2007.06.19
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味噌に塩を入れると腐らない? 【科学・食文化】[小5・理科・総合]

第十一回目のテーマは「食品保存」。味噌作りを通して食品保存の知恵を学びましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

味噌

 梅雨は食べ物が腐りやすくなる時期です。腐らせないようにする「保存法」とともに、上手に腐らせる「発酵」も食文化の知恵です。そこには科学があります。今回は腐らせないことをテーマに取り上げた5年生の実践を紹介します。身近にある食品保存の知恵や保存食について見つめ直すことにつながり、乾燥させる、砂糖に漬ける、発酵させるなどの保存の工夫にも目を向けることができました。

総合的な学習の時間「味噌作り」から 

 総合的な学習の時間に、地域の方との味噌作りに挑戦してきました。ちなみに味噌は、茹でた大豆に麹を混ぜ発酵させて作るものですが、忘れてならないのが塩。地域の方からは「味噌は、麹に塩水を混ぜたものを大豆に入れて作るんだよ」と教えられました。

 また「味噌を長く漬け込むなら塩が多いほうがいいよ、塩が多いと腐らないんだよ」と話してくれました。
 この話を聞いて子どもたちは疑問に思いました。
 「塩が入っていると本当に腐らないのだろうか?」と。
 そこで、確かめてみたくなりました。

塩の防腐効果を実験で確かめる

塩水に漬けた食パンとただの水に漬けた食パンを比べ、塩の防腐効果を調べる
塩水に漬けた食パンと水に漬けた食パンを比べ、塩の防腐効果を調べる

 「塩を入れるとものが腐らない」ということを自分たちで確かめる実験を始めました。

 まず、水に漬けた食パンと塩水に漬けた食パンを比べたり、塩分を水で洗い流した漬け物とそのままの漬け物を比べたりする実験方法を考えました。例えば、「キュウリに塩をつける」という方法は、洗ったキュウリを輪切りにして塩を入れたものと入れないものを作って比べるのです。数日後には塩を入れないものは腐り始めました。

胡瓜

 一方、腐らなかったキュウリを見て「これってキュウリの漬け物だよ」という一人の子の発言にみんな納得。野菜に塩を入れることで腐らなくなる、これは漬け物なんだとあらためて気づきました。
 また、魚に塩をまぶしたものはそうでないものに比べると長持ちします。
 「これって、塩鮭のことだね」と身近にある保存食に関心をもつことができたのです。
 研究室で行うような厳密な実験ではありませんが、塩の防腐効果について自分の考えた方法で確かめることができました。

地域独特の食品保存の工夫

 それから、塩を使う以外の食品の保存法を調べてみました。乾燥させる、砂糖に漬ける、発酵させるなどが見つかりました。さらに、自分たちの地域にはどんな食べ物の保存法があるのかも探ってみました。


鮭

 干し大根、干し柿、切り干しイモ、梅干しといった乾燥させて保存する食品とともに、野菜の保存の仕方についても話が出てきました。例えば、タマネギやトウガラシは軒の下につるしておくと、床に置いた状態に比べ風通しがよく長持ちするのです。ほかにもキャベツやレタスは新聞紙で包みビニール袋に入れておく、ゴボウは畑の土の中に埋めて保存する……等々。このように、野菜の個性を知り、それを生かした保存法があったのです。

 後で分かったことですが、実は、味噌を作るときの塩分濃度は5~25%がカギ。5%より低いと微生物が働いて腐ってしまい、25%以上にすると今度は微生物が死んでしまい何年たっても塩漬け大豆のままで味噌にはならないのです。微生物や酵素の働きをうまく利用して、腐敗と加工を左右する塩加減を工夫することで、目的に合った味噌を作ることができるのです。「塩梅(あんばい)」とはよく言ったものです。

(文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえ、みうらし~まる〈黒板〉)

授業の展開案

食品保存以外にも塩にはいろいろな利用法があります。どんなものがあるか調べてみましょう。
 

地元地域に伝わる食品保存の工夫(乾燥させる、砂糖に漬ける、発酵させるなど)でできている食品を探してみましょう。

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