2020.02.05
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子どものプライバシー、親はどこまで踏み込んでいいの?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「子どものプライバシー、親はどこまで踏み込んでいいの?」です。SNSを利用する子どもを守るため、親に言えない悩みを抱えている子どもの本音を探るため、親とはいえどこまで介入して良いものなのでしょうか?

子どものネットやSNSの利用には親のチェックが必要。

最近SNS関連のトラブルや、さらには事件にまで発展してしまうニュースをよく耳にします。
子どもを狙う大人もたくさんいます。
親は子どもがトラブルに巻き込まれないよう何重にも気をつけておく必要があります。
子どもとその危険性を共有できるよう、ここで一度、SNSの危険性について整理しましょう。

私達は家の玄関に鍵をかけ、窓にはカーテンを引いて、無断侵入や外から見られる事を防ぎます。
気をつけないと、SNSやインターネットを利用するときはガラス張りの家の中に住んでいて、窓にもドアにも鍵をかけていない状況と同じです。
利用者の全ての行動が見られることになり、見知らぬ人がドンドン話かけてくることもできます。
大人は怪しい情報や誘いを見抜く事はできますが、子供は惑わされやすいです。
子供をターゲットにしている犯罪者も存在します。
だから、子供に自らプライバシーを守ることを教えないといけません。ドアに鍵をかけるように、インターネットを使う時も鍵をかける必要があるのです。子どもが無防備にインターネットを使うのはとっても危険です。
SNSやインターネットの使い方には親のチェックが必要です。子供を守るアプリなどを利用して、安全なインターネット環境を揃えてあげてください。
子どもの起こしたトラブルの責任をとるのも親です。ですからチェックをすることは親の責任とともに権利でもあります。
子どもにも、きちんとそのことを伝えれば、子ども自身も気をつけるのではないでしょうか。
子供の行動を監視するのはプライバシーの侵害と心配する親がいますが、子どもに何かあってからでは遅いのです。必ず後悔します。
プライバシーは難しい問題ですが、子供とよく話し合って、親は時々チェックすることを子どもと約束しておかなければいけないと思います。

日記につづられた子どもの本音を覗くことはダメ?

では日記ではどうでしょう。本来であれば日記を見る前に本人の行動をよく観察するべきだと思います。とはいえ家庭によってはなかなかコミュニケーションがうまくいかず、子どもの日記の内容が気になるという方もいらっしゃるでしょう。
本来であれば日記を見るのは避けたいことですが、子どもの様子がおかしくて、どうしても緊急に子どもの気持ちを知りたいときには、取り返しのつかない事態を避けるために、日記を確かめることもやむを得ない場合があると思います。

そして、もし「いじめにあっている」「死にたい」など悲痛な思いを日記で吐露しているのを見てしまったら、すぐに行動をとることが必要です。
子どもプライバシーを考えると、日記をみてしまったという罪悪感もあると思います。
でも申告の問題を発見した時は、まず日記を見てしまったことを謝った上で「あなたがここまで思い悩んでいたことに気が付かなくてごめんなさい」と、素直に気持ちをぶつけた方が良いと思います。
日記でもし子どもはどうすれば良いのかわからない、次の道が見えないと悩んでいるとしたら、親としては一緒に悩み、愛情をぶつけるのが一番です。
愛情をぶつければ、日記を見たことも子どもは許してくれると思います。

子どものプライバシーに踏み入る前に、日頃の様子に目を配りましょう。

SNSや日記を覗く前に、子どもが気になるのであれば、日頃から本人の行動をよく観察することが大切です。
できるだけ会話をして、隠し事のない関係を築くことが一番理想です。
それでも子どもの様子が変で、何か隠していると思うなら、まずは子供と話し合って、それでも、離せないものがあると強く疑ったら、調べるのは親の権利です。

私は子どもたちの健康や精神的な悩みを察知するためにも、食事の時間は必ず一緒にとるようにしていました。
言葉が少なくなったり、食が細くなったり、食事の後はすぐに部屋に戻るようなら「何かあったのかな」など変化に気がつくことができます。
そして「ママはあなたの味方、必ずあなたの気持ちを理解できる、応援するよ」と口酸っぱく伝えます。相談しやすい空気を作ることも重要です。

子どもによっては元気そうに見えても悩みを抱えている子、落ち込みやすい子、脳のホルモン分泌がうまくいかない子もいて、気持ちが不安定になる危険な時期はやってくるものです。そのときに親の無条件の愛を感じられていれば、その愛情が、子どもが極端の行動を取る前の“ストッパー”となるのです。

また思春期にもなると、異性に興味を持ち始め、新しい感覚が体と心で芽生えます。
好きな人ができたり、片思いをしたり、戸惑いを感じる子どもも言います。
親は人を好きになることを前向きに受け止めることは大切だと思います。
私は自分の初恋のことを話してから息子達に「付き合ってる子はいるの?」と聞いたこともありました。親が気持ちをオープンにして恋愛の話をするのが良いと思います。
一緒に過ごす時間を増やして、子どもとよく話し、様子をよく観察すれば、何かあるときにはすぐ分かります。
子供を守るには、親子の間に秘密がない関係を日頃から築きたいことです。
信頼関係があれば、プライバシーの問題もお互いの話で解決できるのです。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

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構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

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