2006.02.28
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発酵ってどんなこと?

みぢかなものや現象に注意を向けることから「科学する目」をはぐくもう!ということで始まった新コーナーです。今回は、みんなが生きるために大切な「食べる」ことに注目してみます。皆さんが食べてるものののなかには、すごいヒミツが隠されているんですよ。コトエ博士がご案内!

1発酵のしくみ



さて、突然ですが、クイズです。
次のたべものや調味料には共通点があります。それは何でしょうか。
納豆、糠漬けのお漬物、キムチ、チーズ、ヨーグルト、お酢、しょうゆ、パン

A:日本にしかないものである
B:びせいぶつがつくっている
C:お湯でゆでている



B の「びせいぶつがつくっている」です。

この食べものを作るには、人間だけじゃなくてびせいぶつも一緒に作ってくれているのです。では、「びせいぶつ」ってなんでしょうか?みんながよく食べたりする納豆やヨーグルトは、たくさんの「びせいぶつ」っていう小さな小さな生き物が、がんばってはたらいてつくりあげてくれているんだ。その働きを「発酵」というんだよ。

びせいぶつは一匹だと力が弱いから、多く集まって力を発揮しようとするんだ。びせいぶつの好きな食べ物の周りに住み着いて、それを食べながら分解していって、生きるエネルギーを作り出しているんだ。びせいぶつは、0.1ミクロンっていう1mmの1000分の1の大きさの生き物です。それが沢山集まって、がんばってはたらいてくれると、こんなに美味しい食べ物ができるんだよ。目に見えないから、気づかなかったと思うけど、小さなびせいぶつたちの世界をみんなも想像してみよう!

  発酵した食べ物は、目に見えないびせいぶつのがんばりによってできているんだ。



色々なびせいぶつの大きさや、どこに住んでいるかなど習性を調べてみよう
食べ物が発酵するにはどんな環境が必要なのか調べてみましょう。



ヨーグルトの作り方
http://www.ajiwai.com/otoko/make/youg_fr.htm

監修 統計数理研究所・助教授 瀧澤由美 

2くさることと、発酵との違いはなにかな?



発酵している食べ物は、発酵する前のものと比べるとどんな匂いがするでしょうか

A. 独特のくさいにおいがする
B. かわらない
C. 匂いがなくなる



A の「独特のくさいにおいがする」です。

みんなが食べる納豆は、大豆というお豆からできています。でも、納豆のみかけってネバネバした糸が出てきたり、プーンと臭いにおいがしたりするよね。最初に食べたときに「くさっているのかな?」って思わなかった? でも、これはくさっているのではないんだよ。大豆が発酵している証拠なんだ。それでは、くさることと、発酵とはなにが違うのかな?

大豆をお鍋で煮て、水をきったものをそのままにおいておけば、何日か経つと食べられなくなってしまいます。これは、空気に触れているから、悪い菌が入ってきてしまって、大豆をくさらせてしまうからだよ。くさってしまった食べ物には、怖い病気を引き起こすばい菌がたくさんはいっているんだ。

でも、お鍋で煮た大豆を、空気をあまり触れさせないようにして、「納豆菌」を入れてあげると大豆がなんと、納豆に変身しちゃうんだ。納豆菌は、人間によい働きをしてくれるびせいぶつで、からだの中の血液の流れをよくしたり、腸の中の悪い菌を減らしてくれたりするんだ。それに、発酵して納豆になったものは、もとの大豆よりもなかなかくさりにくくなるんだよ。発酵ってすごいよね。

 

発酵とくさることは、すごく似てるけど違うんだ。くさることは、空気があるところで古くなって悪いばい菌がはいってしまうこと。発酵することは、空気が少ないところで、びせいぶつががんばって働いていることだよ!





発酵と腐敗の違いを知ってもらう。微生物の種類や働きによって、もとの食品が別の食品に変化する過程を知ってもらう。また、発酵する過程で、体に良い要素を作り上げていることを知ってもらう。



例にあげたほかにどんな発酵食品があるのか、さがしてみましょう(例:パン、塩から、かつおぶし、ブルーチーズ、とうふよう、ナタデココ、なれずし、ピクルス)
納豆菌のほかに、聞いたことのある菌の名まえを挙げてみましょう。(例:乳酸菌、ビフィズス菌、酵母菌etc)
身近にある発酵食品を調べながら、発酵の種類を調べてみましょう。発酵飲料のラベルには菌の名前が書いてあります。調べてみましょう。
食べ物だけではなく、飲み物のなかにも発酵飲料があります。日本酒やワイン、ビールといったお酒の発酵の種類の違いを調べてみましょう。



