2019.01.09
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授業や講義の前に児童・生徒を惹きつけるには?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「授業や講義の前に児童・生徒を惹きつけるには?」です。

私も度々大学の講義を受け持つことがあります。そのときに行っている生徒の心の掴み方や、授業の目的の共有の仕方をお話します。

生徒の心を掴む、「とっておきの話」を用意する

先生という仕事は、私のような歌手の仕事と似ていて、大勢の前に立って、話して、何かを伝えるというパフォーマンスを毎日行っています。先生の中には、すでに生徒の心を掴むテクニックをいくつも持っている人もいるでしょう。中でも授業の始めの「導入」部分のパフォーマンスは、授業中のコミュニケーションを円滑にするためにも大切な役割を担っています。

私も授業の導入には、とっておきの「掴みの話」をいくつか持っていて、話す相手によって使い分けをします。私は真面目なタイプですが、授業中に笑いが起きることは大歓迎です。ですから、授業の始めに面白いことを言って笑いをとると、「この先生の授業は笑っていいんだな」と相手の気持ちが和やかになり、授業中もお互いにリアクションをしながら授業を展開できるようになります。ちなみに、日本人の生徒の前では「みなさんこんにちは。アグネス・チャンです。……本当です」と言うと、必ず笑ってくれます(笑)。自分では何が面白いのかわかっていないのですがお決まりの一言になっています。

始めはうまくいかないこともあると思いますが、自分のとっておきになるまで色々試してみてください。

私が実践している授業の導入のテクニック

導入部分では、ただ私に親近感を持ってもらうだけではなく、なぜ私が今日この場に来ているのかという目的をはっきりと共有することも有効だと思います。

香港のある大学の授業で、ジャーナリストを目指す学生を対象とした授業を担当したときのことです。一番始めの授業で、教室に入ってすぐに私はフレンドリーに生徒に話しかけていきました。色々なところを褒めてあげて、お土産にアメまで配ると、私が何をいっても拍手と笑顔で返してくれます。ものの5分で、クラス30名みんな私のことが大好きになったようです。そこで私は「困りましたね。みなさんはジャーナリストになるつもりですよね?ジャーナリストという仕事をすると、自分に都合の良いニュースを報道してほしいと色々な人が近寄ってきます。ご馳走してくれたり、かわいい人を連れてきたり、褒め立ててジャーナリストを気持ちよくする策を講じてきます。こんな簡単に相手のことを信用していたら、相手の思うツボです。ジャーナリストになるのですから、もっと人を疑う気持ちを持ってください。」と伝えました。

ジャーナリストの仕事をするとはどういうことなのかを初めて身をもって味わったのかもしれません。生徒はハッとして姿勢を正して、それからの授業をとても真面目に受けていましたね。

逆に授業開始とともに生徒同士で雑談が始まるときもあります。そんなときには、私は静かになるまで待ちます。こっちが待っても喋り続けるようでしたら出ていってもらいます。みんな大学生であり社会人でもありますから、こういった礼儀はちゃんと教え、こちらの心構えや授業に対する姿勢については、以下のようにお話しました。

「私は自分の時間を削って、いわば命を削って面白い授業を準備して挑んでいます。生徒のみなさんの時間もとても貴重な時間ですから、雑談をする人は邪魔になります。ここで皆さんに教えることは教科書にもネットにも載っていません。情報は私から発せられる言葉だけ。ですから、みなさんにも雑談している余裕はないはずです。」

ただ一方的にこちらが教えて、生徒が聴くのではなく、授業を一緒に作り上げて共に学びたいと思っています。授業の導入テクニックというよりも、この授業を通して生徒にどんなことを身に着けてほしいのかという目標を、率直に生徒と一緒に共有します。

一生懸命な気持ちが一番大事

授業の導入で生徒の心を掴む方法について、先生方はそれぞれコツを持っていると思います。でも生徒が一番イヤな先生というのは、一生懸命ではない先生です。笑いがとれたらいい先生ではないのです。掴みは下手でも、正直に「君たち一人ひとりを大事にしたい」という思いを語って、きちんと授業の準備をしていけば真心は必ず伝わります。それが一番大切です。

教育現場におられる先生方も日々、色々な工夫をされているかと思いますので、どんなことを行っているのかコメントをいただければ幸いです。ご意見ご感想は下記フォームにて募集しておりますので、どうぞお寄せ下さい。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部

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