2019.03.06
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妊婦が気になる"胎教"で大切なことは?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「妊婦が気になる"胎教"で大切なことは?」です。頭のいい子に育てたい、優しい子に育ってほしいなど、様々な気持ちで出産を控えているお母さんたちにぜひ心がけてほしいことをお話します。

お母さんの心と身体が健康であることが、一番の胎教

日本では「胎教」というと英才教育のようなイメージを持たれる方もいるかも知れませんが、胎教で大切なことは、まずお母さんの精神や栄養状態を整えることです。特に日本は低体重児出産が多く、先進国の中では一番多いという調査結果もあるそうです。その理由の一つはお母さん本人の栄養不足と言われています。日本では「女性は痩せている方が可愛い」という考え方が根付いていて、妊娠してもあまり太りたくないという方が多いですね。でも健康的な子供を育てるためには、太って構いませんからちゃんと栄養のあるものを食べて、大きな子を育てるように心がけてほしいです。

私も妊娠中と産後しばらくは中国の習わしに沿って栄養をとるようにしていました。中国には“妊娠したら食べてはいけないもの”というのがあって、主に身体を冷やす食べ物のことをいいます。アイスや南国のフルーツ、赤い血が出ない海産物などは一切だめですね。コーヒーやカレーといった刺激物もだめです。でもそれ以外はもりもり食べました。私は3人子どもを生みましたから、この生活を9年間くらいしていました。体重も15キロ以上増えましたが、その甲斐あってか、うちの子は長男から順番に3800、3600、3400グラムと大きく健康に生まれてくれました。その後ちゃんと体重を戻すこともできました。だから、日本のお母さんたちも体型を気にせず健康な赤ちゃんを生んでください。健康的な出産をすることが、母子ともに一番大切なことです。

お母さんになる準備をして、心の健康づくりをしましょう。

身体的な健康と合わせて、精神的な健康も大事です。ストレスなく穏やかに、心を安定させて出産に臨むためには、“お母さんになるための準備”が大きな鍵です。特にはじめての出産では十分な準備ができずに心配になる方も多いです。準備不足のまま出産してしまい、お母さんが慌てている様子を見れば、赤ちゃんは不安になって夜泣きをしたり、体調を崩したり…何らかの影響が及ぶこともあります。だから、赤ちゃんがお腹にいるうちに、産後について準備をするのです。

自分の母親に子育ての話を聞くのもいいですし、家族が近くにいない方は、地域の母親学級に参加して、妊娠、出産についての基本的な知識を教えてもらってもいいですね。また、家の中の環境も整えて、子育てをするスペースを用意して、おむつをいろいろ買ってみて選んだり、母乳が出なくなったときはどうやってミルクを作るのかを調べてみたり。デパートなどのベビー用品のコーナーを歩くだけでも、産後のイメージが膨らんで役立つことがたくさんありますよ。知識が増えるとどんどん楽しくなるので、いろんな情報を集めて産後への準備をしましょう!

また、並行して教育について家族と話し合うことも準備の一つです。どういう子に育てたいのか、どんな人間に育ってほしいのか、そのために親や家族ができるサポートは何なのか。もしもの時のために、例えばお母さんがお産で命を落としすかもしれない、そうなってしまったらどうするかもちゃんと考えておいたほうがいいと思います。出産は人生の大きな転換期ですから、もちろん不安もあると思います。けれど計画を立てて不安の一つ一つをとり除き、「準備万端、もう何があっても怖くない!」という気持ちで産めば、その後の子育てもエンジョイできます。

妊娠のプロセスはお母さんだけでなく、みんなで楽しみましょう。

実はお腹に赤ちゃんがいるときにできることは、ほとんどないです。声もほぼ届いていません。ただ、音楽を聞かせたり、夫やお兄ちゃんに歌を歌ってもらったりしていました。これは声を覚えさせるためではなく、妊娠のプロセスを一緒に楽しむためです。

心理学的にみても、兄姉は下の子に嫉妬しやすいと考えられています。ですが、赤ちゃんができたよと伝え、一緒にお風呂に入ったりしながらお腹の大きくなる様子を見せてあげたりするとお母さんの変化を感じとります。そして一緒にお腹に向かって話しかけたり、歌ってあげたりすると“お兄ちゃん”“お姉ちゃん”としての意識が芽生え始め、嫉妬心を抱きにくくなるのです。「今歌ってあげたから、赤ちゃんが振り向いたね、すごいね」といえば、「お腹の赤ちゃんはぼくに頼っているんだ」と、お兄ちゃんとしての誇りを持ってもらえるでしょう。1番下の子は7年以上間を空けて生んだので、上の二人はお父さんみたいに面倒を見てくれて、子育ても上手になっていましたね。

お腹に赤ちゃんがいる時に、赤ちゃんに教えられる事があるかどうかは研究者の間で議論中です。ただ音楽を聞かせたり、夫やお兄ちゃん、お姉ちゃんに歌を歌ってもらったりするのは良いことです。たとえ赤ちゃんに聞こえていなくても、妊娠のプロセスを家族で一緒に楽しむ事ができます。
とにかく妊娠って、とても神秘的で面白いことです。お腹の中にもう一人いるなんてびっくり仰天ですよね(笑)。赤ちゃんが産まれたときは「この子がお腹の中にいたんだ」と実感して、とても感動します。妊娠、産後に何が起きても想定内と言えるように、周りの力も借りながら色々なことを準備してまたとないこの機会を楽しみましょう!

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

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