2018.06.06
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家庭での主権者教育、どうすべき?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。第109回目のテーマは「子どもへの主権者教育、家庭ではどうすべきでしょうか?」です。

主権者教育で親が果たすべき役割とは?

公職選挙法の改正により2016年に18歳選挙権が導入され、主権者として必要な知識や自覚を育むための「主権者教育」が高校を中心に実施されています。

これを機に、家庭でも子どもに政治や選挙について教えることが必要だと考える親御さんは9割を超えていると言います。しかし、その中で実際に教えているのは3割ほど(資料:NHK「ウワサの保護者会:親子で話してますか?政治のこと」より)。「何歳頃から始めるのが望ましいのか」「何からどのように教えていけばよいのか」と思い悩み、二の足を踏んでいる親御さんは少なくないようです。

一方で、政治的中立性を確保することの難しさから、そもそも子どもには主権者教育をすべきではないという意見もあります。

家庭で政治や選挙について教えることは、子どもにどのような影響を与えるのでしょうか。また、子どもの主権者意識を育むために、親が果たすべき役割とは何なのでしょうか。今回は、家庭での主権者教育について考えてみます。

親は子どもの主権者意識を育むサポートを

18~20歳を対象にした2016年の世論調査によると、家族と政治の話をすることが「よくある」と答えた人のうち、同年の参議院議員通常選挙に「投票に行った」のは76.4%。その割合は話をする頻度が低下するにつれて少なくなり、「ほとんどない」人では40.6%となっています。また、子どもの頃に親の投票について行ったことが「ある」人の63%が「投票に行った」と答えているのに対し、「ない」人では41.8%にとどまっています(資料:総務省「18歳選挙権に関する意識調査 平成28年12月」より)。このことから、親が主体的に政治に関わり、家族で政治について話し合うことは、子どもの政治参加意識を育むために有効であると考えられます。

しかし、親は子どもによい影響ばかりを与えるとは限りません。同じ世論調査で、投票に行った人が政党や候補者を選んだ基準では、「自分の考えに近い政策を訴えていた(34.2%)」の次に「家族や知人の評価(14%)」が多くなっています。つまり、親の価値観に子どもが左右され、政治的中立性が保たれていない可能性があるのです。

とはいえ、子どもは親の考えだけでなく、様々なメディアの情報や人々の意見も見聞きするもの。家庭では政治的中立性を確保するよう努めながらも、子どもに国や社会の問題について関心を持たせ、情報を取捨選択して自分なりの考えを作っていくサポートをすることが、親の果たすべき役割ではないでしょうか。

アグネスの教育アドバイス「「家庭での主権者教育、どうすべき?」イラスト

「どうせ変わらない」ではなく「自分にも変えられる」と思える子に

では、家庭では何歳頃から、どのように主権者教育をするのが望ましいでしょうか。

我が家では息子達が小学校低学年の頃から、国家の仕組みや政治について話し、自分のこととして考えさせるように習慣づけてきました。例えば、国家とは一定の領域内に人々が集まり、安全に、豊かに暮らすために統治するものであること、政治家は国民の権利を守るために投票によって選ばれた代表者であること、国民は政治に参加し、政治家が責務を果たしているかを監視する権利があること、大人になったら国家の一員として税金を納める義務があることなどを、子どもにわかりやすい言葉で日常的に伝えてきました。これは基本的な話ですから、中学生や高校生に話しても有効だと思います。こうした会話を繰り返すうち、その時々の政治情勢や選挙などへと話が広がり、子どもからも質問が出てくるはずですから、親も関心を持ち、知識を得ておく必要があるでしょう。前述の世論調査にあるように、選挙に一緒に行くのもよいと思います。

家庭内で政治的中立性を確保するのは簡単ではありませんが、できる限りフラットに話すことを心がけてください。例えば、選挙の立候補者全員のマニフェストを見て「どう思う?」と問いかけたり、自分の支持政党や候補者については聞かれても「秘密」と明かさなかったり。子どもの質問に答えて意見を言った際には「お母さんはこう思うけど、他の人は違うかもしれないよ」と付け加えるなど、色々な考え方があり、自らの判断が大切であることを伝えるようにしましょう。

親が「選挙に行って何も変わらない」と嘆いていては、子どもは未来に夢や希望を持てず、政治に対して積極的にアクションを起こそうとはしないでしょう。世界には選挙で自分達の代表者を選ぶことができない国もある中、18歳で投票権を持ち、自分の声を政治に届けられるのは幸せなこと。その一票の重みを身をもって示し、教えてあげてください。

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アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

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構成:吉田教子/イラスト:あべゆきえ

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