2017.04.24
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「時間がない・・・」 小学校から短大に移って感じたこと

22年間勤めた小学校を辞め、この春から短大に移りました。

授業も始まりました。

そういった日々で感じたことを綴ろうと思います。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

「はじめに」

今、最も強く感じていることは「時間がない・・・」ということです。

何の時間かと言うと「学生が社会に出るまでの時間」です。

私は、この春まで小学校三年生を担任していました。

彼らは8歳~9歳の子ども達でした。

義務教育を終え、中学校を出て働く(多くはないですが)としても、あと6年間ありました。

高校を出るまでは9年後、大学を出るまでは13年後です。

「ちゃんと社会に出た時のことを考えなさい。」とかなり将来を意識して言っていましたが、それは私にとっても、子ども達にとっても遥か遠くの話でした。

しかし、今、授業を受け持っている学生は二年生なので、普通ならば、来年には社会に出て働くことになります。

厳しい世界に出ていくまであとわずかなのです。

時間がありません・・・。

「お金を払うか、もらうか」

学生の間は「お金を払っている」立場です。

年間で数十万円から百万円ほどを払っています。

遅刻をしても何とかなりますし、授業中に居眠りをしても何とかなります。

トラブルがあれば、担当の教員が親身になってフォローをしてくれます。

しかし、社会に出て働き出したら今度は「お金をもらう」立場です。

劇的な変化です。

彼らの人生の中で最も大きな変化かも知れません。

教員が遅刻をしたら授業になりません。

遅刻なんてあり得ません。

周りの教員も同じように働いているので、若い教員に対して、十分なフォローができない場合も多いです。

若い教員が自力で問題を解決していくことが求められます。

「厳しい現場に出るまでに」

今、私が接している学生はそういった厳しい現場にあと少しで立つ人達です。

これまで、小学校の教員をしていた時も「時間を守るように」「しっかりと挨拶ができるように」「忘れ物をしないように」などと言ってきました。

けれども、今はその言葉の意味合いが違ってきます。

本当に身に付けて欲しいと強く強く思います。

小学校の現場で学生気分の抜けない若い先生達を何人も見てきました。

寝坊をしてしまう人、期限を守れない人、周りを頼ってばかりいる人、アドバイスが聞けない人・・・・。

「より良く生きていくために」

現在、健康教育を担当しています。

講義名は「健康・スポーツ理論」です。

幼稚園教諭や保育士を目指している学生が相手です。

授業の始めに「より良く生きていくために・・・」と言う全体を通したテーマを伝えました。

私が担当している授業の中に、自分自身が、家族が、関わる子ども達が「より良く」生きるために知っておいた方が良い内容が非常にたくさん含まれています。

学生達の短期的な目標としては「資格取得のための単位を取る」ということなのだと思います。

しかし、それ以上に「より良く生きていくため」のヒントを得て欲しいと思っています。

すぐに実際に職場で子どもの相手をするようになります。

また、自分自身が親になる日々も遠からず訪れます。

そういった段階にいる学生にしっかりと大切なことを伝えていきたいと強く思いました。

「改めて、教育の役割とは・・・」

改めて、教育の役割について考えています。

これまで教育とは「人を育てること」だと思っていました。

小学校において、基礎基本を大切にしてきたつもりです。

また、全人格の健全な育成にも力を注いてきたつもりです。

しかし、今の立場から振り返ってみると、十分でなかった点がいくつも見えてきます。

特に感じているのが「コミュニケーション」に関する部分です。

極端な言い方をすると、数学の因数分解ができなくとも、「薔薇」という漢字が書けなくとも、「Library」というスペルが書けなくとも、高いコミュニケーション能力を持っていれば、社会で通用できる可能性が高いのではと感じています。

もちろん、上で挙げた基礎基本と言われるものはできるに越したことはありません。

それと共に、もっと「コミュニケーション」の力を底上げするようなことが求められているように感じています。

働くということが間近にある「大学生」、「短大生」、「専門学校生」、「高校生」などの段階で切迫感を持って取り組むというのも方法の一つだと思います。

それ以上に有効なのが、小さい頃から少しずつ培っていくという方法だと思います。

2020年の大学入試制度改革などによって、各学校の学びが大きく変わり出そうとしています。

この時期にそれぞれが属している学校などにおいて今まで以上に将来を見据えた教育をしていくことが望まれているのだと思います。

私はこれまでも真剣に授業をしてきたつもりです。

けれども、もっと真剣に授業に取り組み、学生達の学びの手助けをしていきたいと強く思っています。

そして、自分が関わった学生達が社会においてしっかりと貢献できていくと嬉しいです。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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