2006.04.11
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ワラの話

ワラの話

お米を主食とするわれわれ日本人にとって、ワラは切っても切れないものですが、最近は、ワラを見たことがない子もいるようです。今回は、昔からワラが私たちの生活にどのように関わってきたのか、そして今、どのように利用されているのかなど、ワラにまつわるお話を、子どもたちに語りかけるようにやさしいことばで説明してみました。学校の授業でもご活用いただければと思います!

1ワラは昔からいろいろなものづくりに使われていた

みんなが毎日食べているお米は、どんな植物からできているか知っていますか?お米は稲という植物から作られているんですよ。さて、ここで問題です。
 
稲の茎の写真は次のうちのどれでしょう?
稲の茎の写真は次のうちのどれでしょう?
稲の茎の写真は次のうちのどれでしょう?
稲の茎の写真は次のうちのどれでしょう?


です。

2番はトウモロコシ、3番はツバキの茎を薄く切って、顕微鏡で見たところです。稲の茎は、真中にぽっかりと穴があることがわかりますね。稲は、春に種をまいて、秋になってお米が実りだしたら、収穫を始めます。その稲を乾かしたものを「ワラ」といいます。

田んぼの横に積み上げられた黄色のワラをみたことがあるひともいるのではないでしょうか。

ワラの茎は稲と同じように、まん中がぽっかり空いています。まん中が空いていると、折り曲げやすいので、束ねたり、編んだりして、簡単に色々な形に変えることができます。だから昔の人はワラを使っていろいろな道具を作ってきました。また、まん中の空いたところに空気を沢山含むために暖かく、防寒具などの材料にもなりました。最近では、ワラは「お米をとった後の残り物」と思う人もいるようですが、昔の人は、ワラを上手に無駄なく利用してきたのです。

2形をかえて、衣服や用具、インテリアになったワラ

では、「ワラ」で、どんなものが作られていたのか見てみましょう。
 
次の写真はいったい何でしょうか

次の写真はいったい何でしょうか

A. 部屋の明かり B. ラッピング C. お祭りに使う道具


のラッピングです。

まるくて白いものは卵です。ワラで包むと、割れやすい卵も、揺れたり割れたりしないで運ぶことができたのです。ワラはとても身近なものなので、お金のかからない手軽なパッケージだったんですね。昔は、きれいに編んだワラで包むことは、プレゼントと同じ意味でもあったのです。

ほかにも靴、笠や蓑のように身に付けるもの、鍋敷きや籠、米を保存する米俵、敷物などの生活の道具、畳や壁の材料にしたり、牛や馬の寝床にしたりと、ひとびとは柔らかく、保温力が優れているワラを、衣食住のあらゆる場面で利用してきました。

お正月のおめでたい飾りもワラで作られていますね。神社のご神木や神棚のうえにも、ワラで作られた注連縄が飾られています。神聖な場所は、ワラでできた注連縄で囲むことによって、悪いものがなかに入らないように空間を区切っていたんですね。

 

ワラは折り曲げやすいし暖かいから、生活の中でいろいろなものづくりに使われてきました。衣食住の全てにつかわれていたんですね。

身近にある一つの素材が、加工法を変えることによって色々な形を作り出すことができ、さまざまな物に変化するということを気づかせる。
お米は食文化だけではなく、身近な生活用具を創り出す文化を形成していた。
日本人と稲作の歴史を「ものづくり」という視点から考えさせてみる。
 

ワラに実際に触れて、昔の人たちと同じようにものづくりを体験してみましょう。
ワラ細工には指先の技や工夫が沢山あります。草履やお正月飾りや注連縄などを自分でよく観察して、作り方を考えてみましょう。

※参考:わらぞうりの作り方 四国大学 生活科学学部児童学科

3エコロジーの仕組みのなかにあったワラとの生活

今のわたしたちの暮らしのなかで、こんなにひとつの素材を大切に、いろいろな場面で使ったりすることってありませんよね。むかしの日本では、「もの」を大切にして、一つの素材をきちんと使い尽くす習慣が伝えられてきていたのです。自然からもらった素材を無駄にしないで、使い尽くす知恵を持つことによって、人間は自然と共生してきたんですね。

ワラは植物からできた自然の素材だから、使い切った後も、きちんと土に戻ります。不燃物として残ることはありません。むかしのひとは、知らず知らずのうちにエコロジカルシステムを知っていたのですね。

