2018.02.07
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集中力を身につけさせるには?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。第105回目のテーマは「子どもに集中力を身につけさせるには、どうすればよいのでしょうか?」です。

集中力がないと受験や仕事に影響も

「アグネスの教育アドバイス 集中力を身につけさせるには?」イラスト

「『授業中の集中力が足りない』と、いつも担任の先生に指摘される小学3年生の我が息子。家で宿題をしていても、すぐに他のことに気持ちが向かってしまい困っています」……ある親御さんから、こんな悩みが寄せられました。

集中力がないと、勉強をはじめ何をするにも効率が上がらず、時間がかかってしまいがち。受験で十分に力を発揮できない可能性もありますし、社会に出てからも仕事で思うように成果が出せないかもしれません。やるべきことが終わらないために、余暇に使える貴重な時間が減ってしまうのも残念なことです。我が子に集中力を身につけさせたいと望むのは、親として当然でしょう。

では、どうすれば集中力を養えるのでしょうか。よく「リビングで勉強させる際には子どもの気が散らないようにテレビや音楽などを消し、家族はシーンとして過ごしている」といった話を聞きますが、静かな環境だから必ず集中できるとは限りませんし、根本的な解決とは言えないと思います。理想は、いつでもどこでもパッと集中モードに入れること。そのために、家庭で何ができるのかを考えてみます。

時間内に一つのことをやり遂げる訓練を

集中力というのは、一つのことに夢中になっているときに発揮されるもの。例えば、スポーツ選手は競技に没頭しているとき、「ゾーン」という極度の集中状態に入ることがあるそうです。ゾーンに入ると「ボールが止まって見える」「疲れを感じない」「体が自然に動く」といった常にない感覚がもたらされ、最高の力を発揮できることが多いと言います。

ここまでの集中状態とはいかなくとも、それに近い状態に入ることは、子どもにも不可能ではありません。時を忘れてお絵描きやブロック遊びに没頭する我が子を見て、「どうしてこんなに集中できるの?」と思われたことはありませんか? まずは、子どもが夢中になれることで集中状態を体験させてあげましょう。ただし、オンラインゲームを際限なく続けてしまうように、自分の意思で行動をコントロールできない状態は依存症や中毒であり、集中状態とは異なるものと考えられます。漫然と好きなことをさせるのではなく、短時間で一つのことをやり遂げさせ、自分で集中スイッチのオン・オフができるように訓練することを心がけてください。

我が家の長男は料理、次男はジグソーパズル、三男は読書をきっかけに集中力を身につけました。このほかに、パッと開いた雑誌のページに「あ」の字がいくつあるかを見つける競争をする、バスに乗っている間にオレンジとグリーンの服を着た人を探す、といった遊びや、ボタン付けなどの細かい作業をさせる中でも、息子達の集中力は鍛えられたと思います。一定の時間内に完了し、目に見える成果が得られる遊びや作業を、親が一緒に行うことがポイントです。

脳をフル回転させて時間内に何かを完成させたという達成感は、子どもの自信につながるはず。「30分で宿題を終わらそう!」などと、この方法を応用し、根気よく続けることで、勉強や日常のやるべきことにも集中力を発揮できるようになっていくでしょう。親子で過ごす時間の多い幼児期から始めるのが理想的ですが、小学校、中学校からでも十分間に合うと思います。

「ここ一番」の場面では、集中を妨げる要素を排除する

集中力を身につけても、受験のような「ここ一番」という時には、緊張や不安から思うように日頃の成果を発揮できない可能性もないとは言えません。そうした際には、集中を妨げる要素を排除することも大切になると思います。

まずは「失敗するはずがない」という自信を持てるまで、想定できる限りの問題を解き、紙に答えを書くことを繰り返してください。私は今でもインタビューやコメントを求められる際には、実際に声に出して練習してから本番に臨みます。緊張が抑えられ、想定外の質問が来ても、さほど慌てずに答えられるようです。

地方から都市部へ受験に来る場合などには、慣れない土地に対する不安も解消すべきでしょう。試験当日に余裕を持って行動できるよう、前日までに会場の下見を済ませる。それが不可能な場合は、乗り換え案内のアプリやグーグルマップ等で道中のシミュレーションを何度もしておくことをおすすめします。また、万が一に備えて、緊急連絡先の電話番号や交番の場所なども調べておきましょう。そうすれば、違う路線や逆方向の電車に乗ってしまったり、駅の出口を間違え道に迷ったりしても、慌てずリカバリーできると思います。

こうして落ち着いた気持ちで試験に臨めば、それまでに培ってきた集中力は、おのずと発揮できるはず。我が子に余計なプレッシャーを与えないよう、親御さんもドーンと構えて見守ってあげてください。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:吉田教子/イラスト:あべゆきえ

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