特別支援学級ってどんなクラス?
特別支援学級に在籍する児童の自己理解や、通常の学級の児童への理解教育に活用する、「スモールステップ」を視覚化した教材を紹介します。
東京都公立小学校 主任教諭 山本 希代子
「階段」で伝える、一人一人の成長
「特別支援学級って、どんなクラス?」
特別支援学級が併設されている学校では、特別支援学級に在籍する児童にとっても、通常の学級の児童にとっても、気になる質問です。
それに対して、どのように答えればよいのだろう?と悩む学校の先生や、保護者もいるのではないでしょうか。
文部科学省は「小学校、中学校等において、障害のある児童生徒に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服するために設置される学級」と説明していますが、これをそのまま伝えることも難しく、「障害のある子がいく学級だよ」と省略してしまうと、次に「障害って何?」という質問が来たときに、「普通にはできないことがあって…」と誤解や偏見を招く表現になってしまう可能性があります。
私には、特別支援学級の開級を担当したときから、学級紹介に用いている手作り教材があります。私自身も発想を先輩から受け継いだものです。在籍する児童に対して、毎年4月に自己理解授業として行っています。
人はみな、階段を上るように一歩一歩できることを増やして成長していくものです。人は誰でも得意なことも苦手なこともあり、それによってできるようになるのが早いこともあれば、時間がかかることもあります。
高い階段を無理して上ろうとすると、途中であきらめたくなったり、疲れたりしてしまうことがあります。○○学級では、そんなとき、その子に合った階段を用意します。だから、安心して毎日を過ごして、成長していきましょう。
1クラスの人数と先生の数は、通常の学級とは違います(児童には「大きいクラス」と表現します。「通常」「普通」学級と表現すると、自分たちがそうでないように感じてしまう子がいるからです)。
大きいクラスは多くて35人に1人の担任の先生ですが、○○学級は多くても8人の子どもで1クラスです。子どもが少ないから、今どんな階段を上っているのかな、無理してないかな、ってすぐ分かるのです。
勉強していることは、国語、算数、体育……。大きいクラスと同じものもあるし、生活単元学習のように、社会や理科などもわかりやすく勉強するために、いくつかの教科を合わせた学習もあります。だから自分のペースで勉強を進めていけます。
つまり、○○学級は、「少ない人数で、ゆっくり自分のペースで勉強するほうが頑張れる子のクラス」です。
おうちの人も、「うちの子はゆっくりの方が楽しく頑張れそうだな」と、○○学級に入れてくれました。胸を張って、このクラスでできることを増やしていきましょう。
この階段のイラストは他の教科や生活の場面でも活用できます。「今自分はどこにいて、次は何を目指そうか」と、少しずつステップアップしていく自分をイメージして、取り組んでいくための意識づけに用いることもできます。
通常の学級の子どもたちにも伝えたいこと

階段の活用例。スモールステップで今の自分の位置を確認する(筆者作成)
さらには、この説明を年に一度の交流学年との理解教育の導入に用いています。
特別支援学級の児童は、誰かと比べたり、一律の基準で「できる・できない」と判断されたりするのではなく、自分のめあてに向かって、それぞれ自分のペースで頑張っているのだということを毎年確認します。
この説明には、「だから一緒にできることはやろうね」「頑張っているところを応援してね」「困っていたら声をかけてね」という呼びかけと併せて、「みんなも同じ。周りの人と比べなくていいんだよ」という通常の学級の児童に対するメッセージも込められています。
文言をそろえることは大事です。特別支援学級について「障害」という言葉を使わずに「少ない人数で、ゆっくり自分のペースで勉強する学級」と説明していることを、学校の職員にも、保護者にも共有します。
私は新一年生の保護者会で特別支援学級の紹介を担当するときには必ず、「もしお子さんに聞かれたら、この文言を使って説明してあげてください」とお願いすることにしています。
スペースがあれば、廊下の掲示板にもさりげなく貼って、通りすがる児童や保護者、地域の人の目にも触れるようにしてありました。
自分はこれでいい、と思えるように
悲しいことですが、小学校1年生のときには、「お友達の〇〇ちゃん」だったのに、卒業するまでにはどこかで認識が変わり、「障害のある○○ちゃん」と通常の学級の児童たちとは違うもののように扱われたり、時には心ない言葉をかけられて表情が暗くなってしまったりする児童がいます。
そのような言葉を本人にぶつけてしまう児童に対しても、何らかの救いの手が差し伸べられるように祈るばかりです。
でも一方で、「そんな簡単な宿題やってていいな~」と少し嘲笑を含んだ声かけをされたときに、「ゆっくり勉強しているからいいんだよ!」と反論した児童もいました。
交流授業で「自分は○○学級に入ってこんなに変わりました!」と自己紹介した、途中から転学してきた児童もいました。
「僕たちは勉強はゆっくりだけど、社会に出て生きていく力はついている!」と胸を張って卒業していった児童もいました。
現実として違うところがあるのは事実だし、時間がかかることもあります。生きていく中で、偏見や差別にさらされることも、きっと完全に避けることはできません。
でも、そんなときに、「でも自分はこんなことができる」「こんなにいいところがある」「頑張ってきたし、頑張っているから、自分はこれでいい!」と前向きに受け流せるだけの自己信頼を持てるよう、日々の教育活動を心がけています。

山本 希代子(やまもと きよこ)
東京都公立小学校 主任教諭
特別支援学級の担任を20年以上しています。
公教育における少数派の子どもたちに、学ぶ楽しさやできるようになる喜び感じさせたいと、イラストや音楽、応用行動分析の手法などを取り入れながら、安心して楽しく学ぶ授業づくりに努めています。
いろいろな背景をもつ子どもたちを包摂するインクルーシブ教育と、それを取り巻く保護者や教員の支援の方法、福祉など他領域との連携の方法を試行錯誤中です。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事
「教育エッセイ」の最新記事













アグネスの教育アドバイス
映画と教育
震災を忘れない




この記事をクリップ
クリップした記事
ご意見・ご要望