でも、今は使い捨ての時代になってしまって、まだ使うことができるワラも、燃やされてしまっています。
ワラの代わりに、ビニール素材や環境汚染のもとになる物質も使われてものづくりがされています。むかしのひとが考え出したエコロジカルなサイクルを止めてしまったのですね。私たちがもっともっと身近なものに興味を持って、その仕組みを知ることによって有効活用できることがあるかもしれませんね。

 
ワラは、お米を取ったあともいろいろなものに使われて、最後は土に戻っていった。ひとつのものを無駄なく使って、また新しい命の糧となる、そんな昔の人の知恵ってすごいですね。



ワラを使用したものづくりは、材料の採取、制作、使用、廃棄の全てが循環型であり、昔の人達はものづくりへの姿勢=循環型が自然と身に付いていました。「循環型社会」とその豊かさについて考えさせましょう。


一つの身近な素材が、衣食住に使われる用具全てになるまで使用されていたことは、植物と人間が共生してきたことを現しています。現在では私達の身近な生活のなかで自然素材が使用されていることは少なくなりました。なぜ合成素材が多くなってきたのか原因を探してみましょう。また、合成素材の利点と欠点を環境保護の視点からあげてみましょう

4ワラのびっくりなちから!


ワラで三角錐を作る
ワラで三角錐を作る
三角錐を並べる
三角錐を並べる
三角錐の上に下敷きを置く
三角錐の上に下敷きを置く

ワラ一本を使って三角錐を7つ作り、写真のように並べた上に下敷きをおいて、その上に本をのせてみます。ワラの三角錐の上に本を何冊のせることができると思いますか?

A. 1冊 B. 25冊 C. 50冊


B 25冊(3,750g)です。
クリックで拡大

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ワラってすごいですね! 「ワラ」は、一本だけだとすぐ折れ曲がってしまう弱いものだけど、使い方によってはすごい力を発揮するのです。次はもっともっと強い「ワラ」の使い方を紹介しましょう。

左の写真を見てください。これは、「わらぼー」といって、ワラを垂直に並べて束ねたもので、直径8センチほどのもの。「わらぼー」は、最近では使われなくなってきたワラを見直そうと、青森県稲垣村(現つがる市)と千葉大学宮崎清研究室とで共同研究をして、生まれたものです。

1本の「わらぼー」に大人2人がぶらさがってもOK。とっても丈夫な「ワラボー」を利用して公園の「遊具」が作られています。ジャングルジムのようなわらぼードームの中には人がたくさん入ることができます。一本一本は弱いワラでも束ねるととっても強いものになって、それを組み合わせると、こんなに大きなものも作れるんですね。

  • わらぼーで作った遊具

    わらぼーで作った遊具

  • わらぼードーム。人がたくさん入れるよ!

    わらぼードーム。人がたくさん入れるよ!


 
一本一本が弱いワラでも、ワラは束ねるととっても強いものになるんですね。


自分たちで使う用具を、自分たちの地域でとれる素材で作ってみることによって、地域でとれる素材を有効活用(地産地消)する仕組みを覚えさせましょう。

ワラが縦方向の力に強いため、束ねて組み合わせることで強度が増します。ワラだけではなく、細長い素材を用いて強度を強める実験をしてみましょう。
自分の身近な使われていない素材(間伐材、廃材など)を使用して、どのような用途に有効活用できるか考えさせましょう。廃材など、使われずに捨てられてしまう素材の種類を調べてみましょう。

さあ、これでワラのことがわかったかな? ワラはお米を取ったあとの残り物ではなくて、ずーっと昔から身近にあって、私たち日本人の生活を支えてきたんですね。みんなも身の回りにあるものを触って、観察して、いろいろなものを作ってみましょう!

※わらぼーは、稲垣村(現つがる市)と宮崎清教授との実用新案・特許です。

関連情報

【リンク】
藁造形作家の村上裕介のホームページ

現在、わら細工の絵本が発売されているよ!
読みながら、わらを実際に、自分の手で触って、ものづくりをしてみよう!
『つくってあそぼう16巻 わら加工の絵本
(みやざききよし編みずかみみのり絵 出版:農文協)

他にもこんな本が参考になるよ!
『ものと人間の文化史シリーズ 藁 1 (1)』 (宮崎清著 出版:法政大学出版局)
『ものと人間の文化史シリーズ 藁 2 (2)』(宮崎清著 出版:法政大学出版局)
図説藁の文化』 (宮崎清著 出版:法政大学出版局)

監修 千葉大学理事・副学長・教授 宮崎清
写真:宮崎清

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