おもちはなぜ伸びる 【食と科学】[小5・理科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第五十七回目の単元は「おもちはなぜ伸びる」。でんぷんの違いや、もち米とうるち米の違いについて興味を持たせる学習です。
白玉粉と上新粉のでんぷんの違いを実験
○白玉粉 ○上新粉 ○ヨウ素系のうがい薬 ○小鉢
もちはもち米から作られます。そこで、もち米を原料とする白玉粉を使って実験します。一方、おにぎりはうるち米から作られていますので、うるち米を原料とする上新粉を使います。
≪実験方法≫
(1)白玉粉と上新粉を小さじ1杯、別々の小鉢にそれぞれ入れて、粉が浸かるくらいの水を加え、よくかき混ぜる。
(2)お湯を加えて溶かす。
(3)よく冷ましてからうがい薬を入れて液の色の変化を見る。
実験の結果、白玉粉は赤紫色、上新粉は濃い紫色になりました。
もちが伸びるのは、でんぷんの形が違うから
でんぷんには、アミロースとアミロペクチンという2種類のでんぷんがあります。もち米はアミロ ペクチン100パーセント、うるち米はアミロペクチンとアミロースを含んでいます。アミロースは分子が直線状につながった形をしていますが、アミロペクチ ンは分子が枝分かれしながら網状につながっています。
アミロペクチンとアミロースの違い、つまり白玉粉と上新粉のでんぷん の形の違いが、でんぷん分子に入りこむヨウ素の色の量を決め、色の違いになって表れます。直線状のアミロースに比べ、網状のアミロペクチンは切れにくく、 比較的自由に伸び縮みします。これが、アミロペクチン100パーセントのもち米でできたもちが伸びたり膨らんだりする理由です。
上新粉と白玉粉はどちらも米の粉ですが、前者はうるち米、後者はもち米からできています。含まれているでんぷんが異なっているために、それが調理の特性となって表れているのです。
せんべいとおかきは原料米が違う
授業の展開例
- 身の回りにあるでんぷんを探してみましょう。例えば粉薬を飲みやすくするために包む「オブラート」もでんぷんが原料です。
- 日本では伝統的な食品として、米を粉にして食べてきた歴史があります。全国各地にも上新粉、白玉粉、求肥粉、道明寺粉などさまざまな種類の米粉があります。それぞれの粉の用途を調べてみましょう。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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