2017.02.01
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失敗を恐れない心を育むには?

失敗を恐れない心を育むには?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験を基に、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。第93回目のテーマは「失敗を恐れず、色々なことに意欲的に取り組む子に育てるには、どうすればよいのでしょうか?」です。

挑戦をためらう我が子にヤキモキ……

あるお母さんから「息子が幼稚園に入った頃から、新しいことや苦手なことに尻込みするようになりました。ちょっと転んだだけで自転車に乗る練習をやめてしまったり、『上手に描けないから』とお絵描きを嫌がったり……少しうまくいかないと、もうそれ以上チャレンジしようとしない姿にもどかしさを感じます」という悩みが寄せられました。

子どもが興味のないことを無理強いする必要はないかもしれませんが、「やってみる勇気」は学びの第一歩。何でもすぐに諦めてしまう、逃げてしまう、というのでは、親としては心配でしょう。今月は、失敗を恐れず、色々なことに意欲的に取り組む子どもに育てるには、どうすればよいのかを考えてみます。

「結果を重視する環境」が子どもを挑戦から遠ざける

何度も失敗を繰り返してきた大人ならともかく、なぜ小さな子どもが失敗を恐れるようになるのでしょう? それには、結果を重視する家庭や教育環境が影響していると考えられます。

子どもが「上手に描けないから、お絵描きはしたくない」と思うのは、恐らく周りの大人から遠回しに、あるいは友達からストレートに「下手だね」と言われた経験があるからでしょう。自転車の練習をやめてしまったのは、転んだ時に笑われたからかもしれません。大人からすればささいなことでも、人生経験の少ない幼い子どもにとっては大きなショックで、知らず知らずのうちに心を傷つけてしまうことがあるのです。そうして日頃から人と比べられ、自尊心を傷つけられている子どもは、自己肯定感が低くなりやすい傾向にあります。新しいことや苦手なことを進んでやろうとしないのは、できる自信がないからなのだと思います。

一方、自己肯定感の高い子どもは、自分の長所も短所もすべて認めた上で意欲的に物事に取り組み、失敗にもくじけず前進していけるものです。足が速くないなら、「どうしたら君みたいに速く走れるの?」と、素直に人を称え、教えを乞うことができるでしょう。そんな、しなやかで強い心の持ち主は、友達や学びの多い豊かな人生を送ることができるはずです。

自己肯定感は幼児期から育むのが良いとされています。そもそも絵に正解はないはずですし、足の速さにしても年齢や性別で速い遅いは違ってくるもの。結果ではなくプロセスを重視し、他者と比べることの無意味さを言葉や行動で根気強く教えることが、親や先生には求められるでしょう。

大事なのは「結果」ではなく「プロセス」

まず、親は子どもを他者と比較しないでください。そして、親自身がどんな人の失敗も笑ったりしないように心がけ、他者から学ぶ姿勢を示してください。「人は人、自分は自分。周りから何を言われても気にしなくていいのだよ」と繰り返し子どもに言い聞かせ、他者ではなく自分自身と競争するよう働きかけることも大切だと思います。そして、子どもが何かに挑戦したら、結果ではなく、やってみた勇気やプロセスをほめてあげましょう。

アグネスの教育アドバイス:失敗を恐れない心を育むには? イラスト

例えば、子どもが走るのが苦手なら、「でも君はダンスが得意だよね。それを羨ましいと思っている子もいるかもしれないよ?」と自信を与えてあげてください。子どもと一緒に目標タイムを設定して練習し、昨日より0.1秒でも速く走れたら、「すごいね!」と笑顔で健闘を称えるのもよいでしょう。逆にタイムが落ちてしまっても、子どもの頑張りを認め、今の自分を超えるためのプロセスを応援してあげればよいと思います。

また、子どもが自分の描いた絵を友達から「これリンゴに見えないね」などと言われて傷ついているのなら、ピカソの絵をインターネットで検索するなどして、一緒に見てみましょう。そして、「これ女の人に見える? ママにはそう見えないのだけど、ピカソは女の人をこんな風に描いたんだよ。同じように、君がリンゴだと思って描いたのなら、これはリンゴなの。また描いて見せてね」と励ましてみてはいかがでしょうか。一緒にお絵描きをして、子どもの自由な表現をほめてあげるのもよいでしょう。「次は◯◯を描いてみよう」という意欲が湧いてくるかもしれません。

挑戦に失敗はつきものですから、当然、子どもは悔しい思いをすることもあるでしょう。しかし、プロセスを評価されたことで、子どもは失敗をいけないことではなく、自分に足りないことを学ぶチャンスと捉えられるようになるでしょう。チャレンジと失敗を繰り返す中で得た達成感は子どもの自信となり、徐々に新しいことや苦手なことにも自ら取り組むようになっていくはずです。その成長を、ゆっくり見守ってあげてください。

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アグネス・チャン

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:吉田教子/イラスト:あべゆきえ

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