2012.09.18
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日本食も外国産 【食と国際社会】[小5・社会科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第七十三回目の単元は「日本食も外国産」です。

私たちの生活を支えている食料の多くは外国からの輸入に頼っています。自分たちが食べている食材の多くが外国に深い関わりがあることを理解することは、食生活について振り返るきっかけとなります。ここでは、日本食の代表である「天ぷらそば」と「握り鮨」を取り上げます。食料生産について考える社会科の導入として、身近な日本食の原料や食材の多くが輸入である現状に気づかせる、1時間の授業について紹介します(※本実践は、「外国から来たもの探し」の記事を基に教師が工夫改善した事例です。このように再現性において優れた事例も今後提案していきます)

「天ぷらそば」「握り鮨」の材料について考える

国産、外国産に色分けしたグラフ類

国産、外国産に色分けしたグラフ類

「天ぷらそば」の材料を話し合います。そば、エビ、小麦、大豆であることを確認して、輸入の割合を予想します。国産、外国産に色分けした帯グラフを示します。そばやエビ、小麦や大豆について外国産が多いことを確認します。次に、
「握り鮨のネタはどうでしょう。国産と外国産どちらが多いでしょう?」
 と聞きます。子どもたちからは
「マグロは外国産が多いです。それは、スーパーで売っているのを見た時に外国の名前があったからです」
「ブリは国産が多いと思います。それは、外国人はブリを食べないと聞いたことがあるし、日本はブリを養殖しているからです」
「サーモンは外国産の方が多いと思います」
 といった意見が出てきます。そこで、国産、外国産に色分けした円グラフを示し、握り鮨も材料の多くは外国から輸入していることを知らせます。

次に、下記の原料や食料がどこの国から運ばれてきているかを話し合います。世界地図を使って、輸入相手国の位置を確認します。
・そば……中国、カナダ、アメリカ
・エビ……ベトナム、インドネシア、 タイ、インドなど
・小麦……アメリカ、カナダ、オーストラリア
・大豆……アメリカ、ブラジル、カナダ

身の回りの輸入食材を調べ、生産地を探す

スーパーのチラシから外国産の食材を探す

スーパーのチラシから外国産の食材を探す

次に、スーパーのチラシに載っている外国産の食材を探します。チラシに「○○産」と書いてあればペンで囲んでいきます。
世界地図に生産地の場所を示す付箋を貼る

世界地図に生産地の場所を示す付箋を貼る

そして、地図帳や地球儀を見ながら食材の生産地を探し、世界地図上に付箋を貼ります。その際、魚貝類…水色、肉類…ピンク色、野菜類…黄緑色、果物類…黄色というように、食品の種類ごとに付箋の色を決め、そこに食材名を記入します。

子どもたちは、
「(外国産の食材は)いっぱいある!」
「バナナは日本にないよな。外国やな」
「私の見ているチラシはアメリカ産が多い」
 などと言いながら、チラシを調べています。また、
「ニュージーランドってどこにあったっけ?」
「モーリタニアって国なの? 聞いたことないな」
「ベトナムってどこ?」
 と、賑やかに生産地探しの作業を行っています。

外国からたくさんの食料が来ている!

一連の作業を終えて、子どもたちは次のような感想を述べました。
「アメリカからたくさんの食材を輸入していると思います」
「バナナは赤道付近から輸入されています」
「チリやノルウェーなど、日本から遠い国からも輸入しています」
「これだけたくさんの食べ物が外国産だったとは知りませんでした」

子どもたちが輸入食材の多さに気づいたことを受けて、
「では、日本の食料はいったいどれくらい外国に頼っているのでしょう。次の時間に学習しましょう」
 と話し、1時間の授業を終えました。この後、外国に食料を頼っていることから起こる問題について話し合い、食料自給率を上げるためにできることについて話し合いました。

授業の展開例
  • 日本は食料の6割を輸入に頼っています。私たち一人一人も、できることは何かを考えていかなくてはなりません。日常の中での食品のロスを少なくすることは大切です。廃棄や食べ残しを少しでも減らすことを心がけましょう。
  • 「フードマイレージ」とは、イギリスで提唱された「フードマイルズ」という考え方を参考にして日本の農林水産省農林水産政策研究所が考え出した、輸入食料の重量と輸送距離を掛け合わせて算出する指標のことです。日本の「フードマイレージ」を調べてみましょう。

大石 千晴(おおいし ちはる)

兵庫県南あわじ市榎列小学校 教諭

前任校から食育に関わり研究を進めてきた。南あわじ市はセンター方式の給食のため、各校に栄養教諭は配置されていない。そのため、学校とセンターで連携し、学校給食を中心とした食教の授業を進めてきた。現任校では、学校教育全域でいかに食育を進めていていくかを研究している。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文:大石千晴/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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