水に溶けない砂糖 【食と科学】[小5・理科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第八十四回目の単元は「水に溶けない砂糖」です。
マジックの事前準備
【用意するもの】
- 大きめの容器(コーヒーの空きびんのように透明なもの):1
- 透明なコップ:2
- スプーン:1
- 砂糖(料理でよく使う上白糖)
- 角砂糖
事前準備として、砂糖を溶かしておきます。手順は次の通りです。
1)大きめの容器に水を入れ、砂糖をかき混ぜても溶けなくなるまで少しずつ溶かす(※砂糖の溶解度は水100グラムに対して203.9グラム(水温20度)ですので、これを目安にしてください)。
2)容器の底に溶けきれなかった砂糖が残るので、溶け残りの砂糖が混ざらないようにしながら、透明な砂糖水だけをコップに移す。
3)2)の砂糖水と、同じ量のただの水を入れたコップを用意する。
角砂糖が溶けない!
さあ、マジックの開始です。
「砂糖は水に溶けましたね」
そう言いながら、ただの水の入ったコップと角砂糖を子どもたちに見せます。そして、
「角砂糖を入れてみますね」
と言って角砂糖を1個入れます。角砂糖はゆっくりと崩れるように溶け始め、しばらくすると溶けて見えなくなってしまいます。
次に、もう一つの水の入ったコップ(実は、事前に作っておいた砂糖水)に同じように角砂糖を入れます。すると、
「あれ、溶けないよ」
「どうして?」
「コップに入っていたのは水じゃないのかな」
などと、子どもたちは不思議がります。角砂糖はいつまでたっても溶けません。
溶けない秘密を明かす
「角砂糖が溶けなかったコップの中の水は、もともと砂糖水です。これまで学習したように、物が水に溶ける量には限度があります。この砂糖水は、砂糖がこれ以上溶けないという所まで溶かして、溶け残りは別にし、透明な部分だけを新しいコップに入れたものです。だからこの砂糖水にもう砂糖が溶けることはできません」
と、種明かしを兼ねて説明します。
物が一定量の水に溶ける量の限度を「溶解度」と言います。食塩や砂糖は溶解度が大きく、水に大変よく溶けます。このため、砂糖がこれ以上溶けないという状態(飽和)の砂糖水を作る時には、注意が必要です。もう溶けなくなったと思っても、しばらく置いておくと溶けてしまうことがあるからです。従って、ゆっくりと溶かすようにしましょう。
もう一つ注意すべき点は、砂糖が水に溶けると体積が増えるので、大きめの容器でかき混ぜ、こぼさないようにすることです。また、溶解度は温度によっても違ってきます。溶けない角砂糖も、液を温めてみると溶けます。
マジックのためにたくさんの砂糖を水に溶かしたので、砂糖の結晶作りにも挑戦してみましょう。食塩は温度が下がると、簡単に結晶が出てきますが、砂糖の場合はなかなか出てきません。数日間静かに置いておくと少しずつ結晶が出てきます。その後は表面から水が蒸発するにつれて結晶は成長し続けます。
砂糖と料理の関係は?
授業の展開例
- 煮物をする時は、「さしすせそ」の順番で入れるのはなぜでしょうか、調べてみましょう。これも砂糖の性質に関係しています。
- 砂糖は調理温度により、シロップからカラメルまで状態が色々に変化します。砂糖を実際に加熱してその変化を調べてみましょう。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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