2009.01.20
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教えて! お雑煮 【食と文化】[小6・家庭科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第三十回目のテーマは「食と文化」。お雑煮調べを通じて地域によって特色のあるお雑煮に関心をもちましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

教えて! お雑煮【食と文化】[家庭科]

 お正月の楽しみのひとつに、お雑煮があります。お雑煮は地域によって作り方や味が違います。各地のさまざまなお雑煮を調べてみましょう。冬休みの宿題としてお雑煮調べを出し、休みが明けてから各自の調査結果を授業で報告し合うと効果的です。

お正月の食べ物は?

 「お正月に食べるものには、どんなものがあるのかな」
と子どもたちに聞きます。すると、「お餅」、「おせち料理」、「七草がゆ」、「お雑煮」という意見が出ます。
「お雑煮は新しい年を元気に幸せに過ごせるようにと願って、神様に供えた餅を野菜などと調理したものです」
と簡単にお雑煮の由来について説明します。

私の家のお雑煮は?

 「あなたの家ではどんなお雑煮を食べていますか? 自分の家の雑煮について書いてみましょう」
と説明して、ワークシートを配ります。ワークシートには次のような質問が入っています。

○「餅は、丸い餅? 四角い餅?」
○「餅は、焼いて入れるの? そのまま入れるの?」
○「味付けは醤油? 味噌? その他?」
○「どんな具が入っているの?」
○「だしは何を使うの?」

 以上の調査項目に加えて、お雑煮の絵も描くよう話します。このワークシートから、
「うちのお雑煮は丸い餅だよ」
「えー、お雑煮ってどんなものが入っていたっけな」
「かあさんに聞いてみよう」
といった子どもたちの反応。こうした会話からお雑煮について調べてみようという気持ちが高まります。

 数日後、家庭で調べてきたことを紹介し合います。
「私の家のお雑煮は丸い餅で、味噌味。いりこでだしをとってハクサイやサトイモを入れます」
「ぼくの家のお雑煮は餅を焼いて入れます。丸い餅です。味付けは味噌、だしはいりこだし、ハクサイやシイタケ、エノキを入れます」
子どもたちはみんなの発表をおもしろそうに聞いています。

全国のお雑煮はどんなもの?

「聞いた話によると、となりの香川県ではあん餅を入れるそうだよ」
「えーっ!」
「関東では四角い餅を入れるそうだよ」
「おばあちゃんが神奈川にいるから聞いてみようかな」
「そうだね、冬休みに親戚の人が帰ってくることがあると思います。また親戚のうちにいくこともあるかもしれませんね。そこのお雑煮がどんなお雑煮か調べてみましょう」
と課題を出します。

「北海道のおじさんに電話で聞いてもいいですか」
「いいですね。みんなの知り合いに電話で取材してもいいですね」
子どもたちはおもしろそうという顔をしてくれましたので、
「できれば全部の都道府県のお雑煮が集まったらおもしろいね」
と話すと、
「うちのおばさんは宮崎にいます」
「大阪に転校していった友達がいます」
「先生、北九州ってどこ?」
今度は地図の学習が始まりました。こうして全国のお雑煮調べを冬休みの宿題にしました。

全国のお雑煮調べから

 冬休みが明けて子どもたちがワークシートを持ち寄りました。
「京都では白みそで、丸い餅であんこ入りで甘いそうです」
「富山では焼いた角餅を入れます。すまし汁にかまぼこ、ハクサイ、ニンジン、ダイコンを入れるそうです」
残念ながら全国制覇というわけにはいきませんでしたが、日本各地のお雑煮が集まりました。子どもたちはお雑煮にこれだけたくさんの種類があることを驚いていました。

「お雑煮には、その地域の産物が入るので、だしの取り方や具の種類まで、地方によっていろいろな種類のお雑煮があります。餅の形についていえば、一般的には、富山から三重にかけての『分岐ライン』で分かれるようです。東は角、西は丸に分かれます。味付けは東日本はしょうゆを、西日本は味噌を使うことが多いようです。もちろん例外もありますし、今は昔ほど西と東ではっきりと区別されることは少なくなりました。それでもお雑煮からその土地の文化や暮らしがが見えてきます」
そんな話をして授業を終わりました。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

授業の展開案

-皆さんの地域のお雑煮はどんなお雑煮でしょうか。調べてみましょう。

-焼餅、あんころ餅、ずんだ餅、からみ餅などお餅の食べ方や、鏡餅開き、どんど焼きなどお餅を使った行事を調べてみましょう。

 

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