2005.02.03
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【天文シリーズ】遠い距離の星はどうやって測る?~三角測量以外の方法

今回は以前、紹介した星までの距離を測定する代表的な方法「三角測量」では測量できない遠くの星までの距離を星の色や明るさで測る方法をご紹介します。

前回,星までの距離を測定する代表的な方法である三角測量,すなわち異なる2箇所から星を見る事によって星までの距離を測る方法を説明しました。この方法は地球の軌道上の2箇所から見る星の方向の微妙なずれを直接的に測定する方法で,別の物理法則や経験則などを介在させていないので,非常に信頼性の高い測定方法です。

しかしその一方で,地球の軌道の大きさに比べて恒星までの距離はあまりにも遠いため,最も近い星でも0.0004°と非常に小さな角度しか変化しません。その小さな角度を識別する必要があります。もちろんその他の星はそれより遠いので,更に小さな角度を識別する必要があります。従ってこの方法ではあまり遠くまで測定することが出来ません。実は太陽の近くにある一部の星を除いて,ほとんどの星はこの方法では距離を十分正確に測定することが出来ません。

それでは,三角測量では測定できない遠くの星までの距離はどのようにして測定するのでしょうか。先人はすでに三角測量で距離測定が出来ている星々を研究し,三角測量では測れないような遠い星の距離測定方法を見出していきました。ここでは星の色を用いて距離の推定を行う,分光視差という方法を紹介します。

三角測量で測定し,距離を見積もることが出来ると,その星々に関しては距離と観測される見かけ上の明るさが分かるわけですから,その2つから絶対的な明るさがわかります。その絶対的な明るさと星の色の関係を調べると,その両者にある関係が存在することが分かりました。星々には様々な色がありますが,その各色に対してそれぞれ様々な明るさの星があるのではなくて,ほとんどの星は色が決まると絶対的な明るさが決まっており,赤く光る星は暗く輝き,青い星は明るく輝くという事実を発見しました。
図1星の色と明るさの関係

図1星の色と明るさの関係

図1のグラフを見てください。横軸は星の色を表しています。また縦軸は星の絶対的な明るさを表しています。星の色を一つ決める(横軸の場所を決める)と,それに対応する明るさが一つ定まります。(この一連の関係を持った星を主系列星と呼んでおり,ほとんどの星はこの主系列星に属します。ここでは詳しく述べませんが,実際には赤色巨星や白色矮星など,主系列星に属さない星も存在しますが,見分ける方法は確立しております。)

従って,以上の関係を用いれば,星の色を知る事で星の絶対的な明るさが予想できます。星の色は距離に関係なく同じに見えますので(実際には宇宙空間に存在する塵などの影響により青い光ほど吸収を受ける効果が大きく赤みを帯びてしまい,若干色が変化を受けてしまいます。)星の色をただ観測するだけで,その星の絶対的な明るさを見積もることが出来ます。絶対的な明るさを見積もることが出来れば,見かけの明るさを観測する事で星までの距離が予想できます。
図2(星の色が分かっても星の明るさが一つに定まらないと仮定した場合の図)

図2(星の色が分かっても星の明るさが一つに定まらないと仮定した場合の図)

もしも図2のように,星の色が分かっても星の明るさが一つに定まらないならば,星の色を観測したとしても,星の明るさが一つに定まりません。このようになっていると,星の距離を見積もることが出来ませんでした。しかし幸いなことに星の色を決めるとたいていの星はそれに応じて星の絶対的な明るさが一つに定まりました。それは星が同じメカニズムで輝いている事が原因です。星は重力で集まった水素が高圧になった中心部で水素からヘリウムへ変わる核融合反応を起こして光ることにより星自身が支えられています。軽い星は弱い核融合で支えられており,赤く光ります。また重い星はより強い核反応でないと支えられませんので,青く光ることになります。このように星の重量が定まれば,それに応じて星の色と明るさが決まる事になりますので,図1で示すような色と明るさの関係が定まっています。

ここで示した色による距離の測定方法は,すでに三角測量を用いて直接的に距離を測定した星々を使って,星の色と明るさの関係を見出し,その法則を使って直接三角測量で測れない星に対して星の色から星の距離を求めるものです。この方法は三角測量が正しいことを前提にして,その上に成り立っているものなので信頼性に関しては三角測量に比べて劣ることになります。

文:矢野太平

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