2010.09.14
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畑を探せ! 【食と農業】[小4・社会科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第五十回目の単元は「畑を探せ!」。地元の特産品を栽培する畑を探して、地域の農業への理解を深めます。

子どもたちは探検や宝探しが大好きです。「○○を探そう」「発見! ○○」のような課題には、とても積極的に動きます。そこで、社会科4年生の「地図に親 しむ」の内容とつなげて、学校からの方角や距離を確認させながら、野菜畑の位置を地図上にプロットしていく授業を実践しました。探検や宝探しのような活動 を通して、地域の人々と話したり、農業について色々な発見をしたりすることができます。

野菜の畑を見つけよう

ブロッコリー、キャベツなど、地元の野菜の実物を教卓の上に並べ、子どもたちに聞きます。
「この野菜は地元の野菜です。学校の周りの畑でも栽培されています。見たことありますか?」
「あるよ。うちのおじいちゃんが作っているよ」
「学校からの帰り道、畑で見たよ」
と発言する子もいますが、ほとんどの子は知らないようです。そこで、
「この野菜を作っている畑を探してみましょう。どこに畑があったか、目印を確認します。どんなものが目印になりますか?」
と聞きます。すると、
「学校です」
「図書館も」
「市役所も目印になるよ」
と子どもたち。
「そうですね。見つけた畑がどこにあったか、目印を使って説明してくださいね」
このように助言します。

ブロッコリーやホウレンソウなど、地元の野菜が植えられている畑を見つけるだけなので、子どもたちは簡単に取り組むことができます。また、登下校や放課後、休日などを利用することもできます。

畑の位置を地図で確認

地図にシールを貼って、畑の位置を示す

数日後の社会科の時間に、どこに畑があったかを発表することにしました。
「公民館の隣にブロッコリーの畑がありました」
「公民館ってどこにあるの?」
「市役所前の道をずっと図書館の方へ行って……」
「○○君の家の近くなの?」
「ええっと……」
発表の度にこんなやり取りが続きます。

 「皆、野菜の畑をたくさん見つけてきましたね。でも、見つけた本人はどこにあったかわかっても、教えてもらっている人は、よくわかりませんね。どうしたらいいかな?」
すると子どもたちから
「地図を書いたらいいよ」
という意見が出てきました。
「先生も同じことを思っていたので、地図を用意しました」
そう言って、1/10000の地図を見せます。
「この地図は小学校や皆の家の周りの様子がよくわかります。たとえば、色を赤く塗ってあるここが小学校です。青が中学校、そして黒が市役所です。これから畑を見つけたら、この地図の畑の場所に当たるところにシールを貼ろうね」。

「先生、ブロッコリーとキャベツは違う色にしたらいいと思います」
という子どもの発言を受けて、野菜の種類ごとに色違いの学習シールを貼ることにしました。これで、活動が一気に盛り上がりました。なお休み時間には、一人一人の家の位置を地図上で確認しました。

JAの方に聞く

JAの職員を招いて、話を聞く

1週間ほどすると、地図にたくさんのシールが貼られ、野菜畑の分布や土地利用の特徴が見えてきました。このときをとらえて、話し合いの機会を持ちま す。授業では、JAの方を招いて「もっと畑を見つけるにどうしたらいいか、ヒントをもらおう」というテーマで話し合いました。JAの方からは、
「中学校から北にはキャベツ畑はありませんし、農協から西にもキャベツ畑はありません」
「この地域では、ハクサイをはじめ、キャベツ畑、そしてブロッコリーの畑も見つかります」
などのアドバイスをいただきました。また、市の南には広い畑が広がっていることや野菜の栽培の工夫についても話を聞きました。

 こうして探すヒントを得た子どもたちは、登下校や放課後、休日などを利用して地域の方やJAの職員さんに聞いて、野菜の 畑を見つける活動を続けました。その後、デジカメで畑の写真を撮影したり、だれがどの野菜を育てているかを調べたりする活動へ発展。さらに、国語の時間に 野菜を育てて嬉しいことや大変なこと、おいしい野菜を育てる工夫などを新聞にまとめました。

授業の展開例
  • 子どもたちが見つけた地元の栽培農家をゲストティチャーとして招いて実際に話を聞いたり、野菜のよさや栄養について栄養教諭や学校栄養職員から説明をしてもらったりすると、さらに学習が深まります。
  • 地域で栽培されている野菜が収穫後、どこに運ばれるか、流通について調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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