2020.07.01
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PTAなど子どもにまつわる地域活動、親はどう関わる?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「PTAなど子どもにまつわる地域活動、親はどう関わる?」です。親同士、大人同士の人間関係は複雑で、コミュニケーションのとり方に悩んでしまう方もいるでしょう。ちょっと変わっているかもしれませんが、私が心がけていた親同士の付き合い方についてお話します。

チャイルドファースト。子ども同士の付き合いを第一に。

学校やPTAなど子どもに関連する地域活動。親も一緒に参加して、大人同士が交流する場面も多いですね。子育ての相談相手を見つけられたり、ママ友・パパ友ができるので参加する方もいると思います。とはいえ、その中でどう振る舞えばいいのか悩まれる方もいるでしょう。私の考えは“チャイルドファースト”です。私のとる行動が、子どものためになるものかどうかを判断の軸にするのが一番大事だと思っています。

少し変わっていると思われるかもしれませんが、私の場合は子どもが大好きなお友だちとは仲良くなりますが、その子のお母さん・お父さんたちとは積極的に付き合いませんでした。というのも、子どもたち同士で仲良くなってほしいからです。大人の関係は子どもの関係に影響するので、親同士の仲が悪くなると子どもたちの友情が壊れてしまうこともあります。それは子どものことを考えると避けたいことでした。

私は元々仕事が忙しくPTAの活動の中心にいたわけではないのですが、もちろん親としてパーティーに参加するなどお手伝いはしていました。必要な連絡はしますし、PTAの方たちへの感謝を伝えたり、礼儀正しくお付き合いします。子ども同士でお泊りに行ったり来たりすることもありましたが、親だけで2人きりで会うといった親密なお付き合いはあえて避けました。

うまくいくこともありますが、大人の人間関係はとても複雑なので、どうしても陰口や噂が立つこともあります。親同士の関係がこじれて子ども同士が遊べなくなることもあります。なので、親である私は一歩引いて。少し覚悟はいりましたが、子どものことを第一に考え、あえて皆さん平等にお付き合いするのが私の姿勢でした。

地域活動参加の出発点は、子どもの興味から。

では、子どもたちの参加する活動に全く積極的でなかったのかというと、そうではありません。子どもが地域の野球やサッカーのチームに入りたいなら、私が調べて申し込んで、当番の時には足を運びます。子どもが興味のあることには、私も積極的に。アメリカにいたときにも、ハロウィーンやクリスマスなどパレードには一緒に参加したりと、様々な地域活動に関わっていました。日本に戻ってきてからも、子どもたちが参加できるボランティア活動に家族で関わるようになりました。

子どもが魚が好きなら水族館に行ったり、美術が好きなら美術館に連れて行ってみてください。そこには子どもでも参加できる活動がたくさんあります。このように親自身が周りの人が参加するから自分も参加する、知り合いがほしいという理由で地域活動に参加するのではなく、子どもが興味のあることをきっかけに地域活動への参加をしてみればいいと思うのです。その上で保護者として子供と付き添って一緒に活動するのもは良いと思います。このようなチャイルドファーストの付き合い方は珍しいかもしれないですが、私はこの方法で地域と学校とのスムーズな人間関係を保つことが出来ました。

子どもを一人ぼっちにさせない、セーフティネットをつくりましょう

親としての人間関係で重要だと思っていることは、子どものことを気にかけてもらえる大人を何人つくれるのかということです。よく私は自分のお葬式のときに、私が死んで悲しいのではなく、子どもが心配でやってくる大人が何人いるだろうと想像します。この大人たちが子どもにとってのセーフティネットです。

私の一番のセーフティネットは、香港にいる姉です。わたしにもしものことがあったら次の日には飛行機で飛んできてくれます。今までにも何度か子どものために駆けつけてくれました。親はこのセーフティネットとなってくれる人を、1人。その人がダメなときには2番目の人、3番目の人とつくっていくことが大事だと思います。

地域の方たちとのお付き合いを考える上でも、このセーフティネットがどれだけつくれるのかを考えてみてください。自分のためではなく、子どものために。子どもがよく懐いている野球チームの監督や習い事の先生など、そういう方が子どものことを気にかけてくれる人になるかもしれません。それが子どものためにつくっていく人間関係ではないでしょうか。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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