2012.05.15
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「切り干し大根」で割合! 【食と数学】[小5・算数]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第六十九回目の単元は「『切り干し大根』で割合!」です。

私たちの先人は生活をより豊かにするため、気候や風土に適応した様々な保存食を作り出してきました。中でも乾物は天日で乾燥させ、食品中の水分量を飛ばすことで、食品の腐敗を抑えるという素朴ながら知恵の詰まった保存食品です。切り干し大根はその乾物の筆頭で、全国各地で様々な形状のものが作られています。

生活科で収穫した大根を、切り干し大根にしている2年生の学習を見ながら、ちょうど算数で割合の学習をしていた5年生。「切り干し大根の重さは生のダイコンの何%になるのだろうか」、切り干し大根を割合の学習の教材として取り上げてみました。

重さを予想してみる

「切り干し大根を作ります。切り干し大根は生のダイコンの何%の重さになるでしょう?」
 と、問いかけます。生のダイコンの重さを量ると1,020g。ほぼ1kgに近い数字だったので重さの予想がしやすかったのですが、初めは20%、30%と予想していた子どもたちも、
「20%なら200g」
「30%なら300g」
 と計算をし始めた途端、
「やっぱり、そんなに減るわけがない! 50%にする」
「私は48%」
 と予想の変更をしていきました。12人の子どもたちの最終予想の内訳は75%が1人、60%が1人、48%が2人、50%が3人、45%が2人、40%が3人でした。

切り干し大根を作る

切り干し大根は地方によってその作り方にも特徴があります。ダイコンを縦に四つ割りにして作る「割り干し」、小口切りにして干す「花丸切り干し」などの形状の違い。生のダイコンに含まれる酵素による変色を防ぐために加熱する「ゆで干し」、寒中の屋外で凍らせて乾燥させる「凍み干し」など干し方の違いもあります。今回は簡単な方法で切り干し大根を作りました。

【作り方】

  1. ダイコンの首の部分を切り、ピーラーで全体の皮をむく。
  2. 作業班の数にダイコンを切る(今回は4班なので、四つに輪切りにし、それぞれを半月切りにしました)。
  3. 切ったダイコンを重ならないようにザルの上に並べて干す(この時、首の部分や皮も一緒に干します)。
  4. 全体が乾きやすいよう、時々天地返しをする。
天気がよければ三日くらいで干し上がります。

出来上がった切り干し大根の重さは?

干し上がり、とても小さくなったダイコンをバットにまとめ重さを量る

干し上がり、とても小さくなったダイコンをバットにまとめ重さを量る

乾燥していくにつれ、どんどん小さくなっていくダイコンの様子を見ながら、次第に予想した割合に不安を感じてきた子どもたち。出来上がった切り干し大根を量りに乗せ、電卓を片手に息を飲みました。

全重量86g。切り干し大根は生のダイコンの何%かというと、「比べられる量÷もとにする量=割合」だから、この場合の「もとにする量」は初めのダイコンの1,020g、「比べられる量」は切り干し大根の86g。つまり、
「86÷1,020=0.084……」
「約8%!!」
 子どもたちの予想をはるかに超えて、小さくカラカラに干し上がった切り干し大根。8%という数字に子どもたちは完敗といった様子でした。

子どもたちの感想を紹介します。
「最初はとても大きかったし、ツルツルで水分がとてもあったのに、小さくなって、シワシワでカラカラになりました。ダイコンは92%が水分だったのですごいです。切り干し大根は水分が少なくなったから腐らないので便利だと思いました」。

「予想より水分の割合が多くてびっくりしました。92%も水分だったので、ダイコンは全体のほとんどが水分ということがわかりました。他にもスルメや干し柿も干して長持ちするのですごいなぁと思いました」。

「1,020gから86gで、934gも減って、それが全部水分なので、ダイコンは約90%が水分で、8~10%を食べているのがわかりました。考えてみると、私たちの生活には干しているものが多かったです。ニンジンやイモではどれくらいの割合になるかやってみたいです」。

授業の展開例
  • 家庭科のゆで野菜の調理で、用意した野菜の総重量と調理した後の皮などの廃棄量を量り、廃棄率を調べてみましょう。「環境に優しい調理」の学習になり、おもしろいです。
  • キャベツやトマト、ニンジンなど他の野菜で干し野菜を作り、もとの重さの何%になるか調べてみるのも楽しいですね。

汲田 喜代子(くみた きよこ)

高知県いの町立川内(かわうち)小学校 教諭

「カイコをそだてよう」では、桑茶や桑ケーキを作り、育てたカイコが作った繭から糸を採り織物に。「ピザのたねをまこう」では、小麦、タマネギ、ニンニク、トマトを育てピザやスパゲティー作りに挑戦。「ふくじんづけパーティーをひらこう」ではナタ豆を育て、塩漬けにした他の野菜と一緒に福神漬けを作るなど、「どきどき」「わくわく」がいっぱいの食農教育に取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文:汲田喜代子/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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