2012.02.14
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

かむための食事を考えよう 【食と健康】[小4・特別活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第六十六回目の単元は、「かむための食事を考えよう」。かむことの大切さを知る授業です。

食生活の変化によって、あまりかまなくてもよい食事が増えています。ハンバーグやカレーなど軟らかく食べやすいものが増え、子どもたちは軟らかいものを好んで食べるようになりました。おやつも軟らかいものが多くなり、「かまない、かめない」子どもが増え、健康上の課題も出てきています。かむことの大切さを知り、かむ回数の多い食べ物を選ぶことについて考える4年生の1時間の授業です。

ゼリーとせんべいを食べ比べる

子どもたちに好きなおやつを聞いてみます。チョコレート、プリン、ドーナッツ、スナック、グミ等、どんどん意見が出てきます。そこで教卓の上に、ゼリーとせんべいを出します。
「どっちを食べたい?」
 と聞くとゼリーの方が優勢です。
「両方食べてもらいますから、かんだ回数を数えてね」
 と指示します。

子どもたちがニコニコしながらゼリーとせんべいを食べ終えた後、ゼリーは何回くらいかんだか聞いてみますと、0から20回程度でした。
「すぐなくなる」
「軟らかくなった」
「かんだ感じがない」
「口につく」
 等の意見が出てきます。

次にせんべいについても聞きます。15から98回となりました。
「のどを通りにくい」
「かみにくい」
「かんでいると味がよくなった」
「唾液がいっぱい出てきた」
「あごが痛くなってきた」
 等の意見が出ました。

よくかむと、よいことは?

「みんなも知っているように、食べる時によくかむと体にいいことがありますね。これまで教わったことを話してください」
  と聞くと、
「消化吸収がよくなる」
「歯並びがよくなる」
 等の意見が子どもたちから出てきました。そこで教師からも、脳の働きが良くなること、歯の病気予防になること等も説明しました。虫歯予防については、ぴんとこない様子でしたので、よくかむ歯とかまない歯の写真を比較して、歯並び、歯茎の色に注目させました。

どんな食べ物がかむ回数の多い物?

「かむというのは食べ物をかみ砕くだけでなく、様々な効果があります。かむ回数の少ない食べ物だけでなく、かむ回数の多い食べ物も食べていきたいね。どんな食べ物があるかな」
 と聞きます。スルメ、ピーナッツ、煎り大豆、コンブ、等の意見に交じって
「給食によく出てくる」
 と給食の献立に着目する子もいます。が、出てくるのはいずれも堅い食べ物ばかり。食物繊維の多い物には誰も気がつきません。
「かむ回数の多い食べ物は、堅い物だけかな」
 と聞くと、
「かみごたえのある物……?」
「そうだ、たこ焼きのタコ!」
「やわらかいけど、かまないとのどを通らない」
 と子どもたち。
「そうそう、それをかみごたえのある食べ物っていうんだよ」
 と教えると、
「じゃあ、ゴボウ」
 と、やっと食物繊維の多い食べ物が出てきましたので、
「いいところに気がついたね」
 と続けて、タケノコ、キノコ、海草等の食物繊維が豊富な食べ物は、かみ切らないと飲み込めないので、かむ回数の増える食材であることを説明しました。また、干しシイタケや油揚げ、イカ等の弾力性に富む食べ物もかみ切りにくいため、かむ回数が増えることを話しました。

最後に、
「食材だけでなく、食べ方によってもかむ回数は増えます。何か知っているかな」
 と聞くと、子どもたちからは、
「ゆっくり食べる方がいい」
「昔のおやつはよくかんで食べていたので、おばあちゃんに作ってもらうおやつがよい」
 等の意見が出ました。

そのほか、濃い味つけよりも薄味の方が、味がするまでかみ続けるので、かむ回数が増えること、急いで流し込むように、あるいは水を飲みながら食べるのではなく、ゆっくり時間をかけて楽しみながら食事をするのも、かむ回数を増やすコツだと話して終わりました。

授業の展開例
  • 昔のおやつは、干し芋やスルメ、煮干しなど、まさに「かめばかむほど味が出る」物ばかりでした。昔のおやつはどんなものがあったか調べてみましょう。
  • 「こめかみ」という言葉は、かむことに関係があります。名前の由来を調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop