2018.03.07
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子どもが健全な恋愛・結婚観を持てるようにするには?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。第106回目のテーマは「子どもが健全な恋愛・結婚観を持てるようにするには、どうすればよいでしょうか?」です。

恋愛観や結婚観は時代によって変わるもの

「アグネスの教育アドバイス 子どもが健全な恋愛・結婚観を持てるようにするには?」イラスト

共働きであるにも関わらず、家事や育児を一方的に妻に押しつける夫。そんな夫を尊敬できず、不満を募らせる妻。家の中では口論が絶えず、互いに手を上げることはないにしろ、決して仲の良い夫婦とは言えそうもない、そんな親御さんがいます。他方、仲の良い夫婦には「お父さんみたいに稼ぎのある男性を捕まえるのよ」「女は専業主婦がやっぱり一番幸せよ」などと娘に自分の成功体験を言い聞かせる親御さんもいるようです。

こうした両親の言動は、子どもの恋愛・結婚観に影響を与えると考えられます。しかし、恋愛や結婚についての考え方は時代によって変わるもの。子ども達は親の世代とは違う新しい価値観の影響も受けるでしょう。

「婚前交渉などもってのほか。一定年齢に達した男女は結婚して子どもをもうけ、男性は外で働き、女性は家庭を守って、一生を添い遂げる」……一昔前の日本では、こんな考え方が、いわゆる「健全」な恋愛・結婚観として大勢を占めていたと思います。しかし、今では男女交際はかなりカジュアルになり、婚前交渉に肯定的な人の割合は74.1%にまで増加。晩婚・未婚化は進み、「必ずしも結婚する必要はない」と考える人は63%、「結婚しても必ずしも子どもを持たなくてよい」と考える人は55%にも達しています(以上、NHK放送文化研究所 第9回「日本人の意識」調査 2013)。女性の社会進出に伴い、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に否定的な人の割合は54.3%(内閣府 男女共同参画社会に関する世論調査 2016)と過半数を超え、「結婚しても相手に満足できないときは離婚すればよい」とする人の割合は50.1%(同調査 2009)と、離婚への抵抗感も薄れる傾向にあります。

また、世界的にLGBTという多様な性のあり方への理解が進み、日本でも同性カップルを結婚に相当する関係と認める自治体が少しずつ増えているようです。

このように誰もが頷く「健全」な恋愛・結婚観というものがなくなりつつある時代、子どもは自分で望ましい恋愛や結婚のあり方を考え、選択していく必要があるでしょう。では、そこで親が果たすべき役割とは何なのでしょうか? 今回はそれを考えてみます。

「愛すること」を恐れない子に

まず、親は子どもに恋愛・結婚に関する自分の成功例や価値観を押しつけないよう注意する必要があると思います。思い当たる節のある人は、今後はそうしたことを子どもの前で口にしないように気をつけてください。そして、夫婦仲良く愛情いっぱいに育てることを通して、子どもに「愛することの素晴らしさ」を教えていただければと思います。

人を愛することは苦しみや悲しみを伴う反面、喜びや楽しさも与えてくれるもの。自分の意外な一面を発見し、驚くこともあるでしょう。そうした経験は、すべてその人の財産。この先、子どもがどんな恋愛や結婚のあり方を選ぶにしろ、傷つくことを恐れずに人を愛することができれば、その人生はより豊かで幸せなものになるはずです。

我が家では、夫婦力を合わせて息子達に目一杯の愛情表現を心がけてきました。小さなうちはできる限り一緒に過ごし、スキンシップを絶やさず、「大好きだよ」と言葉にして伝え、誕生日にはケーキを焼いて盛大にお祝いをしました。その甲斐あってか、成長した息子達は皆「自分に子どもができたら必ずバースデイケーキを用意して祝ってあげよう」と思ってくれているようです。

「愛の結晶」であることを我が子に伝えよう

たとえ夫婦仲が良くなくても、子どもへの愛に変わりはないはず。ですから、子どもに愛することの素晴らしさを教えることは可能です。子どもの前での喧嘩や口論は控え、自分達にとってかけがえのない存在であることを伝えてあげてください。

思春期を迎えた子どもには、夫婦の現状を率直に話すことをおすすめします。この年頃の男の子は女の子より幼く、大人の事情を理解できないことも多いので、反応を見ながら慎重に話をする必要があるでしょう。いずれにせよ、精神的に不安定な時期ですから、「お父さんが悪いのよ」などと、どちらか一方を責めるような言い方は避けてください。そして「お父さんとお母さんは愛し合って結婚し、君が生まれた。それは本当に幸せなことで、今もお互いに感謝の気持ちを持っている」「家庭を支えるパートナーとして、君が自立するまで一緒に頑張っていくよ」というように前向きな表現を心がけましょう。「私達がうまくいかなかったからといって、君もそうなるわけじゃない。だから安心して人を愛しなさい」と、将来に希望を与えるような言葉も忘れないでください。

離婚が避けられないのであれば、「本当に申し訳ない」と頭を下げて謝った上で、「これからも君のお父さん、お母さんであることに変わりはないからね」と言い聞かせ、子どもの不安をできる限り払拭するように努めましょう。

両親は子どもにとって最も身近なカップル。そのことを肝に銘じて、子どもの人生を後押ししてあげてください。

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アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:吉田教子/イラスト:あべゆきえ

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