変化が訪れたときも「あ!これか」って気づいてもらえると思います。

人間も大人になると大きな宇宙の生命のサイクルの中に入っていきます。これはすごく大切なこと。男の子は身体が変化するし、女の子は月経がきて、いつか自分の子どもを産むことができます。このサイクルの中で、子孫を残そうとするのは生き物に共通する本能だということは小さなころから話していいと思います。

相手や自分を大切にすることについて話しましょう

女性の身体はこうなっていて、男性の身体はこうなっているという具体的な話は学校でも教えてくれるので、それは聞かれたら話せばいいと思います。日本では親子が一緒にお風呂に入る文化もありますから、大人の身体についても何となくわかっていると思います。親として、必ず話しておきたいことは「相手や自分を大事にすること」です。うちは3人とも男の子ですので「相手を大事にしなくてはいけない」ことは、とことん教えました。女の子だったら「自分を大事にするのよ」って教えたと思います。性行為をしたら子どもができること、相手を傷つけてはいけないこと、エイズや性病のことも教えました。

昔は、身体が成熟すれば結婚して、子どもを産んで、自分の家庭を作りました。でも、今は大人になるまでにはもっといろんなことを学ばなければいけません。不意に子どもができても、まだ相手も自分も決断できる年齢ではなく、すぐに働いて子どもを養っていくことは難しいでしょう。本当に自分が親になる覚悟ができるまでは「ノーチャイルド、ノーチルドレン、ノーベイビーズ」の約束です。
親元を離れて海外の高校に進学するときも、「ノードラッグズ、ノーベイビーズ」と言って送り出しました。「ガールフレンドと性行為をしてはいけません」と言ったことはないんです。息子たちの男女交際についても詳しく聞いたりもしません。ただ、愛がないとダメなこと、相手を大事にすること、あなただけの問題ではなく傷つく人がいることは、繰り返し話しています。

生命は繋がっていくものです

生命が誕生する素晴らしさは絶対的です。だけど神秘的で美しいだけでなく、相手や自分を大事にすること、責任を伴う行動であること、気を付けて行う必要があることも教えましょう。
性教育と捉えると大変に思うかもしれませんが、自然界の流れなのであまり難しく考えなくて大丈夫です。子どもがいつか大人になって、今度は自分が親になっていく。私たちが何世代も繰り返してきたことです。私たちも生命のサイクルの一部として繋がっていくのです。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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