2011.01.18
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わけあって入っています 【食と伝統】[小4・学活]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第五十三回目の単元は「わけあって入っています」。おせち料理には家族の健康や幸せを願う気持ちが込められていることを学びます。

おせちは日本人のお正月の大切な伝統料理です。それぞれの料理には無病息災と子孫繁栄の願いが込められています。白黒のおせち料理の絵に色を塗りながら、料理に関心を持ち、いわれに興味を持つ1時間の学習です。

お正月の料理といえば…?

「お正月に食べるものといえば何かな?」
そう聞くと、子どもたちからは
「お雑煮」
「お餅」
「おせち」
などの発言が出ます。
「では、おせちには何が入っているかな?」
と聞きます。すると、
「黒豆」
「数の子」
「海老」
「巻いている卵」
などの意見が出てきます。

おせち料理の絵に色を塗る

白黒のおせち料理の絵が書かれた紙を一人に1枚ずつ配ります。けれど、すぐには色を塗りません。
「どんな色で塗ればいいか、皆で相談してみよう」
と促すと、子どもたちは、
「これは、きっと数の子だよ。だから黄色で塗るといいよ」
「これは海老だよね」
「これは、何?」
「見たことあるんだけど」
おせちをめぐっていろいろな話題が出てきます。
次に、カラーのおせち料理の絵を配ります。
「お手本を見ながら色を塗ってみよう」
子どもたちはここで初めて色鉛筆を持って塗ります。
「これは豆だったんだ」
「黒豆って言っていたよ」
「じゃあ、黒く塗って」
「これは何?」
「食べたことあるけどわかんない」
こうした疑問もどんどん出てきます。

おせち料理のいわれを考える

「おせちに入っている料理には、一つ一つにお正月のお祝いにちなんだ理由があります。例えば結婚式には、お魚の鯛が出されますね。これは、鯛が結婚式の 『めでたい』の“タイ”だからです。受験生が試験の前日にトンカツを食べることがあります。“カツ”が『勝つ』につながるからなのですね。こんなふうに料 理に込められている意味や由来のことを『いわれ』と言います。では、これからおせち料理の名前といわれを紹介します。どのいわれが、どの料理につながって いるか、考えてみよう」
と説明します。黒板に料理の短冊と、いわれの短冊を貼ります。グループごとに相談して、代表者が出てきて順番に組み合わせていきます。下にその一部を紹介します。
■れんこん……将来を見通す ■黒豆……まめに働く、まめに暮らす
■昆布巻き……喜ぶ ■数の子……子孫の繁栄
■伊達巻き……しっかり学ぶ ※形を巻物(=書物)になぞらえて。他にも諸説あり。
■田作り……豊かな実り ■海老……長生きを願う
子どもたちの感想です。
「食べ物に願いが入っているのがすごいなあと思いました。意味があるのがおもしろいし、ああそうかあーって思いました。なるほどと思うことがたくさんありました」。
授業の展開例
  • おせちに入っている料理のいわれについて、さらに調べてみましょう。
  • 「端午の節句の柏餅」「秋分の日のおはぎ」など、年中行事にまつわる「行事食」のいわれについても調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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