2007.07.17
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かしこく飲む 【健康】[小6・体育]

第十二回目のテーマは「かしこく飲む」。自分の健康を考えた賢い水分補給の方法を学びましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

イラスト

 夏は水分補給が大切です。しかし清涼飲料水を飲みすぎると、糖分のとりすぎが心配になります。清涼飲料水に含まれる砂糖が、入っている量ほどには甘く感じない秘密を調べながら、砂糖のとりすぎについて考えます。さらに、上手な水分補給の方法に気づかせていく学習です。体育の保健領域で1時間ほど授業をしました。

ペットボトル飲料への注意を喚起

 子どもが好む飲み物には多くの糖分が含まれています。清涼飲料水を多量に飲用して糖尿病を発症する「ペットボトル症候群」が注目されています。知らず知らずのうちに大量の砂糖をとっているのです。そこで、糖分がそれほどたくさん含まれているとは思えない清涼飲料水に、実は多く含まれていることを知り、そのことを通して、糖分のとりすぎに対する自覚を持たせたいと考えました。
 

飲み物に含まれる糖分に関心を持ち、自分の飲み物のとり方を見直すことができる。
飲み物を正しく選んだり、糖分の好ましいとり方を考えたりすることを通して、健康を考えた水分補給をしようという意欲を持てる。
飲み物に含まれる糖分量が分かり、飲みすぎによって健康への影響があることが分かる。

以上の目標を設定してとり組みました。

砂糖をとりすぎるとどうなるか?

 はじめに、炭酸飲料を見せながら
「この中に砂糖は入っているかな?」と問いかけました。
「炭酸水はたいてい甘いから入っているよ」、
「入っていて当然だ」という子どもたちの発言に対して
「では、どうすれば砂糖が入っていることが分かるかな?」と聞くと、
「表示を見ればいい」という意見が返ってきました。
 

 そこでペットボトルの表示に注目させました。ところが、表示を見てもどこにも「砂糖」とは書いていません。「糖分」の文字も見つかりません。
 栄養成分表示では、砂糖は「炭水化物」と表示されていることを説明すると、子どもたちはとても驚きました。
 

 次に、砂糖をとりすぎるとどうなるか話し合いました。子どもたちからは
「太ってしまう」、
「虫歯になりやすい」、
「血糖値があがる」などの意見が出てきました。
 

「他にもあるよ」と言って、
「血液の流れが悪くなる」、
「食欲がなくなる」、
「疲れやすくなる」、
「イライラする」などの砂糖のとりすぎの害を説明しました。
 あわせて砂糖は体や脳を働かせる、エネルギーのもとになる、という大切な働きがあることも話しました。
「砂糖は消化吸収がいい食品ですが、とりすぎたエネルギーは脂肪として体内にたまっていくのです。1日にとっていい砂糖の量は約20gです」と説明しました。
「20gはどれくらいか?」と問いかけ、角砂糖(6g)を見せて
「この角砂糖で3個ぐらいです」と話しました。

こんなに砂糖が入っている!

 次に砂糖がどれくらい入っているかを角砂糖で示しました。
 数種類のペットボトルの清涼飲料水の名前を確認しながら、その前に置いた紙皿の上に角砂糖を載せていきました。子どもたちがよく飲む清涼飲料水で調べると、500mlで49gから60g(角砂糖で8~10個に相当)。スポーツ飲料でも21gから33.5g(角砂糖で3~5個に相当)の砂糖が入っていたのです。
「ええ! そんなに入っているの?」、
「だから飲みすぎるとよくないんだ」、
「でも、こんなに砂糖が入っているとは思わなかったよ」と角砂糖が並ぶことで砂糖の多さを実感できたようでした。
 

イラスト

「こんなにたくさん砂糖が入っているのに、そんなに甘く感じないのはどうしてだろう?」と投げかけて、飲み比べの活動につなげました。
 始めに示した炭酸飲料に含まれている砂糖と、同じ量で作った砂糖水と炭酸飲料を飲み比べます。砂糖水の方は、
「甘い、甘すぎる」、
「気持ち悪い」、
「とても飲めないよ」と声があがりました。
 

 飲み比べして感じたことや考えたことを班で話し合わせると
「冷たいから甘さをあまり感じないんだ」、
「他にいろんなものが入っているから甘さに気づかないのかも」という意見が出ました。
 

「アイスクリームも溶けたときにはとても甘く感じますね。炭酸飲料だってぬるくなったら甘くなりますね。同じことなのです」。
 温度が低くなるほど甘さを感じにくくなり、知らず知らずのうちにたくさんの糖分をとっていることに気づかせることができました。

上手な水分補給を考える

 最後に、糖分のとりすぎは将来、生活習慣病になる危険性があることに触れた後、水分補給の上手な方法についてグループで話し合わせました。
 子どもたちからは
「一気のみをしないでコップに入れて飲む」、
「氷を入れて飲む」、
「お茶を飲む」、
「果物で水分をとる」などの意見が出ました。飲んだ砂糖の分だけ運動することも大切であることも話しました。
 

 子どものころの食習慣が大人になってからの生活習慣病につながりやすいと言われます。清涼飲料水が一方的に悪いというのではありません。自分の健康に留意し、問題意識を持ち、望ましい水分補給とは何かをよく考えて実践する、「かしこく飲む」ことが大切なのです。

(文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえ、みうらし~まる〈黒板〉)

授業の展開案

清涼飲料水の容器に印刷されているラベルに書かれていることを調べてみましょう。
 

お菓子やケーキに含まれる糖分の量についても調べてみましょう。

 

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