2006.07.19
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地球を測(はか)る 丸くて大きなわたしたちの住む星、地球

地球を測(はか)る

皆さんこんにちは。皆さんは自分の住む地球が丸い星で、1日で太陽のまわりを一周する惑星であることを考えたことがありますか? 普段の生活ではほとんど考えたことはありませんよね。自分を取りかこむ自然や人間の歴史の不思議に目を向け、広く深く探求しはじめたのはいつごろの人たちでしょうか? それは、紀元前のメソポタミアやエジプト、ギリシアの国々の人たちでした。今回は、太陽や地球の大きさについて考えてみましょう。

まず、太陽の動きに着目してみましょう。小さな事象の組み合わせが新しい発見へとつながります。

1太陽の運行と日の高さ

人間から天空を見るとおわんの形をしています(図1)。おわんの中心に立っている人間から見て、太陽はおわんに沿って動くように見えます。
図1 太陽の通り道

図1 太陽の通り道


 真南を太陽が通るとき、一年の季節の中で一番高い位置を通る季節はいつですか?

A.春分(3月 20日~22日ころ) B.夏至(6月21日~22日ころ)
C.秋分(9月22日~24日ころ) D.冬至(12月21日~22日ころ)


Bの夏至です。

図2 春分、夏至、秋分、冬至の日の太陽の通り道

図2 春分、夏至、秋分、冬至の日の太陽の通り道

南中高度

太陽までの距離はわからないけれど、太陽を見上げたときの地平線からの角度(ぎょうかく:仰角)は知ることができます。この角度が小さいとき、「星は低いところにある」と言い、角度が大きいとき、「高いところにある」と言います。一日の中では、太陽が真南に来たときいちばん高いところに見えるよね。真南にあるときの太陽の角度を南中高度と呼びます(図3)。太陽は東の地平線から出て、真南で最も高いところを通り、西の地平線に消えていきます。夏至には南中高度は最も高く、冬至には最も低くなります。

図3 太陽が真南を通るときの高さ(南中高度a(°) 図中の太陽を結ぶ線は真南と真北を結ぶ線(子午線)。

図3 太陽が真南を通るときの高さ(南中高度a(°) 図中の太陽を結ぶ線は真南と真北を結ぶ線(子午線)。

 

みんなも知っているかな?夏は太陽が高いところを通って、冬は低い所を通るよ(図2)。冬には家の中のずっと奥まで太陽の光が入ります。観察してみようね。

チビコ助手

2地球上の位置を示す方法

地球はボールと同じまんまるな球の形をしていることは知っているよね。それでわたしたちが今いる場所(地点)がどこにあるかを示すには、どうしたらよいかな?そのことを知るために図4を見てください。左の写真は弓張りちょうちんです。細い竹ひごの輪を横に置き、上から下に順番に並べてつくった丸い骨組みの上に和紙を貼って球の形を作っています。

一番大きい輪を基準にして、それより上の何番目か、下の何番目かで、上下の位置がわかります。横の線を使って上下の位置を示すときは、「緯度」で、縦の線を使って左右の位置を示すとき「経度」を使います。一番大きな横の線を赤道といい、これを基準にして上(北)側を北緯(0~90°)、下(南)側を南緯(0~-90°)で示します。

春分と秋分には太陽は赤道の上を通り、夏には北側をまた冬には南側を通り、その最大の緯度の位置を北回帰線、南回帰線と言います。地球の表面の(地)点は緯度と経度で示します。グリニッジ天文台を通る経線を基準にして標準子午線といい、北極から見て左(反時計)回りの位置を東経(0°~+180°)、右(時計)回りの位置を西経(0~-180°)で示します。

  • 提灯(ちょうちん)

    提灯(ちょうちん)

  • 地球儀(株)内田洋行

    地球儀(株)内田洋行

図4 球と表面 提灯に描く絵は竹ひごの輪をつかって、地点は地球儀に描かれた縦横の線(経線、緯線)をつかって知ることができる。

3地球の大きさを測る

さて、古代に地球の大きさを測ったギリシア人天文学者エラトステネスがいました。地球はとても大きく、広い海や高い山があるので、地球の大きさを実際に測ることはできません。ではどうやって測ったのでしょうか?
 
エラトステネスは、あるものを使って、地球の大きさを測りました。次のうちの何を使って地球の大きさを測ったのでしょうか?
A. 星の動き B. ナイル川の長さ
C. 太陽の位置 D. ピラミッドの高さ

Cの太陽の位置です。

エラトステネス(紀元前275-194年)は「太陽」の位置を使って地球の大きさを計算しました。

エラトステネスの計算

地球を北から南に通る線を子午線と言います。エラトステネスは、同じ子午線上にある2つの町では同じ時刻に太陽がその上を通り、しかもその角度(高度)が違うので、その違いから地球の大きさが計算できるのではないかと考えました。エラトステネスの時代には地球は丸いことが既に知られていたのです。
エラトステネスは、シエネ(今のアスワンの付近)で夏至(げし)の日に深い井戸の水面に太陽が映ることを聞きました。シエネはナイル川の上流にあります。その頃ナイル川は南から正しく北へ流れ、地中海に注ぐと考えられていました(図5)。もし、そうならばアレクサンドリアとシエネは同じ子午線上にあることになります。

