2019.11.06
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

校則のあるべき姿とは?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「校則のあるべき姿とは?」です。最近ニュースで話題にのぼることも多い校則は、本来生徒を守るものですが、時には "足かせ"のように捉えられることも。校則といかに向き合えば良いのか、私の考えていることをお話したいと思います。

時代が変われば、校則も変わります。

校則を見直さないといけない時代にきているのだと、私は思います。例えば昔は、経済的に豊かな家庭の子は毎日違う服を着たり、目立つものを身に付けたりと、服装が原因でいじめや阻害感が生まれることもありました。そこで平等性を図る策の一つが、制服を統一することだったのです。ですが、時代が変わった今、皆適当な服を見繕うことができるようになり、身なりに関する校則は独り歩きしているように思うことがあります。

スカート丈の長短、必要以上に髪の毛を伸ばしてはいけない、染めてはいけない、化粧はダメなど。髪の毛を伸ばしたら頭が悪くなる?化粧をしたら授業に集中できない?そうとは限りませんよね。むしろそうすることによって、本人が自信を持って生活できるなら、それも認めて良いと思っています。

校則というのは、子どもたちに説得するだけの“材料”があるのならあっても良いのですが、生徒に意味を伝えられないような校則を「守りなさい」というのは教育上良いと言えません。これは「権力がある人に従わないといけない」というメッセージにも受け取れることです。学校は“教育”の場であり、子どもを“管理”する場ではないのです。

もし今ある校則について生徒が納得するような説明ができないのであれば、一度見直してみましょう。時代によって教育は変わりますし、世の中のルールも変わるものですから、校則も時代と共に変わっていくことは自然なことでしょう。

海外では、生徒と一緒に校則を見直すことも。

海外の学校にも校則はあります。携帯電話は保護者にかけるときのみ使用する、公共の場でカップルは必要以上にくっつかない、キスしないというものも。そこで、学校にもよりますが、もし生徒が校則に疑問をもったなら皆で議論をするグループが存在します。誰かに罰を与えることが目的ではなく、校則を議論し、投票したりして、必要があれば校則を変えていくのです。

私の息子が通っていた高校では、男子は髪の毛を長く伸ばしてはいけないことになっていたのですが「なぜ女子は伸ばしていいのに、男子は伸ばしてはいけないのか」と校則への異議を唱えて、息子は卒業式まで髪の毛を伸ばしていました。先生には度々注意されていたようです。ですが髪の毛が長くても誰か怪我をするわけでもないですし、成績が落ちたわけでもないので、先生たちも校則について疑問を持つようになり、これがきっかけとなって息子の通っていた高校は今、男子も髪の毛を伸ばしても何も言われなくなったそうです。とはいえ親としてはハラハラしましたし、短い髪型の方が似合うと思っていたので切ればいいのにと思っていましたけど(笑)

最近では、日本でも一部の学校では校則やルールを生徒自身で議論することあるようですね。先生だけで決めず、保護者や生徒たちと一緒に前向きに見直していく方法も手段の一つです。

生徒に教えたいことは、「校則」よりも「理念」。

時間には余裕を持って行動し、遅刻をせず時間を守る、いじめや暴力についての禁止事項など、周りに迷惑をかけないための校則はあってもよいと思います。ですが、学校生活でなによりも大切なことは、校則を守らせることではなく、理念を教えることです。

人を思いやる気持ち、惜しまずに勉強すること、より良い人生が送れるように努力しましょうなど、そういった、人としての根幹となる理念がとても大事です。これは子どもたちが大人になっていく上で、誇りとして刻まれていくものでもあるので、教育の現場では疎かにしてはいけないことです。

例えば、とある学校では朝、定時に門を閉めるそうです。生徒は門が閉まる直前になると、間に合うように猛ダッシュ。他の生徒が目の前でつまずいて倒れても、その子をまたいで門に向かうそうです。ですが本来であれば、倒れてしまった子を助けて一緒に門に向かえばよく、そこで1〜2分遅れたことを問題にするべきでしょうか。誰かを思いやること、人として正しいことをすること、これはどんな状況でも揺るぎない理念であることを生徒に教えたいものです。

本当に生徒一人ひとりが理念を持てれば、校則がなくても遅刻は少なく、勉強もしますし、いじめも起きません。本来あるべき教育を忘れず、校則以上に大切なことを生徒に伝えていきましょう。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!

「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。

pagetop