2018.01.03
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親の転職や仕事の愚痴、子どもの進路への影響は?

親の転職や仕事の愚痴、子どもの進路への影響は?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。第104回目のテーマは「親が転職を繰り返したり、仕事の愚痴を言ったりしていると、子どもの進学や職業観に影響を与えるでしょうか?」です。

子どもは親の背中を見て育つもの

アグネスの教育アドバイス 親の転職や仕事の愚痴、子どもの進路への影響は? イラスト

「会社が評価してくれない」「上司とうまく付き合えない」と愚痴をこぼしては転職を繰り返すお父さん。「大きな会社に入らないと、お父さんみたいに苦労するわよ」「あんな仕事に就いたら大変よ」と、夫の会社や仕事について否定的な発言をするお母さん……。自分やパートナーの仕事への不満から、あるいは我が子の将来を案ずるあまり、つい、こうした言動を取ってしまう親御さんもいるようです。

しかし、このような親の姿は少なからず、子どもの進学や職業観に影響を与えると考えられます。親を反面教師として別の考え方・生き方を選ぶ子がいる一方で、「仕事は辛く、つまらないもの」と思い込んでしまったり、「うまくいかないのは周りのせい」と逃げ道を作ることを覚えてしまったりする子もいるでしょう。そうした子どもが先々、ニートや目的のないフリーターになるとは限らないものの、思考が後ろ向きになり、責任を持って一つの仕事をやり遂げることは難しくなるかもしれません。

とはいえ、楽な仕事などないのが現実。思うに任せず、仕事に誇りや自信を持てなくなることもあるでしょう。ですから、時には愚痴や弱音を口にしても構わないと私は思います。ただし、その際は逆境をバネに自分の幸せや夢を叶えようとする前向きな姿勢を子どもに見せることを心がけてください。「残念だけどうまくいかなかった。次は違う方法を試してみるよ」というように、仕事の苦労や難しさを他者や環境のせいにはせず、現状を変えるために努力していることを伝えるとよいでしょう。

転職を考えた時には、その理由を子どもに説明できるかどうか、まず自分の胸に問いかけてみてください。胸を張って話せるようなら、その転職は前向きな生き方を示すものとして、子どもに学びをもたらすかもしれません。逆に話すことがためらわれるようであれば、転職はしばらく待ってみてはいかがでしょうか。

果たせなかった夢を子どもに押しつけない

もう一つ、親が自分の価値観を押しつけることも、子どもの進路に影響を与えると思います。「良い大学を出て安定した仕事に就くんだぞ」「お母さんの夢だったピアニストになってね」などと、親は自分の果たせなかった夢や希望を我が子に託してしまいがち。

例えば、親が美術大学に通いたかったからといって、それを子どもに強制したらどうでしょうか。反発する子ばかりでなく、親の期待に応えようと一生懸命に頑張る子もいるでしょう。親が注目し、褒めてくれることは、子どもにとって何よりも嬉しいことだからです。しかし、抜きん出た才能がなければ美大に合格するのは難しいもの。見事、入学できたとしても、美大は科によっては就職が難しいとも言われています。親が自分の夢を押しつけたばかりに、子どもがしなくてもよい挫折や遠回りを強いられたり、金銭的な苦労に見舞われたりしてしまう可能性もないとは言えないのです。

親の夢と子どものやりたいことが同じで、さらに子どもに適性があることをしっかりと見極められているのであれば、目一杯応援してあげればよいと思います。しかし、子どもに他にやりたいことや得意なことがあるなら、親はその後押しをすべきでしょう。我が子をよく観察し、興味のあること、向いていることを見つけ、その才能を伸ばしてあげてください。

人生全体のプランニングができる子に

仕事は大事ですが、それは人生の一部。人を愛すること、家庭を持つこと、地域や社会に貢献すること、余暇を楽しむことなど、他にも大切なことはたくさんあります。従って、幼児の頃から、家庭や学校で仕事を含めた人生設計の方法を教えることも必要でしょう。

「どんな人になりたいか」「どんな生活がしたいか」を具体的にイメージさせると、人生の設計図を描く上で欠かせない自己理解を深め、想像力を育むことができると思います。「家の窓から何が見える?」「そばに誰がいる?」「職場はどんな所?」などと子ども達に問いかけてみてください。スラスラと答えられない子も、訓練を重ねるうちに自分なりに想像を膨らませ、言葉にできるようになっていくはずです。

我が家では、長男との間にこんなやりとりがありました。
長男「コックさんになってお金を稼いで、家族皆を海外旅行に連れて行ってあげる!」
「どんなお店をやりたいの?」
長男「スープ屋さん」
「スープだけでお客さん来てくれるかな?」
長男「じゃあパンを焼いて一緒に出すよ」
「いいね。でも海外旅行に行けるくらい繁盛する?」
長男「だったらスープの缶詰を工場で作って売る。世界中で!」
……そう言って目を輝かせる息子に、一生懸命に料理を教えたものです。結局、彼は料理の道には進みませんでしたが、思い描く人生は成長と共に変わっていくもの。親は、あまり先のことを「これ」と決めつけてしまわないよう気をつけましょう。

子どもの年齢が上がってきたら、訓練の中で、事故や病気、失業といったもしもの時の備えについても教えておくべきでしょう。こうして人生設計の方法を学んでおけば、子どもは困難に見舞われた時も、たくましく生きる力を発揮できると思います。そして将来の目標も持てるようになり、自ずとニートやフリーターになることは避けられるのではないでしょうか。

子どもに夢を与え、幸せに生きていく方法を教えるのは、親や教師の大切な役目の一つ。最も身近なロールモデルであるという自覚を持って、前向きに子どもと向き合っていってください。

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アグネス・チャン

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:吉田教子/イラスト:あべゆきえ

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