納豆の作り方 
http://www.ynest.com/natomake.htm

手作り納豆キット:「小さな工房できたて納豆セット」石山味噌醤油株式会社

発酵食品は大昔からあった!
お酢やお醤油、味噌、納豆、おつけものは、日本人がずっと食べてきた食物で、日本食の代表格といえるよね。日本人はいつごろから発酵食品を食べてきたのかな?実は、1400年前の飛鳥・奈良時代から発酵食品を食べていたっていわれているんだよ。「生蘇」っていうヨーグルトの一種をすでに昔の日本人は食べていたんだ。大昔の人たちも発酵の不思議に触れて、今と変わらない美味しい食べ方をしていたんだね。発酵って自然の仕組みを活用していた祖先の人たちが、子孫に伝えていった文化なんだね。

3発酵のすごいところ


さて、発酵はとてもすごいパワーを持っているんだよ。それはどんなところかな? みんながよく飲む牛乳を発酵させるとチーズになります。チーズの賞味期限って長くてどれぐらいだと思う?

a.一週間 b.一ヶ月 c.一年 d.二十年


dの20年です。

発酵させたチーズの種類によっては、こんなにも長い間、食べることができるんだよ。発酵するびせいぶつの方が、食べ物をくさらせるばい菌よりも強いからなんだ。強いほうに守られるんだね。だから発酵すると、長く保存することができるんだ! 冷蔵庫がなかった昔の時代では、漬物やお味噌のような発酵食品は、大切な保存食だったことがわかるよね。

発酵のすごいところはほかにもあるよ。それは、発酵することによって、もとの素材の良いところを引き出して、発酵するまえよりも、うまみや栄養が増えるということ。大人のひとたちが飲むワインも、ぶどうを発酵させた飲み物だけど、暗い静かなところに何年も置いておけば、さらに美味しいワインになるんだよ。チーズも牛乳のときよりも、独特のねっとりした味やにおいがしたり、味が濃くなるよね。美味しくなるだけじゃなくって、からだにもよくなるんだよ。

おひなまつりのときに甘酒を飲んだひともいるよね。甘酒は、お米が発酵して、お酒になる途中のものなんだよ。お米を発酵させて変身させるのは、「麹菌」というびせいぶつなんだ。麹菌は、お米を蒸してできたカビのことなんだよ。麹菌によって作られた甘酒は、お米だったときよりもビタミンやアミノ酸っていうからだに必要な栄養素がとってもふくまれるようになるんだよ。発酵ってパワーを増幅させるんだね。

 発酵すると、食べ物は長く保存することができるんだ。発酵すると、もとの食べ物よりも、栄養が増えたり、美味しくなったりするんだよ。



人類の衣食住のなかで「食」はとくに重要なことであった。「発酵」という化学変化によって、保存できるようになったり、材料が持っていない特徴を引き出すことができる。自然との共生によって育まれた昔からの伝承文化であることを気づかせる。



身近な発酵食品の賞味期限を調べてみましょう。どんなものが、どれくらい保存することができるのかを調べてみましょう。一番賞味期限が長い発酵食品を探してみましょう。

4ほかにもある発酵のミラクルパワー


新しい発酵パワーについて紹介するよ。さて、ここでクイズです。植物を発酵させると、つぎのうちの二つをつくることができます。どれとどれでしょう?

A. 飛行機や電車の燃料 B. 鉄 C. プラスチック


Aの「飛行機や電車の燃料」とCの「プラスチック」です

発酵のすごさは、食べ物だけではないんだね。発酵燃料は、電気にも利用できるんだよ! 最近だと、トウモロコシのでんぷんを乳酸菌によって発酵させて、新しいプラスチックを作り出すことも開発されているよ。

発酵は、人類の命も救っているんだよ。カビからペニシリンっていう薬が発見されて、何百万人もの命を救ったことは知っているかな? ペニシリンを沢山つくるためには、発酵技術がつかわれたんだよ。最近では、麹菌のなかには、ガンの病気を食い止める成分があることがわかったり、老化を防いでくれることもわかっているんだよ。

身近なものでは、生ごみをリサイクルする仕組みのなかに発酵は役立っているんだよ。コンポストっていう生ごみを栄養ある土に変えてくれる装置は知っているね? コンポストのなかでは、土の中にいるびせいぶつが生ごみを発酵させて堆肥にしてくれるんだ。おうちからでた生ごみを、発酵エネルギーによって土へと変換するエコロジカルシステムなんだよ。生ごみを焼いて処理するより地球環境にやさしい仕組みなんだね。発酵によってできた土から、また新しい植物が生まれたり、動物たちの飼料になったり、それが私たちの食べる発酵食品になる。そんな風に繰り返しながら発酵は私たちの生活のなかに息づいているんだよ。

 
発酵は食べ物だけじゃなくって、人間のための薬や環境をまもるためにも使われているんだ!生ごみを土に変えるのは、発酵パワーが必要なんだよ。



発酵技術が、食品だけではなく、土を再生させることに繋がる応用技術だということを意識させましょう。微生物という小さい生物たちが繰り広げる世界に、目を向けるようにさせましょう。自分達が生きている世界だけではなく、目に見えない世界をイマジネーションさせるようにトレーニングしましょう。



コンポストを実際に作ってみましょう。また、発酵する過程を追ってみましょう。

監修 統計数理研究所・助教授 瀧澤由美

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