図5 シエネとアレクサンドリアの位置を示すエジプトの地図

図5 シエネとアレクサンドリアの位置を示すエジプトの地図

図6 シエネの夏至の日の太陽 シエネでは夏至の日に深い井戸の底の 水面に太陽が映る。太陽は真上にある。

図6 シエネの夏至の日の太陽 シエネでは夏至の日に深い井戸の底の 水面に太陽が映る。太陽は真上にある。

正比例の関係から地球の大きさの式を求める

シエネは北回帰線という特別な緯度の上にあります。そのため夏至の日には太陽が真上を通り、ちょうど真上(真南)に来たとき深い井戸の底の水面にも映るのです(図6)。

では、地球の円周をX(m)シエネとアレクサンドリアの距離をL(m)とします。正午のシエネでの太陽の高度、つまり水平線からの角度は90°(真上)になります。

その同じ時刻にアレクサンドリアで太陽の水平線からの角度がとすると、2地点の角度の違い(差)は90a)°になります(図7)。

 アレクサンドリアでの太陽の高度=a(°)
 シエネでの太陽の高度=90(°)
 2つの地点の距離=L(m)
 地球の円周=X(m)
 地球一周の角度=360(°)

シエネまでの距離と地球の円周の比は、
 L

太陽の角度の2地点での違いと地球一周の角度の比は、

90- a):360

上の2つの比は同じ値になります(正比例の関係)。
弧の長さと角度が正比例。

 L(2つの地点の距離)X(地球の円周)=(90- a):360

(地球1周の長さ)
という式になります。
図7 夏至の日のシエネとその時刻のアレクサンドリアの太陽の高さ シエネでは太陽は水平線から90°(真上)にあり、深い井戸の底の水面に映る。 そのとき、アレクサンドリアの太陽の高度は水平線(真南)から82.8°の方向にある。

図7 夏至の日のシエネとその時刻のアレクサンドリアの太陽の高さ シエネでは太陽は水平線から90°(真上)にあり、深い井戸の底の水面に映る。 そのとき、アレクサンドリアの太陽の高度は水平線(真南)から82.8°の方向にある。

90a 9082.8 = 7.2 (°)

シエネとアレクサンドリアの太陽の位置(角度)の違いは、7.2°(=90°-82.8°)と考えました。

4実際の計算

エラトステネスは、夏至の日、シエネで太陽が真上にある時刻(正午)にアレクサンドリアで太陽の高度を測ると、a =82.8°であることがわかりました。シエネとアレクサンドリアの角度は7.2°ということです。

2地点の距離はL=5000スタジアとわかっていたので、次の計算ができました。
ここでスタジアは古代ギリシアの距離(長さ)の単位で
1 スタジアを約185 (m)としたら、5000 スタジア=925(km)です。
これから、地球の円周の大きさX(km)は次のように計算できます。

エラトステネスは、地球全周を46,250kmだと考えました。

実際の正しい地球の円周は40,000(km)なので、その誤差は

誤差は16(%)です。シエネはアレクサンドリアの真南にあるのではなく、2度ほど東にずれています。また、当時の距離、1スタジアは正確に185(m)ではなく、正しいことはわかっていません。
しかし、今から2300年も前に16%の誤差で地球の大きさを計算できたことは大変な成果です。

はみだしコラム
古代ギリシアには、偉大な科学者たちがたくさん誕生しています。現在の科学を支える用語の60~70%が古代ギリシア語に由来することが知られており、古代文明は、ただの歴史ではなく、私たちの現在の生活につながるものだったのですね。

○日食の予言
イオニア地方ミレトス市のタレスは紀元前585年の日食を予言しました。
○原子論
トラキア地方アブデラ市のデモクリトス(紀元前460-370年頃)は原子論を確立しました。物質は互いに混じり合わない原子(アトム)からできていて、複数の円形軌道の上を小さな粒が回っていると考えました。紀元前のこんな時代から、ものは原子から出来ているということに気づいていたんですね。
○地動説
大ギリシア(現在のイタリアを含む)のポントス市のヘラクリデス(前387-312)は惑星は太陽の周りをまわっていると考え、これをもとにサモス市(サモス島)のアリスタルコス(紀元前310―230年頃)は地動説を作り上げたのです。

ギリシアの文化を受け継いだ古代ローマ文明では地球が丸いことも既に知られていたのに、その後のキリスト教の世界ではこれらの知識はほとんど失われてしまいました。残念ながら身の回りの自然や事象よりも宗教の力に支配されてしまったからといえます。古代には望遠鏡を含めて便利な天体観測の機械があったわけではありません。しかし、現代の私たちよりも身近な「もの」を見る目をもっていたのですね。近くにある私たちのなんでもないところに、本当の「科学」は潜んでいるのかもしれません。

深澤琴絵(ふかさわ ことえ)

深澤琴絵(ふかさわ ことえ)

所属:(株)内田洋行 知的生産性研究所
学位:2005千葉大学博士(学術)
研究所では新しいIT技術を駆使して、子どもたちに科学の興味を体感してもらうミュージアムの構想、展示に携わっている。博物館ポータルサイト「museum net station」の運営者としてミュージアムと学校教育の連携を図るための仕掛けを考案中。
仕事のかたわら、猫絵作家としての顔も持つ。毎年、東京都美術館や海外のミュージアム・ギャラリーに出品。個展開催多数。1997年青枢展(東京都美術館)公募展特選連続受賞。2004年青枢優秀賞受賞。NHK『おしゃれ工房』に猫絵作家として出演。毎日新聞・ねこ新聞に著名作家たちの挿絵に登場するなど幅広い活動を行っている。

監修・画像提供:情報・システム研究機構 統計数理研究所 助教授 瀧澤由美博士

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