2009.12.15
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野菜を茹でる 【食と栄養】[小4・学活]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第四十一回目の単元は「野菜を茹でる」。野菜を茹でる実験を通して、子どもたちに野菜を進んで食べてもらいましょう。

野菜は火を通すことで、かさを減らすことができます。したがって、生のままより、茹でたり炒めたりすると、野菜をたっぷり食べられます。茹でるとかさが減ることは、実験を通して実感することができます。4年生の学活で1時間ほど取り上げました。

野菜の働きとは?

「野菜には、どんな働きがあるかな」
と子どもたちに聞きます。これまで栄養教諭の先生から話を聞いていたので、子どもたちは、
「かぜをひかない」
「皮膚を強くする」
「体の調子を整える働きがある」
などの意見をどんどん発表します。
「野菜には肉や魚などほかの食品からはとることのできない、ビタミンやミネラル、食物繊維といった栄養素が含まれているので、毎日元気に過ごすためには欠かせませんね」
とまとめます。

一日に必要な野菜の量は?

茹でる前(左)、茹でた後(右)

一日に必要な野菜の摂取量を知らせます。
「一日300gです。どれくらいかというと」
といいながら、お皿一杯に入れたキャベツを見せます(写真の左の量です)。
「えー、多い」
「そんなに食べられないよ」
と驚く子どもたち。

300gの野菜を食べる方法

「野菜をたくさん食べるにはどうしたらいいかな」
と聞きます。子どもたちから、
「一日3食、平均に分けて食べる」
という意見が出ました。
「そうですね。100gずつ3回きちんと食べると300gですね」
というと、
「そうか、一日食べないと次の日は600gも食べないといけなくなる!」
と気づく子どもたち。

「いいことに気づいたね。では、野菜の食べ方にはどんなのがある?」
と聞くと、
「炒めたり……」
「そうだ、炒めると野菜が小さくなる!」
と子どもたち。
「そうですね、火を通すとかさ、つまり量が小さくなるのです。本当かどうか試してみようか」
というわけで、実験を始めます。

300gを茹でてみると…

野菜を茹でる

あらかじめ用意しておいたコンロで先ほどのキャベツを入れて、茹でます。 しばらくしてザルにあけると、
「減っている!」
「量が減った」
「マジックみたい!」
子どもたちはたいへん驚きます。キャベツの量は大きく変化しました。

こんなに違いがある

「野菜は、茹でたり、炒めたり、味噌汁や鍋物で食べるなどの工夫をすれば、たくさん食べることができますよ。汁物を具だくさんにすると、手軽にたくさんの 野菜をとることができます。それに、一種類の野菜だと300gを食べるのは難しいけど、いろいろな種類の野菜を合わせれば食べやすいですね」
こう説明しました。

≪実験のコツ≫
キャベツは芯をとって千切りにします。氷水に浸してシャキシャキにすることで量が大きく見えます。また茹でたときに変化が大きくなります。

キャベツは氷水に浸けておく

子どもたちの感想です。
「キャベツの量を見てはじめはびっくりしたけど、茹でるとしぼんで少ないと思いました」。

「火を通すとかさが減ったので驚きました。これだと食べられるかなと思いました」。

授業の展開例
  • いつも使う皿やサラダボールなどの食器に、野菜を盛って量感を覚えれば、食事の際に十分な量の野菜をとれているかどうかがわかってきます。目分量と手で感じる重さで「野菜300g」がどれくらいかを確認してみましょう。
  • ブロッコリーは茹でてもあまりかさが変わりません。逆にホウレンソウは大きく変化します。茹でたり炒めたりしたときの変わり方の大きな野菜を見つけましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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