2012.01.17
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

泡のひみつ 【食と科学】[小4-6・特別活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第六十五回目の単元は、「泡のひみつ」。炭酸飲料から二酸化炭素を取り出す実験です。

二酸化炭素は調理によく利用されています。パンは、酵母菌の発酵によって生じる二酸化炭素を利用してふかふかにしています。ホットケーキが膨らむのは、材料の中に含まれているベーキングパウダーが加熱されて二酸化酸素が発生し、ふっくらとさせるからです。ここでは、水に溶けた二酸化炭素を取り出す実験をやってみましょう。科学クラブで1時間ほどの活動です。

実験方法――コーラから二酸化炭素を取り出す

【用意するもの】

■コーラ、またはその他の炭酸飲料 ■ラムネ菓子 ■水槽またはバット ■コップ ■割りばし ■砂糖 ■食塩
コーラに塩を入れると…

コーラに塩を入れると…

<実験の手順>
(1)コップにコーラ(炭酸飲料)を注ぎます。
(2)コーラ(炭酸飲料)に砂糖、食塩を入れます。
(3)コーラ(炭酸飲料)に割りばしを差します。
(4)コーラ(炭酸飲料)の中にラムネ菓子を入れます。

<実験のコツ>
■砂糖は、グラニュー糖の方がよく泡が出ます。
■ペットボトルに入ったコーラにラムネ菓子を入れる時は、数個にしておきましょう。たくさん入れると、泡が飛び散って片づけが大変になります。

実験結果――何を入れても泡が出る

ラムネ菓子を入れるとコーラが噴火した!

ラムネ菓子を入れるとコーラが噴火した!

さて、実験結果です。
(2)の砂糖を入れると泡が出てきます。食塩も同様で泡が出ます。(3)の割りばしを差しても小さな泡ができます。(4)のラムネ菓子を入れると、泡が激しく噴き出します。これは、ラムネ菓子や砂糖に刺激されてコーラの中の二酸化炭素が出てくるからなのです。過酸化水素水に二酸化マンガンを加えると、酸素が出てくる反応と同じような「触媒」としての働きをしているのです。

炭酸ガスを含む飲料水には、コーラやラムネなど味のついている炭酸飲料、味のついていない炭酸水(=ソーダ水)、天然の炭酸ガスを含むミネラルウォーター、ビールやシャンパンなどのアルコール類などがあります。

気体は、温度が高くなると、水に溶ける量が減ります。そこで、炭酸飲料は、水の温度を冷たくして、圧力をかけることによって炭酸ガス(=二酸化炭素)を溶け込ませています。では、二酸化炭素はどの程度水に溶けるのでしょうか。20℃の時、二酸化炭素の圧力が1気圧であれば、水1リットルに二酸化炭素は0.87リットル溶けるそうです。

二酸化炭素を取り出せる理由

二酸化炭素を取り出す方法は製造法の逆をすればいいことになります。炭酸ガスは圧力をかけるとより液体に溶ける性質があり、炭酸飲料のペットボトルには高い圧力がかけられ炭酸ガスがたくさん溶ける状態になっています。このため、蓋を開けるとかかっていた圧力が一度に開放され、溶けきれなかった泡が出てきます。また容器を振っても同様です。

さらに、夏の暑い日に車のダッシュボードなどに炭酸飲料を放置すると破裂することがあります。温度が上がると溶けきれなくなった二酸化炭素が出てくるからです。

そこで事故を防ぐために、容器にはさまざまな工夫が施されています。ペットボトルは内側からの圧力に強い丸い形状のボトルになっていますし、口部にある切込みによってガスがゆっくり抜け破裂事故を防ぎます。アルミボトル缶のキャップの上部にも切り込みがたくさんありますが、これも同じ理由です。

授業の展開例
  • 二酸化炭素が水に溶けることは、6年生の理科「水溶液の性質」で学習します。ペットボトルに半分程度水を入れ、スプレー缶から二酸化炭素を吹き込みます。よく振ると、ペットボトルがへこみます。二酸化炭素が水に溶けた炭酸水は酸性であることも確かめてみましょう(炭酸水の作り方を確かめる実験ですので、飲まないようにしましょう)。
  • 砂糖と少量の水を火にかけドロドロに溶かし、そこに重曹を加えると分解して二酸化炭素が発生します。その二酸化炭素が溶液の中に空洞を作ると、昔懐かしい「カルメ焼き」になります。作り方を調べて挑戦してみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop