2017.08.02
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「甘えさせる」と「甘やかす」、どう違う?

「甘えさせる」と「甘やかす」、どう違う?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。第99回目のテーマは「3歳の娘に『抱っこして』とせがまれ、応じるのは"甘やかし"でしょうか?」です。

子どもの要求、どこまで受け入れる?

今回の相談者は、3歳の娘を持つお母さん。我が子から「ママがやって」「抱っこして」とせがまれた時には、「甘えたいのだろう」と思い、できる限り要求に応えてきたそうです。ところが、お友達のお母さんから「甘やかしすぎ」との指摘を受け、自分が子どもの気持ちを受け止めて「甘えさせている」のか、わがままを許して「甘やかしている」のか、よくわからなくなってしまったと言います。

「子どもを甘やかしてはいけない」という意見がある一方で、「たくさん甘えさせるべき」という意見もあります。しかし、幼い子どもを「甘えさせる」ことと「甘やかす」ことの線引きは難しいもの。愛情をたっぷり注ぎながらも自立した子に育てるために、親はどう我が子に向き合い、対応すればよいのでしょうか。子どもの成長や人格形成への影響も含めて考えてみます。

愛情表現は「甘やかし」ではない

自分一人で着替えられるのに「ママがやって」と言ったり、頻繁に「抱っこして」とせがんだり……子どものこうした言動は、ほとんどの場合、わがままではなく「甘えたい」という気持ちの表れなのだと思います。もしかしたら親子のスキンシップが十分ではないのかもしれませんし、幼稚園で何か嫌なことがあったのかもしれません。また、小さな子どもは大人より何倍も疲れやすく、暑さ寒さも感じやすいもの。歩いている途中に抱っこをせがむのは、疲れていたり、眠かったりする場合がほとんどではないでしょうか。いずれにせよ、子どもは甘えることによって親の愛情や自分の存在価値を確認しているのだと思います。それに応えるのは「甘えさせる」という愛情表現であり、「甘やかし」ではないと考えます。

一方、「甘やかす」というのは、駄々をこねれば何でも買い与える、食べ物を粗末に扱っても叱らない、友達に意地悪をしても注意しない、公共の場で騒いでも対処しない等々、親が子どもの言いなりになり、発達段階に合わせて教えるべきことを教えないことだと思います。

アグネスの教育アドバイス「「甘えさせる」と「甘やかす」、どう違う?」イラスト

子どもを「甘えさせる」のではなく「甘やかし」て育てた結果、その子は他者から何かしてもらうことを当たり前と思い、自分の思い通りにならないと癇癪を起こす、わがままな人間になってしまう可能性があります。忍耐力が足りず、失敗に弱いばかりか、他者を差別することに罪悪感を抱かない曲がった心の持ち主になってしまうかもしれません。どんなに我が子を愛していても、子どものためにならない「甘やかし」は愛情表現とは言えないでしょう。

教えるべきことは教えつつ、愛情表現はしっかりと

子どもにとって親は気持ちの拠り所。甘えてきた時には、喜んで受け入れてあげましょう。年の近いきょうだいがいると、一度に全員の要求に応えられない場合もあるかと思いますが、愛情を持って対応すれば、子どもは駄々をこねたりはしないはずです。例えば、小さな息子2人を連れて出かける時、次男を抱いている私は、長男が疲れて抱っこをねだっても応えてあげることができませんでした。そんな場合には、「ママも疲れちゃったから、ちょっと休もうか」と、ベンチなどに座って休憩するようにしていました。自動販売機で買った飲み物を飲んだりしながら20分ほど休み、「そろそろ歩ける?」と聞くと、長男は素直に歩き出してくれたものです。

もし親子のスキンシップが不足気味だと思うのであれば、親の方から積極的に抱っこやハグをしてみましょう。「抱き癖がつくのでは?」と心配になるかもしれませんが、親の愛情に満たされた子どもは、成長するに連れて自立心が芽生え、親とのスキンシップを嫌がるようになるもの。小さいうちは抱っこを喜んでいた私の息子達も、8歳頃には恥ずかしがって逃げ回っていましたから、ご安心いただければと思います。

ただし、子どもが何か間違ったことをした時には、「これはダメ」と叱り、その理由をきちんと教えてあげてください。小さな子どもでも、わかりやすい言葉で丁寧に説明すれば理解できるはずです。また、子どもは親の真似をして育つものですから、子どもに使ってほしくない言葉を口にしたり、やってほしくない態度をとったりしないように自ら努めることも必要でしょう。

まだまだ幼いと思っていても、子どもはあっという間に成長するもの。我が子が甘えるのは、子育ての中のほんの一瞬のことです。予定通りに物事が進まずストレスがたまることもあるかもしれませんが、子どもがくれたご褒美の時間だと思って、たっぷりと甘えさせてあげてください。

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アグネス・チャン

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:吉田教子/イラスト:あべゆきえ

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