ぷかぷか浮かぶ、浮力の科学 【科学遊び】[小5・理科・家庭科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第三回目のテーマは「浮力の科学」。実験を通して身近な野菜に関心を持ちましょう。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
水に浮く野菜、沈む野菜とは?
ジャガイモは水に浮くと思いますか? サツマイモはどうでしょう? キュウリは? いろいろな野菜で試してみましょう。野菜が水に浮くか沈むかには、おもしろい決まりが見つかります。
水に浮く野菜、沈む野菜に分かれた!
では、水槽を用意してください。できるだけ大きな水槽がいいでしょう。水を八分目ほど入れておきます。
まずはピーマンから始めます。「中があいているから浮く」、子どもたちからそんな答えが返ってきました。試してみると、予想通り浮きました。次はキャベツ。これも同じような理由で、「葉っぱの間に空気が入っていそうだから浮く」と予想しました。結果はその通りになりました。続いてのタマネギは浮くと沈むの予想が半々に分かれました。結果は浮きました。
ジャガイモ、サツマイモと予想しながら試してみます。ほとんどの子が沈むと予想しました。結果は沈んでいきました。 さて、このあたりで子どもたちは気づき始めます。「土の上にできる野菜は浮く、土の中にできる野菜は沈むのではないか」。果たしてこの仮説は当たっているでしょうか。
キュウリで試します。土の上にできるので浮くはずです。予想通り浮きました。今度はダイコンです。土の中にできるので沈むはずです。予想通り沈みます。 このように仮説を立てていろいろな野菜を試していくとおもしろさが倍増します。キャベツやカボチャ、キュウリなど地上で育った野菜は水に浮くのです。ニンジン、ゴボウなど地下で育った野菜は沈むのです。いわゆる根菜と呼ばれている野菜です。 |
水より大きい密度の野菜が沈む
半分に切ったダイコンはどうだろう?
浮くか沈むかは、水の密度に対する他の物の密度の大小で決まります。水は100cc(100ml)でおよそ100gという、大変わかりやすい「かさ」と「重さ」の関係にあります。水とダイコンを同じかさにしたときの重さではダイコンが重い(密度が大)ので沈みます。ダイコンをどれだけ小さく切っても沈んでしまうのは、かさと重さの関係で決まるからなのです。
トマトを水に入れるとどうなると思いますか。トマトは、完全に熟しておいしさがぎっしり詰まった分だけ重くなる野菜なのです。真っ赤なおいしそうなトマトは水槽の底へ沈み、まだ熟しきっていないトマトは水面にプカプカ浮かび上がります。これを応用して、ミニトマトの糖度を簡単に計る方法があります。水に入れて浮くか、沈むかを見るだけです。水に沈むミニトマトは糖度が高く、8度以上あります。
(文:藤本勇二 イラスト:みうらし~まる)
授業の展開案
今回紹介した野菜の他にどんな野菜が浮くか、沈むかを確かめてみましょう。
米作りでよい種籾を選ぶ方法に「塩水選(えんすいせん)」があります。塩水を使って沈んだ充実したものだけを、種籾として使います。農家の方に「塩水選」のことを聞いてみましょう。
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