2010.06.15
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冷蔵庫の法則 【食と環境】[小6・家庭科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第四十七回目の単元は「冷蔵庫の法則」。冷蔵庫で保存している野菜を見直して、冷蔵庫を上手に使うことを実践しましょう。

冷蔵庫の中には、本来は冷蔵しなくてよいものがたくさんしまわれています。常温保存できる野菜を通して、冷蔵庫の使い方を見直すきっかけとなるよう、家庭 科で1時間ほど取り上げてみました。本実践は、財団法人省エネルギーセンター発行のパンフレット『かしこくいただきます。~食の省エネBOOK』の「常温 保存できるものを冷蔵庫に入れている食品」のデータをもとに構成しました。
【用意するもの】
・グループごとに付箋紙(幅2.5cm×7.5cm)9枚
・A4用紙1枚(何も書いていない)
・油性フェルトペン1本

冷蔵庫に入っている食品は?

「みんなの家の冷蔵庫には何が入っていますか?」
と聞きます。
「ペットボトルの水が入っています」
「牛乳も」
「野菜です」
「アイスクリーム」
などの答えが出ます。
「アイスクリームは冷凍庫に入っているよね。ここでは冷凍庫以外の冷蔵庫に入っている食べ物について考えていきます」
このように説明し、冷蔵室に着目させます。
「今から発表する食べ物を付箋紙に書いてください」
と言って、黒板に「トマト、キュウリ、ピーマン、キャベツ、ソース、ニンジン、味噌、バナナ、缶詰」と書きます。子どもたちはグループに分かれ、代表者一人がこれら9つの食品名を付箋紙に油性フェルトペンで書きます。

冷蔵庫に入れなくてよい食品は?

 「9つの食べ物を冷蔵庫に入れるとよいものと、入れなくてよいものに分けてみましょう」
そう指示します。すると、
「缶詰は冷蔵庫に入れないよね」
「台所の棚に置いてあるよ」
「そうそう」
さっそく話し合いが始まります。

「ただし、一度開けたものや切ってある野菜ではありませんよ。そう、ソースは開けてないと考えてください」
と、補足説明します。
「そうか、だったら味噌も入れなくていいんじゃないの」
「えー、でもうちは冷蔵庫に入れているよ」
等と、活発な話し合いが続きます。

ダイヤモンドランキングの例

「今回は、ランキングを作ってもらいます。しかもダイヤモンドランキングといって……」
そう説明しながら黒板にランキングの図を書きます(写真参照)。
「このように、入れるとよいものは上のほうに、入れなくてよいものは下のほうに付箋紙を貼ります」
付箋紙ですので、話し合いを通して意見が変わった場合には簡単に移動できます。

子どもたちは
「トマトは腐りやすいから」
「やわらかい食べ物は腐りやすいと思う」
「調味料は賞味期限が長いから腐りにくいはず」
「確かバナナは入れないって、テレビで聞いたことがあるよ」
「野菜は冷蔵庫に入れないと腐っちゃうんじゃないかな」
「味噌やソースは腐りにくいし」
「第一味噌は腐っているし」
「えっ、味噌って腐っているの?」
「そうだよ」

グループで話し合う

「でも味噌はチョコレートみたいに溶けてしまいそうだ」
「うちは台所の流しの下に置いてあるよ」
「スーパーだってソースは冷たいところには置いていないし」
「じゃあ、バナナもそうかな? お店でも普通の所に置いているよ」
こんな楽しい話し合いが続きました。

 全部の班がA4の紙に付箋紙を貼り終えたら、正解を発表します。
「正解は、どれも冷蔵庫に入れなくてよいものばかりです」
と話すと、
「えーっ!!」
と驚きの声。
「ここにあげたものは常温で保存できる食品です。ただし、みんなの言うようにトマトやキュウリなどは冷やしたほうがおいしく食べられますね」

 次に、
「ほかにも冷蔵庫に入れないほうがよいものがあります。何でしょう?」
と質問すると、子どもたちからは、
「味噌がそうなら、醤油も」
「ラーメンも」
「砂糖」
「塩」
「そうか、調味料だ!」
このような意見が出ました。それを受けて、ジャガイモやサツマイモなどの根菜類は入れなくてよいことも説明しました。
「ショウガも低温障害を起こしていることがよくあります。皮の一部が黒ずんでいるものは、低温障害を起こしかけているものです。バナナが黒ずんでしまうの も、冷温障害を起こすからです。冷蔵庫には入れないようにしましょう。ほかに、ゴボウ、タマネギ、カボチャ、キャベツ、ニンニクなどは、包丁を入れていな い状態なら冷蔵庫に入れずに、新聞紙に包むなどして冷暗所に置けば、十分に保存できます」
と説明しました。

野菜の保存に適した温度とは?

最後に
「冷蔵庫をスッキリさせると、どんなよいことがあると思う?」
と聞きます。
「冷蔵庫の中からものが取り出しやすい」
「冷えやすいと聞いたことがある」
という意見が出ました。
「常温保存できるものを入れないようにすると、庫内のスペースが広くなり、ものを詰め込みすぎるのを防ぐだけでなく、省エネにもなります。なぜなら、冷蔵 庫に食品を詰め込みすぎると冷気の循環が悪くなる上、扉を開けても中のものを探すのにも時間がかかり、電力消費量が増えるのです。冷蔵庫は、適当に隙間が 空く程度に食べ物を入れておきましょう」
と話して授業を終えました。

本授業の板書

『かしこくいただきます。~食の省エネBOOK』によると、「本来なら常温で保存できるのに冷蔵庫に入れている食品ランキング(カットした野菜は含 まず)」の1位はトマト(85%)。ほかにも7割以上の人が、キュウリ、ピーマン、キャベツを、5割以上の人が、ナス、ハクサイ、ショウガ、長ネギ、開栓 前のマヨネーズ、ニンジン、味噌を入れているそうです。

 子どもたちの感想を紹介します。
「バナナやショウガなどは冷蔵庫に入れると低温障害になることを初めて知った。根菜は冷蔵庫に入れなくてよいことを知って驚いた」。

「ダイヤモンドランキングをしたことが楽しかったです。本当を言うと『環境』という文字を見ただけで面倒くさいと思ったけど、やってみると楽しく勉強ができて時間が経つのがとても早く感じました」。

「冷蔵庫に入れなくてよいものが僕の家には普通に入れてあることにびっくりました。今日習ったことを母にも教えて、冷蔵庫をスッキリしたいです」。

「冷蔵庫にも省エネ、エコが関わっていることに驚いた。これからは気をつけようと思った」。

授業の展開例
  • ダイコン、ゴボウ、ネギ、ハクサイなどは湿った新聞にくるんで立てかけておくと長持ちします。ほかにもいろいろな野菜の保存法を調べて実践してみましょう。
  • 冷蔵庫のドアの開け閉めを頻繁に行なうと消費電力がその分多くなってしまいます。冷蔵庫の電気代を節約する方法を調べて実践してみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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